■『ビッグ・フィッシュ』2019 vol.1■
ティム・バートンの傑作映画をもとにしたミュージカル『ビッグ・フィッシュ』。
多くの人々に愛された感動作が今年、ふたたびやってきます!
父と息子の和解、家族の愛という普遍的なテーマを、ティム・バートン監督らしいファンタジックな世界観の中で描いていく物語。2013年にアメリカで初演されたミュージカル版では、映画版と同じくジョン・オーガストが脚本を手掛け、アンドリュー・リッパによる美しく印象に残る音楽が彩っています。
日本では白井晃演出で2017年に初演。
ファンタジックなシーンはミュージカルならではの華やかさで描き、シリアスな現実シーンは演技巧者の俳優陣がしっかりと登場人物たちの人生を紡ぎだし、夢のようでありながらも心に染みる作品として、多くの観客の心を掴みました。
この作品を愛していたのはファンのみならず、キャスト、スタッフも同じ(それ以上!?)だったようで、主人公のエドワード・ブルーム役の川平慈英さん以下、なんと初演の主要メンバーが全員続投という、奇跡の再演が実現!
先日開催された合同取材会の模様もどうぞ...→★
ただし劇場が初演の日生劇場から、ひとまわり小さいシアタークリエとなり、サブタイトルに『12 chairs version』と冠する新バージョン。
演出の白井さん曰く「初演はアンサンブル含めて22人のメンバーだったのですが、今度は主要メンバーだけに絞った12人のバージョン」とのことで、また新しい『ビッグ・フィッシュ』の表情が観られそう。
とはいえ、あの愛すべき物語、そしてキャスト・スタッフ陣の "ビッグ・フィッシュ愛" も、変わりません!
ということで、初演時も9回の長期連載をしたげきぴあ、2019年版も、作品を追いかけたいと思います!!
さっそく10月某日、スタッフ・キャストが一堂に会する "顔寄せ" の現場を取材しました。
初演時の連載は、こちらからまとめてどうぞ →★
●ストーリー●
自分の体験をワクワクするような冒険譚にでっちあげて語る父・エドワード。
少年時代に"沼の魔女"から、自分の死期を予言された話。
故郷の洞窟に住んでいた巨人・カールとの友情。
サーカスで最愛の女性・サンドラと出会い、彼女の情報ほしさに団長のエイモスのもとで働いた話。
...幼い頃は、父の語る冒険譚が大好きだったけれど、成長して父の大げさな話に飽き飽きしている息子・ウィルとエドワードの間には、いつしか溝ができてしまっています。
しかし父が病に倒れたことから、ウィルは"父の話の真実"を知りたいと強く思うようになって...。
皆さんすでに勝手知ったる現場...ということではないのかもしれませんが、顔寄せはサクサク進んだため、出演者の皆さんは写真メインでご紹介!
エドワード・ブルーム役=川平慈英さん。
エドワードは、自分の体験したことをかなり大げさに盛って語る男。
初演時は、川平さんのお茶目な雰囲気、サービス精神もりもりのところがエドワードにピッタリで、もはやエドワードなのか川平さんなのか!? と思わせられたほど。
成長した息子・ウィルからは、ちょっと疎ましく思われてしまっていますが、本当に "愛すべき男" です、川平エドワード。
ウィル・ブルーム=浦井健治さん
ウィルはエドワードの息子です。父を反面教師として育ったのか、現実主義。
でも父の病をきっかけに、すべて大げさな話で覆ってしまったかのような父の真実はどこにあるのか、探り出そうとします。
エドワードの妻、サンドラ・ブルーム=霧矢大夢さん
このミュージカル、エドワードの語る空想のようなファンタジーの世界と、エドワードとウィルが少しすれ違ってしまっている今の現実世界、そしてまだウィルが少年でエドワードも若かった過去の現実世界、3層からなっています。
映画では若き日のエドワードと中年のエドワードは別の俳優さんが演じていましたが、ミュージカル版はどちらも川平さんが演じます。......ということは同じように霧矢さんも、若き日と中年時代、両方演じるのです。
さらにエドワードが語る冒険譚に登場する"いい女"は全部、サンドラだったりもするので、霧矢さん、それはもう大忙し。ポニーテールも可愛い少女時代から(※今回の髪型がどうなるのかはわかりませんが)落ち着いた母親像、そして奇想天外な世界の登場人物まで!
