ミュージカル『メンフィス』演出・振付家ジェフリー・ページさん インタビュー

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2010年のトニー賞で作品賞を含む4冠を達成したミュージカル『メンフィス』。1950年代のアメリカで、当時タブーとされた黒人の音楽であるブルースをラジオやテレビ番組で紹介した実在の白人DJ、デューイ・フィリップスの半生をモチーフにしたミュージカルです。

日本初演は2015年。伝説のDJ、ヒューイ役を山本耕史さん、ヒューイが恋する黒人シンガー、フェリシア役を濱田めぐみさんが演じ、全編を彩るグルーヴ感満載のソング&ダンスとともに大好評を博しました。その『メンフィス』が、主演の二人をそのままに今年12月に再演が決定! 前回に引き続き演出・振付を手掛けるジェフリー・ページさんに意気込みを伺いました。

――この『メンフィス』という作品をジェフリーさんはどう捉えていらっしゃいますか。
「どの社会にもメインストリームというものがあって、自分たちの思う美しさと違うからという理由で、あえて目に入らないようにしている、無視している物や人って、たくさんあると思うんです。そうした埋もれた物や人に美しさを見いだせる男性(ヒューイ)がメンフィスという街に現れる。彼は自分が見つけた美しいものを世界中の人たちに知らしめるということをやってのけるんですけれども、それが本作のテーマだと僕は思っています。物語で描かれる黒人社会と白人社会の分裂は、あくまでメタファーの一つにすぎないんですよ」

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――初演時、どんなことを心掛けて演出・振付を手掛けられましたか。
「いい芸術というのはパズルみたいなもので、一枚絵になった完成品を『はい、どうぞ』と渡されるよりかは、ピースの一つひとつを自分で組み立てていくほうが、お客さんだってうれしいし、観る喜びが大きいと思うんですよね。演出・振付家としての僕の仕事は、そのパズルのピース、つまり脚本に書かれている言葉たちをお客さんに届け、脚本のより深い部分に描かれているテーマをきちんとくみ取ってもらうこと。大変な作業ではありましたが、とてもいい経験をさせてもらったと思っています」

――演出・振付をされる中で、特にチャレンジングに思えたことがあったら教えてください。
「アメリカで黒塗り(顔を黒く塗ること)は"ポリティカル・コレクトネス"と言われ、絶対にやってはいけないことになっています。ですから、自分のミッションは肌以外の部分を際立たせ、そこにお客さんの目を持っていかせることでした。例えば、黒人のキャラクターと白人のキャラクターとで違う動きを振り付けてみたり、黒人の衣裳はヴィヴィッドなカラー、逆に白人のものは抑えめにしてみたりと、変化を持たせたんですね。肌を黒く塗らず、ほかのアプローチで異なる人種を表現するというのも大事だと思うんですよ」

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――山本耕史さん濱田めぐみさんとのお仕事はいかがでしたか。
「すごく楽しかったです。僕はこれまで、アーロン・トヴェイト、デンゼル・ワシントン、サットン・フォスター、ビヨンセといった名だたる人たちと仕事をしてきました。その経験から言っても、コージやメグミのような優れた才能との出会いはそうそうあるものじゃありません。二人とも大変賢く、鋭い質問を投げかけてくるんですよ。彼らのおかげで、僕一人では到達できなかったレベルにまで作品を押し上げることができたと思います。僕にはセイコン・センブローという名の友人がいるんです。彼女は(2016年に『Eclipsed』という作品で)トニー賞候補に挙がるなど、ブロードウェイで成功している女優の一人なんだけれど、稽古場でものすごくたくさんの質問をしてくるんです。初めは『なんでこんなに質問をしてくるんだろう?』と困惑したけれども、彼女の演技を見て『なるほど、だからああいう質問をしてきたのか』と納得しました。そんなセイコンと、コージやメグミも同じスピリットを持っている気がします。広い視野を持っていて、僕に違ったシーンの見方を示してくれる。また、ほかのキャストやスタッフも含め、とても居心地のいい環境を提供してくれました。笑いと涙が絶えない、情熱的でエモーショナルな現場でしたね。僕自身、演出家、振付家、アーティストとして成長させてもらったと思います」


――再演に向けての思いをお聞かせください。
「僕は舞台に作品をかける際、理由が必要だと思っていて。よく『なぜこの作品を、今ここで上演しなければいけないのか』『観客が必要としているものは何なのか』『僕たちが伝えなきゃいけないことは何なのか』といったことを自分に問いかけるんです。そうすることによって、より意義のある舞台を作れるんじゃないかなと。今回の『メンフィス』の場合、今、とてもおかしな世界情勢ですよね。僕らの国でいえば、ドナルド・トランプによってブルジョワジーとプロレタリアートが常に対立し合う構図が出来上がってしまった。そして、自分たちと対立する立場の人と会った時にどうコミュニケーションを取ったらいいか分からないために、互いに傷ついているような気がするんです。それぞれの主張に耳を傾け、共感したり譲り合ったりすることさえできれば、もっといい方向に進むはずなんですがね。それをできない人が多すぎる。『メンフィス』で描かれるように、僕たちが美しいものを見いだすことに意識を向け、さらに繊細なものを大事に取り扱うことができるようになれば、世界は変わると思います。本作は、脚本が素晴らしく、音楽もダンスも見応えがあります。とてもグルーヴィーで楽しい作品ではありますが、それだけで終わったら意味がありません。音楽やダンスをとっかかりに、物語の世界にお客さんを引き込み、奥深くに隠されたメッセージを受け取ってもらう。それが僕の役目です」


取材・文=兵藤あおみ
撮影=川野結李歌

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