スズカツさんこと鈴木勝秀さんによる上演台本・演出作品『る・ぽえ』が1月25日(土)に東京・新国立劇場 小劇場にて開幕します。
本作は、『僕のリヴァ・る』(16年)、『僕のド・るーク』(19年)に続くオムニバス形態の公演で、新作となる今回のテーマは「詩人(ポエム)」。
高村光太郎『智恵子抄』をモチーフにした夫婦の話、萩原朔太郎『月に吠える』をメインにした多趣味な朔太郎の奇想天外な話、中原中也の人生と恋愛を通して描くダイアログという、"詩"を通して描く3人の詩人の物語になるのだそう。
というわけで、稽古開始から一週間ほどの稽古場におじゃまして、出演者の碓井将大さん、辻本祐樹さん、木ノ本嶺浩さん、林剛史さん、加藤啓さんにお話をうかがってきました!
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――撮影から和やかな雰囲気でしたが、稽古が始まってどうですか?
林 啓さんと嶺と祐樹と俺は何回も共演してて......
碓井 してないの、俺だけじゃないですか(笑)。
木ノ本 切ない。
加藤 そんな言い方。
辻本 (笑)
林 違うよ!「一人だけ初めてだけど、そこに溶け込んでくれたよね」って続けたかったの!
碓井 (笑)。先走ってすいません!
林 (木ノ本と加藤に)俺を悪者にしようとしている!
――(笑)。脚本を読ませていただいたのですが、どんな舞台になるのか全然想像できないような内容でした。
加藤 僕らも稽古に入って「なるほど!」と思っている部分があります。立ち上がり方がすごく面白いんですよ。
木ノ本 脚本だけ読むと硬く感じるんですけれど、やってみると自由で。劇場のすべてを使うような演出プランをスズカツさんが立ててくださっているから。
辻本 観ていても面白いです。いろんなことを試して、その度に、なんていうのか精度や自分の気持ちも上がっていくんですよね。面白い方向にどんどん進んでいくから、ワクワクします。
――3つのオムニバスは、どういうふうに進んでいくんですか?
林 大きく分けると、高村光太郎の話、萩原朔太郎の話、中原中也の話と3つのお話があるのですが、章は5つあって、高村光太郎の話が何度か出てくるようなイメージです。
――なるほど。脚本を読んでいると、詩の引用があったり、話し言葉も詩人らしいところがあるし、ちょっと難しいのかなと思ったりもしているのですが。
碓井 難しい芝居じゃないです。楽しい芝居ですよ!
木ノ本 硬いかもと思われてるかもしれないけど。
碓井 (タイトルは)ひらがなですからね!
辻本 本当に気軽に来てほしいです。
木ノ本 3本とも色が違うよね。
加藤 それぞれの雰囲気があるので
――ちなみに今回のテーマは「ポエム」ですが、皆さん詩に触れ合うことはありますか?
碓井 僕らの世代は詩を聞く機会ってほとんどないと思います。学校の授業で習ったなくらいだと思うんですよね。そういう人にも観てほしい。
――詩って、音楽とかと同じで、状況が合えば強く響くものだと思うので、こういう作品の中で聴くと、そういう体験ができるんじゃないかなと思います。
加藤 そうなると思います。僕自身、前に読んだことがある言葉も、この作品の中では新鮮に響いたので。お客様もそういう体験になる可能性がある。そこは楽しいんじゃないかな。詩を楽しめるから。
木ノ本 ただ演じる側としては、詩はやっぱり言葉が強いので、そこは丁寧にやらないといけないなと感じています。なんか欲出して、乗せて言っちゃったらダメですもんね。
辻本 僕は特に、台本の言葉を信じて、素直に読むことを大事にしています。
――「詩を読む」ということでは、高村光太郎の話では高村を演じる辻本さん以外の方は「詩を暗唱する男」として登場されますね。
辻本 そうなんです。僕だけが名前のある役で。4人が詩で支えてくれるんですよ。
木ノ本 あれ、緊張する~。
辻本 みんな緊張してるよね(笑)。
林 あそこは緊張するよ~。
辻本 でも僕はお陰でグッとひとつ上がって次に進めます。そうやって進むごとにどんどんどんどん苦しくなっていくんですけどね。その苦しさをこらえつつ伝えていくのが課題です。
――残りの2つの話では、皆さんそれぞれ実在する詩人や小説家を演じていますが、その辺はいかがですか?