ウィルの妻、ジョセフィーン・ブルーム=夢咲ねねさん
キャリアウーマンでしっかりした女性。ウィルをしっかり支え、夫と義父エドワードとの間で緩衝材にもなる聡明な人です。
エドワードとサンドラの絆も素敵ですが、ウィルとジョセフィーンの夫婦像もまた、素敵なんです。
エドワードの幼馴染、ドン・プライス=藤井隆さん
どんな年代においてもエドワードと張り合っている、永遠のライバル的存在。
エドワードの語るお話の中で"いい女"が常にサンドラであるように、ライバルは常にドン。そんな構造も面白い。でも最終的には、幼馴染の絆もまた、じーんとくるのです。
魔女=JKimさん
エドワードは子どもの頃、魔女に自分の死に方を教えられた、と語ります。
そのエピソードの中に登場する、沼の魔女。
妖しく、ちょっとちゃっかりしていて、そして歌唱力抜群(笑)!
巨人カール=深水元基さん
洞窟の巨人と友達になった話も、エドワードのお得意の物語のひとつ。
町の人から恐れられているのですが、実はちょっと引っ込み思案の巨人です。
深水さん、普通にしていてもかなり大きい方なのですが、舞台上では......?
あと、意外とジョーク好きの一面にも注目です。
ドンの弟、ザッキー・プライス=東山光明さん
少年時代から大人になっても(!?)兄・ドンのひっつき虫のようなザッキー。
藤井さんと東山さんのコンビネーションもとってもチャーミングで、見どころのひとつです!
人魚=小林由佳さん
エドワードのファーストキスの相手は、なんと人魚!
小林さんのアクロバティックなアクション、そして素晴らしいプロポーションも印象的なんです。
ジェニー・ヒル=鈴木蘭々さん
エドワードの高校時代のガールフレンドで、その地元で一番可愛い女の子。
そしてウィルが父エドワードの過去をさぐる上で、キーパーソンになっていく女性でもあります。
ほか、サーカス団の団長エイモス役のROLLYさん(ティム・バートン監督映画の登場人物のような存在感です!)ももちろん続投です。
そして浦井さん扮するウィルの少年時代は、佐田照さん、佐藤誠悟さんがダブルキャストで出演。
ヤング・ウィルの見せ場もたくさんありますよ。
演出は、白井晃さん。
先日の取材会では「自分で演出させてもらいながら最後のシーンで毎回泣きそうになる」「前回の千秋楽の時、ああこの作品とお別れしなければならないのは本当に寂しい、と思っていた」等々、熱く "ビッグ・フィッシュ愛" を語っていらっしゃいました。
白井さんからは次のようなご挨拶がありました。
「『ビッグ・フィッシュ』は自分にとってもすごく思い出深い作品。本当にいいミュージカルに出会わせていただいたなぁ...という思いがあったので、再演できることがとても嬉しく、"この作品を再演する"ことを大切に考えていただいた皆さんに感謝しております。
何よりもキャストの皆さん、主要メンバー12人が全員揃ったということがすごい。再演するにあたり、プロデューサーから「全員揃いました」と聞いて思わず「本当ですか!!!」って叫んでいましたし(笑)、嘘でしょ、って思いました。こんなこと普通ありえない。それだけ皆さんがこの作品を愛してくださっていたんだなと思うし、その気持ちが大変嬉しく、再演もぜひいいものにしたいと思っています。
劇場は(初演の)日生劇場からシアタークリエに変わります。サイズが小さくなったとは言いたくない。ギュッと凝縮した形になります。ただ出演者が22人から12人になります。これは涙ぐましい努力が必要になる(笑)。皆さんにもご苦労をおかけすることになりますが、それを逆に楽しんで、小劇場感覚でみんなで力を合わせて作っていきたい。
そして初演では叶わなかったツアー公演もあります。せっかく刈谷と兵庫に行くわけですから、初演のイメージを損なうことなく、より上に行きたいと思っています。おそらく、人数が減ったことによって、人間ドラマがより凝縮されることになると思います。そこを見せられる作品にしたいです。楽しんで稽古をしてもらって、楽しんで初日を迎えられたらと思います。よろしくお願いいたします」
2019年バージョン『ビッグ・フィッシュ』も、楽しみです!
取材・文・撮影:平野祥恵
【公演情報】
11月1日(金)~28日(木) シアタークリエ(東京)
12月7日(土)・8日(日) 刈谷市総合文化センター 大ホール(愛知)
12月12日(木)~15日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール