「Daiwa House Special Broadway Musical『The PROM』Produced by 地球ゴージャス」の通し稽古が、開幕初日を約10日後に控えたタイミングで公開されました。PCR検査で無事に陰性判定を受けたげきぴあ編集部は、この現場に潜入。製作発表で見せたチームワークさながら、キャスト・スタッフが一丸となって日本版の初演を成功させようという熱気と心意気を、前・後編にわたってレポートします!
2018年に米ブロードウェイで開幕し、翌年のトニー賞7部門にノミネートされた本作。メリル・ストリープやニコール・キッドマン出演の映像化作品(2020年)がNetflixで配信されたのが記憶に新しい人もいらっしゃるのでは? 話題を集めるこのミュージカルの日本版が、地球ゴージャス主宰の岸谷五朗さんによる日本版脚本・訳詞・演出で初演されます。
レズビアンの主人公カップルと、彼女たちを取り巻く個性豊かなキャラクターたちが最終的に見つけた"自分らしい生き方"とは──? ブロードウェイ発の華やかな音楽とダンスシーンで彩られた本作の、基本的なストーリーをさらっておきましょう。
■Story
アメリカで卒業を控えた高校生のために開かれるダンスパーティー"プロム"。
インディアナ州に住むエマは、同性の恋人アリッサとプロムに参加しようとするものの、多様性を受け入れられないPTAが開催中止にしてしまう。その原因をつくったといじめを受けるエマの存在を知ったブロードウェイの元スター4人は、話題づくりのために彼女を助けようとして──。
主人公エマには、『ロミオ&ジュリエット』『アナスタシア』でミュージカル経験を着実に積み重ねている葵わかなさんがキャスティング。その恋人アリッサには、本作が初舞台となる三吉彩花さんが名を連ねました。
エマのもとに現れる落ちぶれかけたブロードウェイの元スター4役には豪華俳優陣が揃い踏み!映像作品版でメリル・ストリープが演じた傍若無人なD.D.アレンに、大黒摩季さん・草刈民代さん・保坂知寿さんがトリプルキャストで扮します。また『シカゴ』の万年アンサンブルことアンジー・ディクソンには霧矢大夢さん。プロムに人一倍思い入れのあるバリー・グリックマンを岸谷五朗さんが、ジュリアード音楽院出身を誇るトレント・オリバーを寺脇康文さんが務めます。エマとアリッサが通う高校のホーキンス校長を佐賀龍彦さん(LE VELVETS)、TAKEさん(Skoop On Somebody)がWキャストで演じるのも見逃せません!
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新型コロナウイルス感染症の影響による緊急事態宣言下とあって、稽古場は常にソーシャルディスタンス仕様。キャスト・スタッフともに不織布マスクをしっかり装着し、待ち時間は距離を取って見学するなど飛沫防止策を徹底していました。
通し前のわずかな時間にも発声練習し、ダンスシーンの振付をさらうなど準備に抜かりないキャスト一同。岸谷さんの「皆さん、ケガしないように気をつけましょう!」の号令をスタートの合図に、通し稽古の幕が上がります──。
一幕は、かつてのスター俳優4人がブロードウェイでの栄光を歌い上げる「Changing Lives」でスタート。観客の人生に影響を与え、賞賛を糧にがんばってきた演じ手の思いを、一糸乱れぬラインダンスを繰り広げながら高らかに響かせます。
やがてこのナンバーは、プロム中止の犯人扱いを受け、ピンチに陥っている"エマの人生を変えよう(Changing Lives Reprise)"に変化していきます。出演作の酷評を受け、うだつの上がらない俳優業に風穴を開けるべく、話題づくりのためにエマの存在に注目した4人。彼女を救おうとプラカードを掲げ、自己顕示欲と承認欲求全開でエマの通う高校へ乗り込んでいく姿が何とも笑えるのです。
葵わかな as エマ
レズビアンの女子高生であるエマを、葵さんは製作発表で「複雑な環境に身を置いている役」と言い表しました。「自分にとっての当たり前を貫くためにどうしたらよいか葛藤し、成長していく彼女の"強さ"を表現したい」と覚悟を覗かせたように、4人の訪問に戸惑いつつも次第に打ち解けていき、自分の信じる道を突き進むための糧としていきます。
葵さんのソロ歌唱は数あれど、必聴すべきは紛れもなく「Dance With You」でしょう!誰に何をとがめられても恋人アリッサと"踊りたいだけ"という切実な想いを、葵さんは三吉さんの手を取ってリードし、時に見つめ合いながら歌います。
ラストには、昂った気持ちを高音に乗せる最難関パートが。見事に歌い上げると、岸谷さん・寺脇さんを中心に、脇で見守っていたキャスト・スタッフからも大きな拍手が贈られました!
エマの行動に共鳴した仲間たちと奏でる「ワンパクなHeart」では、ギターを片手に演じるシーンも。スローテンポながらも座っての発声はしづらいはず。しかし、葵さんは仲間と見事なハーモニーを響かせるのでした。
三吉彩花 as アリッサ
エマと惹かれ合う一方で、PTA会長を務める母(ミセス・グリーン)の期待にも応えたい優等生のアリッサ。三吉さんはこの葛藤を、役名が冠されたソロナンバー「アリッサ・グリーン」に滲ませます。
製作発表で岸谷さんから「毎日水をもらって伸びていく樹木のよう」と評価されていたように、初舞台・初ミュージカルながらも可憐な歌声で作品に華を添えていました。
また、これまで主戦場としてきた映像での演技力を遺憾なく発揮する一面も。エマとの恋路を表情豊かに立ち上げるほか、「アリッサ・グリーン」を歌い上げたあとの切ない人間ドラマにも注目していただきたい。
地球ゴージャスらしい迫力の群舞も
とりわけ圧倒されたのは、アンサンブルキャストも含めた迫力の群舞やアクションでした。エマ&アリッサの同級生による告白シーンやプロムに参加できる喜びを爆発させる「You Happened」や、ハッピーエンドを象徴するラストナンバー「It's Time To Dance」では躍動するパフォーマンスから"元気"をお裾分けしてもらった気分に。地球ゴージャスらしいエンタテインメント要素も、存分に感じることができました!
後編では、エマ&アリッサを取り巻く大人たちのパフォーマンスをレポートします。お楽しみに!
取材・文:岡山朋代
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Daiwa House Special Broadway Musical『The PROM』Produced by 地球ゴージャス
2021年3月10日(水)~4月13日(火)
東京・TBS赤坂ACTシアター
2021年5月9日(日)~16日(日)
大阪・フェスティバルホール
[脚本]ボブ・マーティン、チャド・ベゲリン
[音楽]マシュー・スクラー
[作詞]チャド・ベゲリン
[日本版脚本・訳詞・演出]岸谷五朗
[キャスト]
エマ:葵わかな
アリッサ:三吉彩花
D.D.アレン:大黒摩季、草刈民代、保坂知寿(東京公演のみ)※トリプルキャスト
アンジー:霧矢大夢
ホーキンス校長:佐賀龍彦(LE VELVETS)、TAKE(Skoop On Somebody)※ダブルキャスト
ミセス・グリーン:藤林美沙
シェルドン:小浦一優(芋洗坂係長)
ニック:青柳塁斗
ケイリー:島ゆいか
シェルビー:MARIA-E
ケビン:百名ヒロキ
加藤潤一、仙名立宗、田口恵那、砂塚健斗、杉山真梨佳、鈴木百花、飯田一徳、織里織、山田元、酒井比那、酒井翔子、内木克洋、髙城徹
バリー・グリックマン:岸谷五朗
トレント・オリバー:寺脇康文