加藤 僕は森鷗外と小林秀雄を演じるのですが、あの時代の表現者って、生きてることが表現に繋がっていたり、そのまま精神病んで死んじゃう方もいるくらいで。今、この時代にそういう役をやるのはなかなか大変だと思っているんです。しかもその人が書いた言葉を台詞として言いますからね。だけどそういう芝居は取り組んでいて楽しいし、やりがいも感じますね。
林 僕は役のひとつが室生犀星なのですが、正直今回初めて知りまして。今いろいろ調べているんですけど、犀星って産みの母と育ての母が違うこともあって、ダブルバインド(二重束縛)を背負っている人なんです。そういう背景って、例えば中原中也とか高村光太郎に比べたらあまり知られていないように思うので、そこをどう表現に繋げるかは考えます。スズカツさんにも相談しながらやっていきたいです。
――スズカツさんの演出は、受けていかがですか?
木ノ本 面白いです。僕が萩原朔太郎を演じる話では、碓井くん(北原白秋役)と剛史さん(室生犀星役)と3人で会話をするシーンが多いのですが、「ここで3人ともバカになってみよう」とか「ここに立って言ってみよう」とか、いろんな実験をしながら稽古が進んでいて。まだいける、まだいけるって感じでやっています。
加藤 スズカツさんの演出っていうのはすごく的確なんですよ。求めていることがハッキリしているし。でも役者を信じてくれているのも感じるので。残り日数でどこまでできるかなっていう意識ですね、今は。やっていても見ていても面白いし、劇場の使い方も楽しいので、いろんな刺激があります。
――加藤さんはスズカツさんに思い入れがあるそうですね。
加藤 僕は高校時代にZAZOUS THEATER(鈴木主宰の演劇プロデュースユニット)の『LYNX』をビデオで観てて、すごく憧れたんですよ。それ以来、初めて一緒にお仕事するので。もうほんっとに嬉しい。
碓井 それは嬉しい!
木ノ本 満を持してだ。
加藤 そのときも青山円形劇場でやっていて、今回も同じ囲み舞台なので。見せ方がやっぱり面白いなと思っていて。その中で自分も楽しんでやれたらいいなと思います。
碓井 囲み舞台、面白いですね。客席からの見え方が全然違うし、選択肢の数がめちゃくちゃ増えるし。
木ノ本 そうだよね。選択肢多すぎて、どうしていいかってなるときもある。
碓井 どうお見せしたらお客さんがわかるように伝わっていくのかとか、台詞がきれいに届くのかってことを考えると、演劇的に質の高い作品を目指せるなと思います。なるべくいい時間の使い方をして本番に臨みたいです。
――最後は皆さんの今回の挑戦をひとつずつ聞いて終わりにしたいと思います。
碓井 僕は、生身でいること。なるべく役の殻をつくらないようにします。僕が演じる中原中也は"告白者"として登場して、お客様に告白していくんです。台詞をたくさん届けることになるので、観てくださる方もなるべく生身でぶつかってきていただけたらと思います。
辻本 今回の高村光太郎は、肉体で表現してどうっていうものではない。高村光太郎の心がしっかり届くようにと思うので、そこは挑戦ですね。
木ノ本 僕は一般的にならないこと。これを選択したら安パイだなっていう選択をせず、自分が持っているものの中でも「こんなのあるんだ」っていうものを出して、お客様に見せることを丁寧にやりたいです。
林 僕は新鮮にやることです。毎公演、新鮮さを持ってやりたい。林剛史としても役としても、慣れずに、言葉をしっかり伝えていけたらと思います。
加藤 ......詩をとちらない。
一同 (笑)
加藤 そこは大きいです。詩人が紡いだ言葉を僕が間違ったら、そのまま届いちゃうので。とちらないってことだけを考えるわけじゃないですけど、そこはがんばります!
『る・ぽえ』は東京・新国立劇場 小劇場にて1月25日(土)から2月2日(日)まで上演。チケットぴあでは各公演前日23:59まで購入できる、当日引換券を発売中。
取材・文:中川實穗/撮影:源賀津己