「Daiwa House Special Broadway Musical『The PROM』Produced by 地球ゴージャス」が、3月10日に開幕!これに先駆け、報道陣に取材会とゲネプロが行われました。
2018年に米ブロードウェイで開幕し、翌年のトニー賞7部門にノミネートされた本作。メリル・ストリープやニコール・キッドマンの出演映画(2020年)がNetflixで配信され、話題を集めるこのミュージカルの日本版が、地球ゴージャス主宰の岸谷五朗さんによる脚本・訳詞・演出で初演されます。
物語の舞台は、アメリカの高校で卒業生のために開かれるダンスパーティ"プロム"。レズビアンの主人公エマ(葵わかな)が、ブロードウェイの落ちこぼれスターたちとの出会いを通じて成長し、自分らしく生きようと奮闘する姿が描かれます。エマと同性の恋人アリッサ(三吉彩花)が育む恋路、そして自身の話題づくりのためにインディアナ州へ乗り込んでいった元スターの"社会貢献"の行方は──。
げきぴあ編集部は、ゲネプロ前に行われた取材会の様子をレポート。初日を控えたキャストの熱いコメントを、舞台写真と一緒にお届けします!
葵わかな as エマ
明るさの中にいろんなテーマが込められている作品が、ついに初日を迎えます。2ヵ月間、必死で稽古してきた成果を早くお客さんにお見せしたい、届けたい気持ちでいっぱいです!緊張もありますが、今は幕が上がる楽しみな気持ちが強いですね。映像化する予定のない"一期一会"な作品なので、今このタイミングでしか観られないキャストやストーリーをぜひ楽しんでください。お客さんとも一期一会の精神で、毎回のステージに立ちたいと思います。
カップル役を演じるにあたって
エマは序盤から割り切れない複雑な心境にいる役どころ。深刻に捉えなければいけないと思っていましたが、演じるうちに身構える必要はなかったと感じるようになりました。彩花ちゃんとは稽古を通じて、長期にわたる公演をともに戦っていけるよいパートナーになれたと思っています。関係性のよさが、エマとアリッサの在り方に反映されている様子もご覧ください。
三吉彩花 as アリッサ
長い道のりと思っていましたがあっという間に開幕で、月日が過ぎる早さを実感しています。初めての舞台なので「最後列はこんなに遠いのか」「2階のお客さんに伝えるにはどうしたらいいだろう?」と自問自答しながらステージに立っています。会場の大きさに負けないくらいのパワーをと届けられたら。
カップル役を演じるにあたって
わかなちゃんとは今回初共演ですが、そんな気がしません。楽屋も一緒で、稽古場でも席が隣同士。休憩中にコーヒーを飲みに行くタイミングまで同じで"くっつき虫"のようです(笑)。どんな瞬間も一緒に過ごすことで、エマとアリッサが愛し合っているのは当たり前なんだと感じられるようになりました。とてもリラックスできるお相手です。
岸谷五朗 as バリー・グリックマン
あっという間の2ヵ月。大変な稽古をみんなで乗り越えてきました。今まででいちばんエンタメ要素がある作品をつくっていくには、本当にたくさんの時間と努力が必要でした。やっと舞台装置もできあがってゲネプロまで漕ぎ着けましたが、まだ油断できません。とにかく作品の素晴らしさを日本の皆さんに届けたい。これからも努力を欠かさず登っていこうと思っています。
寺脇康文 as トレント・オリバー
地球ゴージャス25周年記念公演はわずか8回で公演中止になり、それ以来の舞台になります。しかも普段のオリジナル作品ではなく、ブロードウェイミュージカルに挑戦するということで、また違った緊張感に包まれています。千秋楽まで完走したいですね!
