■『シークレット・ガーデン』特別連載 vol.2■
亡くなった美しい女性が愛し、その死後、固く閉ざされてきた庭。
両親を亡くした少女がその庭の鍵をみつけたことから、愛する者を亡くし時間を止めていた人々の心も少しずつ再生していく......。
バーネットによる名作児童文学『秘密の花園』を原作にしたミュージカル『シークレット・ガーデン』が今年、日本初演されます。
5月末、その稽古場を取材してきました。
演出は、ブロードウェイやカナダでもこの作品に関っているスタフォード・アリマさん。
彼のもと、稽古は順調に進んでいるようで、初日まで2週間近くある中での取材でしたが、すでにカンパニーは何度か「通し稽古」もやっているようです。
取材したのはそんな中、シーンごとに細かく振り返る稽古でした。
こちらは、先日開催された「歌唱披露会見」でも歌われた、
『A Girl in the Valley』のシーン。
物語は、インドで暮らしていた少女メアリーが、両親をコレラで亡くし、イギリスにい住む叔父アーチボルドに引き取られるところから始まりますが、アーチボルドもまた10年前に妻のリリーを亡くしていて......。
屋敷で鬱々と暮らす彼が、亡きリリーとの思い出に浸っている......という場面です。
アーチボルド=石丸幹二さん。
先日の会見で石丸さん、アーチボルドのことを「ひどい人」と表現していましたが、おそらくひどいのは、彼を取り巻く状況。
最愛の妻を亡くし心を閉ざし、彼女を思い出させる(彼女と血の繋がりのある)メアリーとも距離をとってしまいます。
そんなアーチボルドの「閉ざされた心」を切ない芝居でみせる石丸さん!
一方、リリーの花總まりさんは、アーチボルドの思い出の具現として登場しますので、美しく優雅で、優しい笑顔を浮かべています。
歌う石丸さん、ワルツを踊る花總さん、美しい...。
ふたりの出会いのシーンを思い出しているようです。
物語には、リリーのほかにも、すでに亡くなった人たちが夢の住人のように登場します。彼らは「ドリーマーズ」と呼ばれています。
こちらは、メアリーの両親。
ローズ役の笠松はるさんと、アルバート役の上野哲也さん。
こちらは鎌田誠樹さんと、三木麻衣子さん。
「ドリーマーズ」もすごいメンバーですよ!
笠松さんは劇団四季で数々のヒロイン(『オペラ座の怪人』クリスティーヌなど)を務めた看板女優でしたし、上野さんは『ミス・サイゴン』のクリス役などでおなじみ。
鎌田さんは『レ・ミゼラブル』のジャベールですね!
この曲はアーチボルドとリリーのデュエットですが(それもまたとっても素敵ですが)、別のシーンではふたりのデュエットにどんどんドリーマーズの歌声が徐々に重なっていくところがあって、なんかもう、優しい手触りのタペストリーが織りあがっていくかのような、至福の音空間が出来上がっていました......。
さて、夢の中のような優雅なダンスシーンは、小さな乱入者によって破られます。
「あなたがアーチボルド叔父様ですか?」とメアリー。
メアリーはWキャストですが、こちらは上垣ひなたさん。
ここでは、メアリーが話しかけるタイミングがとても大事だ、とアリマさん。
「ちゅうちょするとメアリーっぽくない、ズカズカと言っちゃって」「間があいちゃうとダメになってしまいます」「うん、それくらいハッキリしゃべって」とメアリーふたりに要求。
何度か練習してみましょう、ということでしたが、上垣さんも、もうひとりのメアリー・池田葵さんも一発で「good!」となっていました。
「この写真はリリー叔母様ですか?」
メアリーがインドから持ってきた写真をアーチボルドに見せると、リリーが現れます。
このあたり、本当に現実と夢が美しく混ざっていて素敵です。
メアリーの両親や使用人はコレラ(伝染病)で亡くなったため、おそらく思い出の品は一切、インドから持ってこれなかったのでしょう。そんな中で、隠し持ってきたのがこの写真なんです。
「私は子どもというものが不得意」と、子ども本人に向かって話すアーチボルドですが。
乱れていたメアリーの服を直してあげる姿からは、彼の優しさが伝わってきます...。
後姿ですが、メアリー=池田葵さん。
屋敷の中では、みんながそれぞれに傷を抱えています......。
どのようにして、彼らの顔に笑顔が戻るのでしょうか?
もう少し、稽古場レポート続きます!
取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)
【『シークレット・ガーデン』バックナンバー】
# 歌唱披露会見 レポート
【公演情報】
・6月11日(月)~7月11日(水) シアタークリエ(東京)
・7月14日(土)~16日(月・祝) 厚木市文化会館 大ホール(神奈川)
・7月20(金)・21日(土) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール(福岡)
・7月24(火)・25日(水) 兵庫県立芸術文化センター阪急 中ホール