日本初演のミュージカル『アンクル・トム』が10月18日(金)より開幕します。
オリジナルは、韓国の「大邱ミュージカルフェスティバル」で今年発表された作品。
ここではトライアウトのような形での発表だったため、今回日本での上演にあたり、かなり練り直されているとのこと。つまり、ほぼ"日韓共同新作"と言っても過言ではない...のではないでしょうか!
物語は、作家志望の男が、隣人の書いた小説を盗んで発表したことからはじまるミステリー。
たった4人のキャストが、虚と実が入り混じり観客をも騙すサスペンスフルな物語を紡いでいきます。
出演者は、まず、
上口耕平、池田有希子、内藤大希、新納慎也の4人。
そして、〈エンカレッジデー〉として公演期間中3回、若手キャストによる上演があります。
その〈エンカレッジメンバー〉は、山田元、高畑こと美、ユーリック武蔵。ここに本役である新納慎也が加わります。
この〈エンカレッジデー〉は次世代の俳優育成を目的とした設定とのこと。素敵な企画ですね。
10月某日、そのミュージカル『アンクル・トム』を取材してきました!
稽古の合間に、演出の落石明憲さんにお話も伺ってきましたので、落石さんのコメント付きで稽古場レポートをお届けします。
日本初演ですので、ストーリーも少しご紹介。
舞台は1980年代のイギリス。
サッカーのワールドカップのニュースが効果的に挟まれていきます。
「(韓国のオリジナルから)ベースは変えていませんが、より、日本人に感じやすいようにはしています。韓国で僕が観たときは、正直あまり"ロンドン感"が伝わってこなかったので、今回は場所や時間をしっかり出していっています。もちろん原作のイ・ヨンギュさんの許可を取った上でですが、音楽の入れ替えなどもあります。彼としても、今年韓国でやったものが初披露でしたので、間に合わなかったけど実はこうしたかった...というところはあったようで、本来彼がやりたかった形なども反映しました。だから、今回の日本版が、ほぼ"初演"じゃないでしょうか! ...こんなこと言ったらまずいかな(笑)?」(落石)
▽紀元由有さんによる振付け中
主人公、ケビン=上口耕平さん。
小説家志望ですが、なかなか思うように小説が書けず悩んでいます。
...なのですが、この写真のシーンは、ケビン絶頂期、なのです。この笑顔!
ケビンの隣人、トム=新納慎也さん
とあるきっかけでケビンと知り合ったトムですが、たまたま彼も小説を書いています。そして実は大病を患っています。
小説『操られた殺人』を書き上げたトムは、ケビンにそれを読ませ、意見を求めるのですが、そこで倒れてしまい...。
...なのですが、この写真のシーンはトムではない新納さんです...。
何せ出演者4名ですので、皆さん、色々と出てきます。
大手出版社の編集長、マギー=池田有希子さん
伝説のミステリー作家にして、10年前に失踪したラルフ・ブース。マギーは、彼の名を冠したミステリー大賞を主催、次世代のミステリー作家を発掘しようとします。
ケビンはその賞に作品を応募します。ただ、その小説はトムが書いた『操られた殺人』でした...。
ケビンの友だちで、花屋のレイモンド=内藤大希さん。
どうやら町のみんなと顔なじみのようです。
ケビンのことも、「あいつはきっと大物になる」と応援しているようですが...。
......トムの小説を盗み自作として賞に応募したケビンはどうなるのか!?
トムは生きているのか死んでいるのか!?
ここからスリリングな物語が展開していくのですが、キャストの皆さんの表情と、作品のスリラー感が一致していません(笑)、すみません!
「今日の稽古場をご覧になったら「これのどこがスリラー?」って思っちゃいますよね(笑)。ここだけが唯一幸せなシーンなんです」(落石)
ということで、この日の稽古場は、注目の文学賞の大賞を受賞したケビンが、一気にスターになってみんなからサインを求められる...というシーンでした。
音楽もポップだし、ダンスも華やかな、ミュージカルらしいシーンです!
さて、メンバーを変えて、こんどは〈エンカレッジ〉チーム。
ケビン=山田元さん
上口さんとはまたひと味違う、生真面目な感じのケビンです。
マギー=高畑こと美さん
硬軟自在!という演技力に注目です。
レイモンド=ユーリック武蔵さん
歌声の豊かさが素敵でした。
新納さん含む、エンカレッジチーム↓
同じ役同士で、一緒に動線を確認したり、音をあわせてみたり、いい相乗効果になっていそう!
「一般的なダブルキャストと違いますし、それが今回の趣旨でもあります。プロデューサーの発案ですが、僕もこのシステムに賛同しました。たとえば『レ・ミゼラブル』なども複数キャストですが、ああいう「どうその"枠"にはまるか」というタイプの作品とは今回は違います。今回は、最低限の枠の中で、いかに自分を出せるか、いかに自分たちのスタイルを作れるか。エンカレッジのメンバーにも、本役と同じことはするなって、ハッパをかけていますよ(笑)。両チーム観てもらえると、まったく別物とまでは言いませんが、かなり違うものが見れるんじゃないかなと思っています」
▽ メインチームの稽古を見つめる山田さん&ユーリックさん
「やっていて面白いのは、やはり俳優たちのやりとりです。台本としては、構造に仕掛けが多いのですが、セリフはわりと普通なんです。その"普通のセリフ"の裏をいかに感じさせるか、というのが役者にかかっている。やっぱり新納君や耕平君なんかを見ていると、上手いなぁと思うし、逆にエンカレッジのメンバーは新しい感覚を持っています。アプローチが違って面白い。本音はもう一方の芝居を「観てみたい」「観たくない」で揺れているだろうし、「あいつがああやるなら、俺はやらない」とか、そういうやりとりも透けて見えて面白い(笑)。結果、こっちのチームはこっちにしか出来ない、あちらはあちらにしかできない作品になっていくと思います」(落石)
このあと物語は、人気作家になったものの第2作が書けず苦しむケビンの前に、ふたたびトムが現れ、いっそう混沌としていきます。
さらに一方でこのロンドンでは切り裂きジャックばりの謎の連続殺人が起こって...!?
伏線らしきアイテムもチラホラ登場し、どんどん「気になる!」が募っていきます!
これ、深掘りすればするほどハマっていくタイプのミュージカルでは...!
「二度観るともっと美味しいですし、三度観ると「あれ?」って思うところも出てくると思います。メインとエンカレッジの違いもあれば、同じチームだけでも1回目と2回目で印象が変わってくるはず!」(落石)
とのことですので、"ハマる"ミュージカルをお探しの皆さん、ぜひご期待ください!
取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)
【公演情報】
10月18日(金)~27日(日) 博品館劇場