作品の見どころ
エマとアリッサの恋の行方や多感な高校生の思いもさることながら、もうひとつの軸は大人たちの物語にあると思っていて。落ちこぼれのブロードウェイスターたちが、かつての名誉を取り戻そうともがいていく。これに若者たちの葛藤が合わさってストーリーが紡がれていきます。
楽曲のレベルが高いので、少しでも手が届くように努力する日本版キャストの"もがき"に重なるかもしれません。困難を乗り越えた先のハッピーエンドに、コロナ禍に苦しむ皆さんの"もがき"も昇華されたらいいですね。地球ゴージャスらしい群舞にも力をもらえると思います。これぞミュージカルを堪能してください。
大黒摩季as D.D.アレン
D.D.アレンは知寿さん・民代さんとのトリプルキャストで、私は出来の悪い"三女"(笑)。すべての臓器が口から出てきそうなくらい緊張していますが、お姉ちゃんたちの通しやゲネプロをいちばん観ている私からすると、本当に泣けて元気になれる作品だと思います。涙あり・笑いあり・思慮あり、人間が持っているすべての感情が刺激され、「明日もがんばろう」って気持ちにさせてくれるんですよね。大黒摩季のステージで、これほど心が動くことないですよ(笑)?コロナ禍で奪われた人との繋がりや温もりを、作品を通じて取り戻していけたら。
キャラクターを演じた役者の魅力:岸谷評
D.D.アレン、末っ子の大黒摩季。初稽古から突き抜ける歌声を披露して、舞台を存分に楽しんでくれていました。『The PROM』の楽曲について、アーティストの大黒摩季はどう考えてる?
大黒
私たちミュージシャンが「ちょっとだけ遊んでみよう」とくすぐりで入れるようなトラップがあちこちに仕掛けられており、"スーパー幕の内弁当"的な最高峰の音楽だと思います。素晴らしいからこそ憎たらしい!でも超越したいナンバーだらけで挑戦のしがいがありました。
草刈民代as D.D.アレン
非常にエネルギーが高い作品ですよね。とにかく心が揺さぶられる要素が詰まっていて。出ている私も日々突き動かされながらステージに立っています。ご覧いただければ、日常とかけ離れた心の動きを体験できる作品だと確信しています。コロナ禍でも心を動かすことを忘れてはいけません。この作品を通じて、観客の皆さんと心の躍動を共有したいですね。
キャラクターを演じた役者の魅力:岸谷評
D.D.アレン、次女の民ちゃん。すらりとしたスタイルで、とんでもない存在感を持っています。今回は民ちゃんが振付を考えたパートがあるんだよね。とにかく両手を伸ばして踊るだけで、民ちゃんのキャリアが透けて見えるほど女優として輝いています。参加してみていかがでした?
草刈
歌いながら激しく踊るのが、これほど難しいとは。苦労したのはそこですね。歌稽古にしっかり取り組みました。
保坂知寿 as D.D.アレン
劇場にいらっしゃることがままならない方、観に来てくださる方、いろんな方々の思いを舞台の上で感じています。これから観客の皆さんの前に作品を提示して、共有することになりますが、足を運んでくださった方を後悔させてはいけません。できることをどんどん積み上げながら、もっとよい作品にするための努力をしたいと思います。千秋楽まで感染対策に気をつけながら走り抜けられたら。
キャラクターを演じた役者の魅力:岸谷評
知寿さんは映画版D.D.役のメリル・ストリープが扮した『マンマ・ミーア』のドナを舞台で演じたこともある実力者。全員のお手本となるような歌唱・ダンス・芝居でいつも稽古場全員の鳥肌を立たせてくれました。海外ミュージカルの経験が豊富な知寿さんは、この作品をどう捉えていますか?
保坂
エンタメ性が多様化していて、新しさを感じる作品ですよね。『シカゴ』に『レ・ミゼラブル』にいろんなミュージカルのパロディが入っているので、お好きな方は嬉しいんじゃないかしら。
霧矢大夢 as アンジー
開幕にワクワクする気持ちが勝って、それがお客さんに届けばいいなと願っています。私はD.D.アレン役の個性豊かな御三方と楽屋が一緒なんですが、お姉様たちの会話がもう楽しくて!稽古中のカオスな楽屋を思い出しながら、まずはアンジー役をしっかり務めたいと思います。
キャラクターを演じた役者の魅力:岸谷評
きりやん(霧矢)は学級委員長的な立ち位置で、いちばんしっかりしていましたね。迷うとみんなきりやんに意見を求めに行って。今回はフォッシーダンスで魅了してくれます。きりやんがもともと持っている"優しさ"が透けて見えるシーン。オリジナルと異なる、ショーアップされた「Zazz」にご期待ください。
佐賀龍彦(LE VELVETS)as ホーキンス校長
コロナ禍でなかなかステージに立てない状況が続く中、稽古を通じて自分自身がどんどん元気になっていきました。一人一人、どのキャストを見ても登場人物の人生をまっとうする喜びを感じることができて。きらびやかなステージ、豪華なオーケストラ、心に届くメロディーの中で、自分自身も心を動かされています。お客様の心の扉も開けられるように務めたいと思いました。
キャラクターを演じた役者の魅力:岸谷評
佐賀ホーキンスには、愚直なまでの優しさがあります。龍彦自身の優しさが役に乗り移って、D.D.に響くシーンにご注目ください。
TAKE(Skoop On Somebody)as ホーキンス校長
稽古初日に岸谷さんと寺脇さんから、地球ゴージャスが何をいちばん大切にしているかって話があった。「仲間」。この作品でもそう。ここに来てくれるお客さんも仲間。みんなでひとつのプロムに参加して仲間になれたら。
キャラクターを演じた役者の魅力:岸谷評
TAKEの包容力とチラッと覗く色気がホーキンスに反映されています。龍彦との違いや三者三様のD.D.との組み合わせ次第では6通りの楽しみ方があるともいえますね。
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最後に、岸谷さんは「結成当初、地球に住むすべての人々の心を豊かに、ゴージャスにできるカンパニーにしたいという意味で"地球ゴージャス"と名付けました。『The PROM』はまさにそんな気持ちになっていただける作品です」と太鼓判を押します。
さらに「公演ができなくなってしまったブロードウェイの友人のためにも、日本で『The PROM』が上演された事実を"勇気"としてお渡しできたら」と続き、「お客様と心と心で通じ合いたいと思っています。感染症対策を万全にしてお待ちしております!」といって取材会を結びました。
ゲネプロの様子は、ぴあアプリにて配信中。レズビアンの主人公カップルが人目を気にせずキスできるようになった多幸感あふれるラストに心が躍りました!自分の信じる道を切り拓いた彼らの強さから、ポジティブな力を分けてもらえること確実です。
取材・文:岡山朋代
撮影:藤田亜弓
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Daiwa House Special Broadway Musical『The PROM』Produced by 地球ゴージャス
2021年3月10日(水)~4月13日(火)
東京・TBS赤坂ACTシアター
2021年5月9日(日)~16日(日)
大阪・フェスティバルホール
[脚本]ボブ・マーティン、チャド・ベゲリン
[音楽]マシュー・スクラー
[作詞]チャド・ベゲリン
[日本版脚本・訳詞・演出]岸谷五朗
[キャスト]
エマ:葵わかな
アリッサ:三吉彩花
D.D.アレン:大黒摩季、草刈民代、保坂知寿(東京公演のみ)※トリプルキャスト
アンジー:霧矢大夢
ホーキンス校長:佐賀龍彦(LE VELVETS)、TAKE(Skoop On Somebody)※Wキャスト
ミセス・グリーン:藤林美沙
シェルドン:小浦一優(芋洗坂係長)
ニック:青柳塁斗
ケイリー:島ゆいか
シェルビー:MARIA-E
ケビン:百名ヒロキ
加藤潤一、仙名立宗、田口恵那、砂塚健斗、杉山真梨佳、鈴木百花、飯田一徳、織里織、山田元、酒井比那、酒井翔子、内木克洋、高城徹
バリー・グリックマン:岸谷五朗
トレント・オリバー:寺脇康文