3月10日(水)に開幕する「Daiwa House Special Broadway Musical『The PROM』Produced by 地球ゴージャス」の通し稽古が、2月下旬に公開されました。げきぴあ編集部は前回、主人公カップルを演じる葵わかなさん・三吉彩花さんのパフォーマンスを中心にレポート!地球ゴージャスらしい、エンタメ感あふれる群舞の様子も写真満載でお届けしています。
→【The PROM通し稽古レポート/前編】日進月歩で成長!葵わかな×三吉彩花が体現する"自分らしい生き方"とは
2018年に米ブロードウェイで開幕し、翌年のトニー賞7部門にノミネートされた本作。メリル・ストリープやニコール・キッドマン出演の映像化作品(2020年)がNetflixで配信され、話題を集めました。この人気ミュージカルの日本版が、地球ゴージャス主宰の岸谷五朗さんによる日本版脚本・訳詞・演出で初演されます。同性の恋人アリッサ(三吉)と参加しようとしたダンスパーティー"プロム"が中止になり、その原因になったといじめを受けるエマ(葵)の存在を知ったブロードウェイの元スターたちは、自分たちの話題づくりのためにエマを助けようとして──。
今回は、エマ&アリッサを取り巻く大人たちについてレポート。高校生カップルを翻弄しながらも巧みに物語を動かし、ハッピーエンドへ運んでいくパワフルさを見せつけてくれました! なお、取材日のD.D.アレン役は保坂知寿さん、ホーキンス校長役はTAKEさん(Skoop On Somebody)が務めていらっしゃいます。
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保坂知寿 as D.D.アレン
ブロードウェイの『エレノア!』でタイトルロールのルーズヴェルト大統領夫人を演じ、ニューヨーク・タイムズ紙から酷評を喰らったD.D.アレン。トニー賞を2度受けた過去の栄光が忘れられず、つい高飛車に振る舞ってしまう憎めないキャラクターの持ち主です。
製作発表で岸谷さんに「D.D.アレンは過去にトップやセンターに立った人でないと演じられない役だが、知寿さまはその彼女よりもキャリアを重ねた、これぞ"お手本"のチャンピオン」と言わしめた保坂さん。この日の通し稽古では衣装に身を包み、貫禄たっぷりにトニー賞女優像を立ち上げます。
ソロナンバーには聴かせどころが盛りだくさん!プロム中止を受けて揺れる高校に、エマを救おうと乗り込んだ時の「目立ちたくないのよ!私」では"主役はエマ、私じゃない(原曲タイトル:It's Not About Me)"と高らかに歌い上げるも、ブロードウェイスターとしてのプライドや自己顕示欲が隠しきれません。
エマを利用した売名行為に失望するホーキンス校長の気持ちを動かそうと披露される「蕾は華ひらく」では、スリットの入った黄色いドレスから覗く脚線美で観客を悩殺! 保坂アレンの巧みな演技力、抜群のリズム感、迫力の歌声がホーキンス校長にどう影響したか......は、ぜひ劇場で確かめてみて。
霧矢大夢 as アンジー
キャリアのほとんどを『シカゴ』のコーラスガールに費やし、俳優として今ひとつ突き抜けられないアンジー。最初は売名目的でインディアナ州を訪れたものの、次第にエマのよき理解者として伴走していくことになります。
アンジーの魅力を堪能できるナンバーは、何といっても「Zazz」でしょう! 度重なるトラブルに自信を失いかけているエマを"自信とZazzスタイルで乗り越えて"と鼓舞する中で、演じる霧矢大夢さんは持ち前の柔軟性を遺憾なく発揮。白手袋を装着し、シルクハットを被ったエマ役の葵さんとアンサンブルキャストをリードするダンスシーンを展開しました。
TAKE(Skoop On Somebody)as ホーキンス校長
レズビアンであるエマの立場や気持ちを尊重し、不寛容なPTAとの間に立つホーキンス校長。その温かい人柄は、ブロードウェイの元スターを筆頭に濃いキャラクターが勢揃いした大人たちの中で"清涼剤"としての役割を果たしています。貯金してはニューヨークへ観劇旅行に出るなど、舞台に造詣が深いのも共感ポイント高し!ですね。
ミュージカル鑑賞を生きがいとしているホーキンス校長が劇中で繰り広げる「あなたを見ていたい〜」は、"推し"や劇場空間に対する演劇ファンの気持ちを代弁した曲として広く知られています。本作のPVとして動画配信されているこのナンバーを、TAKEさんは情感を込めて熱唱。目の前に現れた憧れのスター・D.D.アレンに向けて切実な歌声を響かせました。
岸谷五朗as バリー・グリックマン
プレイングマネージャーとして、演出家席とステージを慌ただしく行き来していた岸谷さんは、プロムに人一倍の思い入れがあるバリー・グリックマン役。エマに共鳴する理由も、のちに明かされていきます。
エマ&アリッサをはじめとする高校生たちがプロム参加に向けた準備のワクワク感を歌う「今夜の主役」で、岸谷バリーは華麗なタップダンスを披露!
