■『ビッグ・フィッシュ』2019 vol.2■
10月16日、ミュージカル『ビッグ・フィッシュ』の公開稽古が開催されました。
このイベントでは劇中の3シーンが、報道陣と、倍率10倍以上の中当選した一般オーディエンスの前で披露されました。
『ビッグ・フィッシュ』連載中のげきぴあ、もちろん取材してまいりました!
本日はその模様をお伝えいたします。
【ビッグ・フィッシュ2019 バックナンバー】
# 合同取材会レポート
# 白井晃インタビュー
# 顔寄せレポート
物語は、自分の体験をワクワクするような冒険譚にでっちあげて語る父・エドワードと、幼い頃は父の語る冒険譚が大好きだったけれど、成長して父の大げさな話にウンザリしている現実主義の息子・ウィル、この父子の確執と和解が縦軸。
ここにエドワードとその妻サンドラ、ウィルとその妻ジョセフィーンというふた組の夫婦像、さらにはエドワードの語るファンタジックな物語が横軸となり、ファンタジーとリアルを行き来する感動的なミュージカルになっています。
まずは演出の白井晃さんから
「ご存じのようにこの『ビッグ・フィッシュ』は、今回が再演です。再演では《12 chairs version》と銘打ち、文字通り "12個の椅子に座っている人たちだけでやる" (※椅子に座っている、は比喩と思われます)ということです。初演は日生劇場で22人のキャストでやっていましたが、12人とコンパクトになった分、ドラマが凝縮されています。ただ12人でやることになったので...ねえ、皆さん(とキャストに呼びかけ)大変なんですよね(笑)? 色々なことをやらなきゃいけないので大変なことになっているのですが、そのぶん、楽しんでやってもらっていると私は思っています。そんなところ(大変さ)も今日、お稽古で見ていただければ。
本当に良いドラマですし、良いミュージカルだと思うので、私たちも再演できて喜んでいます。より多くの皆さんに観ていただければと思っています」
とご挨拶。
その後「我々もいつもどおり稽古させていただきますので堅苦しくなくご覧いただければ」と前置きし、稽古場披露が始まりました。
♪『ヒーローになれ』
冒頭早々に登場するナンバーです。
本を読んで、と父エドワードにねだるウィル少年。
エドワードは渡された『イリアス』を読みかけますが、「そんなのはつまらないだろう」「俺たちはアラバマに住んでいるんだ、ここではおまえ自身が物語のヒーローになれる」と歌います。
その曲のちょっと前、大人になったウィル=浦井健治さんが、川に石を投げるシーンから場面披露はスタート。
このシーンも、新しい劇場でどうなるのか気になるところ!
タイトルの"ビッグ・フィッシュ"は、エドワードが昔釣り上げたことのある"アラバマの怪魚"、つまりエドワードの奇想譚を指すと同時に、慣用句としての"大うそつき"のダブルミーニングです。
川は、その"怪魚""エドワードのホラ話"の象徴でもあります。
シーン転換は俳優さんたちの移動の中で行われました。
このあたりも、新しい!
エドワード・ブルーム=川平慈英さん
ヤング・ウィル=佐藤誠悟さん
川平さんのエドワードはチャーミングで、見ているだけで楽しい!
エドワードがウィルに語る物語には、様々なキャラクターが登場します。
人魚=小林由佳さん
魔女=JKimさん
巨人カール=深水元基さん
サーカス団の団長エイモス役=ROLLYさん
ドン(藤井隆さん)とザッキー(東山光明さん)の兄弟や...
エドワードの高校時代のガールフレンド、ジェニー・ヒル(鈴木蘭々さん)の姿も。
すべて、エドワードの人生の中で出会った人たち!
(「俺の話す物語はすべてが真実だ」とエドワードは言います)
《12 chairs version》ではほぼ総力戦で作り上げられるこのシーン。
おそらく夢咲ねねさんは、本役であるジョセフィーン以外のキャラとしての登場、でしょうか?
ウィル役の浦井健治さんも、漁師役で登場!
魚が獲れないと嘆く漁師に、エドワードは「魚のやつらは眠っているんだ、アラバマ・ストンプで魚を起こせ!」とステップを踏みます。
皆さんでのタップダンス!
