2015年に宝塚歌劇団を退団後、ミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』、『マタ・ハリ』、地球ゴージャスプロデュース公演 Vol.15『ZEROTOPIA』など、話題作で次々と主演やメインキャストを務めている柚希礼音。わずか3年にして、ミュージカル界のトップを走る1人に躍り出た感があるが、彼女が女優業と並行して大切にしているのが、歌とダンスで展開するアーティスト活動だ。『REON JACK』と名付けられたコンサートシリーズも、2016年、2017年と続き、今年で3回目。日本の音楽シーンを賑わすアーティストたちと仕事をしてきたミュージシャンで、プロデューサーでもある本間昭光が、今回も音楽プロデューサーを担当。前回の『REON JACK 2』で柚希と共に"モンスター級"のダンスを見せつけた、大貫勇輔と大村俊介(SHUN)、YOSHIEクリスティアン・ロペスの4人も続投で、大村はステージングと振付も担当する。10月上旬、都内で行われている稽古場を訪れた。
スタジオに入ると、すでに柚希と大貫、大村、YOSHIE、ロペスの5人がアップ中だ。柚希は時折笑顔も見せてリラックスムード。だが稽古が始まり、今回のオープニング・ナンバーの曲が鳴ると、たちまちその身体にエネルギーが満ちあふれるのが分かる。本作のために書き下ろされた楽曲は、リズムが強く響くスタイリッシュなナンバー。柚希は日本人離れした四肢を存分に活かし、ポージングが印象的なダンスを展開していく。
それぞれが主役級のダンサーとして活躍する大村たちだけに、5人がオーラを放ちながら踊るさまは圧巻だ。踊り終わった後、柚希が大村に細かい振付を確認していたが、2人の会話から「(ミュージカルの)シカゴ風......」という単語が漏れ聞こえた。力強く、セクシーなダンスで魅せるオープニング。冒頭からマックスの高揚感が嬉しい。
次の稽古は、日本のアーティストのカバー曲を、柚希が歌いながら踊るシーン。男性ヴォーカルで大人の恋を歌った歌詞だが、柚希が歌うと、そのまま男の視点のようであり、女が歌う"男唄"の味わいもあり。そこに柚希と大貫、大村、YOSHIEが加わり、艶めいた大人のシアターダンスが緩急自在に繰り広げられてゆく。
続いて、大人の憂愁と倦怠を感じさせる洋楽のスタンダード・
ここでもキーワードとなるのは"艶"だ。大村の力強くも繊細な"艶"、タンゴにルーツをもつロペスの"艶"、大貫の若くしなやかな身体から放たれる"艶"と、男役の色気を経て、女優としての陰影を刻み始めた柚希の"艶"が揺らめく。
曲が終わると、すぐに鏡に向かって何度も確認を始める柚希。関西弁でアドバイスしながらリラックスムードを引き出す大村、2人にトコトコと近づいて笑い合う大貫など、全員がどこまでも自然体だ。
休憩を挟んで、今度は日本の女性歌手のカバー曲のシーン。誰もが知る80年代の大ヒット曲も、柚希が歌いながらアンサンブルのダンサーたちと踊れば、また違った世界観が広がる。さらに柚希と大村、または柚希と大貫で組むごとに、異なる関係性に見えるのがダンスの面白さ。
ところが突然、柚希と大貫の場面で「手の置き所が分からない」事態が発生! 女(柚希)が男(大貫・大村)を翻弄する歌詞ゆえに、"女が上で、男が下"というポジショニングもサラリとこなす大村に対し、つい"並んで"手を差し出してしまう柚希と大貫。「すいません~」と謝る柚希と、「??」という疑問符が顔に浮かんでいる様子の大貫。ダンス中の表情とのギャップに、思わずスタッフ席からも笑いが漏れる。
取材中の最後の曲は、9月に発売されたばかりの柚希のセカンド・ミニアルバム「R ing」から、「アラート feat.NAOTO」。本間が作曲を手掛け、ポルノグラフィティの新藤晴一が大人の女性をイメージして作詞した疾走感あふれる曲だ。踊りながら歌う柚希の声は伸びやかで、身体のキレも稽古冒頭から変わらないのは、さすが。
曲が終わり、大村が1人のダンサーに振付を教えている間、柚希は別のダンサーに笑いながら話しかけるなど、稽古場には終始心地よい空気が流れていた。"モンスター級"のダンサーたちが、大人の情感をたっぷりと示す一方、カンパニーとしての一体感もしっかりと生まれつつある稽古場。本番では、進化を続ける柚希の新しい表情が見られそうだ。
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取材・文/佐藤さくら