寺脇康文as トレント・オリバー
ジュリアード音楽院出身を誇るトレント・オリバーには寺脇康文さん。エマを攻撃する同級生の説得に奔走するなど、他のブロードウェイスター3人とは異なる形で主人公カップルを援護射撃します。
その寺脇トレントがエマの同級生らと繰り広げる「汝 隣人を愛せよ」は、タンバリンでリズムを刻みながら一糸乱れぬ群舞を見せるにぎやかで楽しいナンバー。エンタメ要素がたっぷり詰め込まれており、地球ゴージャスらしさを体現した一曲といえるでしょう。
人目を気にせず、恋人繋ぎを高く掲げられる世界へ
最後は全キャストによる「It's Time To Dance」でフィナーレ!
エマとアリッサによる「Dance With You」のしっとりとした歌唱から始まったナンバーは曲調が変わり、リズミカルにビートを刻むロックテイストの楽曲へ。アンジーに訪れた転機、D.D.アレン&ホーキンス校長による人間模様が次々に語られると、お待ちかねの"ショータイム"に突入します!
レズビアンの主人公カップルが人目を気にせず、恋人繋ぎを高く掲げられるようになった多幸感あふれるラストに思わず心が躍り、ポジティブな気分で稽古場をあとにしました! 逆境にめげることなく自分の信じる道を切り拓いていく彼らのたくましさ、ぜひ劇場でも見届けたいと思います!
取材・文:岡山朋代
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Daiwa House Special Broadway Musical『The PROM』Produced by 地球ゴージャス
2021年3月10日(水)~4月13日(火)
東京・TBS赤坂ACTシアター
2021年5月9日(日)~16日(日)
大阪・フェスティバルホール
[脚本]ボブ・マーティン、チャド・ベゲリン
[音楽]マシュー・スクラー
[作詞]チャド・ベゲリン
[日本版脚本・訳詞・演出]岸谷五朗
[キャスト]
エマ:葵わかな
アリッサ:三吉彩花
D.D.アレン:大黒摩季、草刈民代、保坂知寿(東京公演のみ)※トリプルキャスト
アンジー:霧矢大夢
ホーキンス校長:佐賀龍彦(LE VELVETS)、TAKE(Skoop On Somebody)※ダブルキャスト
ミセス・グリーン:藤林美沙
シェルドン:小浦一優(芋洗坂係長)
ニック:青柳塁斗
ケイリー:島ゆいか
シェルビー:MARIA-E
ケビン:百名ヒロキ
加藤潤一、仙名立宗、田口恵那、砂塚健斗、杉山真梨佳、鈴木百花、飯田一徳、織里織、山田元、酒井比那、酒井翔子、内木克洋、髙城徹
バリー・グリックマン:岸谷五朗
トレント・オリバー:寺脇康文