そんな愉快なキャラクターに囲まれ、息子に「未来は冒険に溢れている、必ずヒーローになれ、世界はおまえのものだ」と高らかに歌う、そんな素敵なナンバーを、キャスト陣が華やかに楽しそうに披露しました。
賑やかなショーシーンが終わったあと、ヤング・ウィルがクールに「今のなに?本当のこととは思えない!」。
さらに「パパは本当に魔女に会ったの?魔女って僕たちの町にもいるの?」と聞くと、川平エドワードは「いない、そのかわりにマッジョーレっていうイタリアンレストランが2軒ある...」
といったところで白井さんから「ここまで」の声。
「やっぱり"マッジョーレ"はいまいちウケないな、ちくしょー!」と川平さん。
白井さんもちょっと笑いながら「本当は予定ではここまでやらなかったんだけど、これ(川平さんのギャグ)の反応を見たくて止めなかった、ごめんねありがとう(笑)」
...いやホント、なごやかで良い雰囲気の稽古場です。
その後しばし、細かく白井さんによる演出がキャスト陣に対してなされました。
「浦井さん、(猟師のところは)"ウィルがやらされている" でかまわないから...」
「(ヤングウィルに)慈英さんがアラバマ・ストンプをやりだしたところは、ちゃんとしっかり足元をみて。「アラバマ・ストンプ?どういうこと?」って風に。それから真似をして」
等々。
続いて、新曲です。
♪『彼の中の魔法』
ウィルが、父エドワードの病気のことを聞き、実家に帰ってきてからのシーンです。
父のこの先が短いかもしれないと知り、歩み寄りたい気持ちがありつつ、やっぱり父を理解できず素直になれない息子。
母サンドラは、夫には魔法の力があるの、なぜあなたはそれを無視するの?と息子に優しく語り掛けるのです。
サンドラ=霧矢大夢さん
霧矢さんのサンドラは本当に懐が広い!
頑なな息子ウィルも、お母さんの前では素直です。
母が息子と話している間、エドワードはお嫁さんのジョセフィーンに、お得意の"物語"をきかせています。
ジョセフィーン=夢咲ねねさん
ここで語る物語は、少年の頃、人魚に会ったという、エドワードお得意の話。
エドワードは、キスで人魚にかけられていたのろいを解いてあげたのだそうです。
続いて、後半に登場するナンバー
♪『二人の間の川』
これも新曲です。
「倒れたエドワードをサンドラが看病しているのですが、そこにウィルがやってくる。ウィルは、エドワードがジェニーという女性に家を買ってあげたという証拠を持ってきて、これはなんだとエドワードを責めます。初演では幻想的にウェスタンのシーンになっていて、面白たのしかったのですが、今回は人間ドラマになっています。...このシーンはステージング含め、昨日出来上がったばかりのほやほやです」
と白井さん。
ベッドシーンでの諍いから...
夫ウィルをなだめる妻ジョセフィーン。
言い争いは、男ふたりのデュエットナンバーへ。
ウィルは、父は話はじめると夢の中へ逃げてしまう、と怒り、
エドワードは、息子が自分を嘘つきだと言った、と怒ります。
ふたりの間には、冷たい川が流れている...。
ついたばかりというステージング、父子を隔てる "川" をキャストの動きで魅せていて、演劇らしい見せ方になっています!
何よりこの新曲、"男性ふたりのデュエット" ならではの激しくもカッコいいナンバーです!!
3シーンの披露後、川平さん、浦井さん、霧矢さん、夢咲さんと白井さんからご挨拶がありました。
夢咲「初演から引き続き同じメンバーで、もういちどこの作品にチャレンジできることがすごく嬉しいです。でも初演とは違い、(ジョセフィーン役ではない)違う場面にも参加させていただいているので、初演のような気持ちで一から頑張っていきたいと思います。どうぞたくさん見にいらしてください」
霧矢「大好きな家族と再会できて本当に幸せです。夢咲さんも言っていましたが、私もサンドラ以外にも挑戦させていただいています。とてもほかの役も楽しくて、本役のサンドラがぼやけないようにしっかりと務めたいと思います。素敵な『ビッグ・フィッシュ』のストーリーをみなさんにお届けしたいので、どうぞ劇場にたくさん足をお運びください」
浦井「初演メンバーが全員揃うという奇跡のようなチームです。白井さん筆頭に、みんなでまた一から本当に作り直しています。1幕最後のシーンや、2幕ラストの慈英さんの歌を聞くと、みんなが涙ぐむんです。すでに涙が止まらないという現象がおきています。きっとお客さまの心の中にも大きなビッグ・フィッシュが泳いでくれるんじゃないかなと思います」
川平「間違いなく劇場が幸せと癒しのハッピーパワースポットになります。ぜひみなさん、ひとりでも多く劇場に足を運んでください。みんなで一緒に幸せを共有しましょう」
白井「2年半ぶりの再演なんですが、もう、メインキャストが全員揃うって本当に奇跡のようなこと。僕もはじめ、全員揃ったと聞いたときには「本当ですか!?」と耳を疑いました。本当に素敵なミュージカルなので、皆さんに見ていただければと思います。初演とは違ったバージョンですが、はじめに披露したシーンにあったタップをこのメンバーで踏んだときに、ひとりで感動していたんです。「わ、このメンバーでやってるー!」って。そういう喜びもありますので、ぜひこの感動を伝えていただければと思います」
もうひとりのヤング・ウィル=佐田照さんも、もちろんいますよ!
シーン披露の合間の皆さんの表情もとても素敵で、本当に和やかで良いカンパニーなんだな、と思いました。
以上公開稽古レポートでした。
"連載"を名乗っているげきぴあ、もちろん、このあともまだまだこの作品を追っていきますよ~!
取材・文:平野祥恵
撮影:吉原朱美
【公演情報】
11月1日(金)~28日(木) シアタークリエ(東京)
12月7日(土)・8日(日) 刈谷市総合文化センター 大ホール(愛知)
12月12日(木)~15日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール