2018年、少年社中は20周年を迎える。これを記念した第一弾のステージ、少年社中✕東映 舞台プロジェクト「ピカレスク◆セブン」が年明け1/6(土)より東京・大阪・愛知の3都市で上演される。
すでに豪華なキャストが発表されているが、主人公の一人として「トクガワイエミツ」を演じる俳優・宮崎秋人さん、そして脚本・演出を手がける少年社中主宰・毛利亘宏さんに話を伺った。
毛利 秋人と写真撮るの初めてじゃない?
宮崎 対談も初ですよね。
――ミュージカル「薄桜鬼」シリーズや、「メサイア」シリーズ(毛利は脚本で参加)、また宮崎さんが毛利さん主宰の少年社中の舞台に出演するなど(「ネバーランド」/2014年)、なかなか縁の深いお2人です。
毛利 秋人が「薄桜鬼」のオーディションに来たときの、「キラキラしてんなあ」って印象がまだ残っていて。とにかく真面目で全力投球な人ですね。もともと器用な感じはしたんですけど、それでもその真面目さでだんだんと実力を積み重ねてきたんだなって思いました。
宮崎 「薄桜鬼」は初舞台ではないんですけど、本格デビューを飾ったような作品。毛利さんは僕の役者人生の最初から知っているような人なので、この世界の父みたいな(笑)。「薄桜鬼」でも作品を重ねるにつれ、永倉(新八=宮崎の役)の出番がだんだん増えてくるのを自分でも感じていて、すごくうれしかったです。
――来年1月上演の「ピカレスク◆セブン」は、2016年に上演された「パラノイア★サーカス」に続く、少年社中×東映 舞台プロジェクトの第二弾作品。毛利さんご自身がその主人公の一人に宮崎さんを抜擢ということになりますよね。
毛利 キャスティングはいま僕が興味ある、一緒にやりたい人たち。その人たちにはこんな役がカッコよかろうということで、キャラクターを当てはめていきました。例えば「マクベス」(鈴木勝吾)とか「トクガワイエミツ」(宮崎秋人)など有名なキャラクターが大半なので、この人はこうじゃないか、あの人はこうしようっていう作業が楽しかった。秋人には「ネバーランド」に出演してもらいましたが、あれは再演で既に別の役者がやった役を秋人に演じてもらったので、秋人をイメージしたオリジナルの役を書きたいと思いました。そしてもう一人の主人公・マクベスを演じる鈴木勝吾と秋人とは、「薄桜鬼」でも案外がっぷり四つで組んだことがないので、この2人がちゃんと剣を交えるような話を書きたかったんですよね。
宮崎 勝吾くんとはプライベートでもすごく仲がいいんですけど、役の関係性としては確かにニアミス程度。ただしゅっちゅう共演したいって人ではなくて、「ここぞ!」というときまで取っておきたい感じでした。で、今そのときが来たような。
毛利 腹を括って、いよいよって感じだよね。
宮崎 「パラノイア~」での勝吾くんには度肝抜かれました! 本気を出したときの彼の凄さは知っているし、その相手としてちゃんとやり合える存在でいたいです。そしてもちろん、毛利さんに呼んでもらえるのはうれしい。同時に、毛利さんの演出を受けるのはいまだに緊張します。"父"の前でヘタこけないですから(笑)。
――宮崎さんのトクガワイエミツ役というのは、あの徳川家光ですよね?
毛利 僕のフェイバリット将軍は徳川家康なんです。この作品では家康がラスボスなので、そこからの家光、ですね。家光は最初の生まれながらの将軍なのでボンボンで、おじいちゃん(家康)が大好き。家康も非常に孫をかわいがっていたんです。僕自身も家光ってわりと好きなキャラクターで、宮崎秋人にぴったりだなと思って。彼のキラキラした部分をちゃんと黒に染めていく話にしたいと思いました。最初から悪いのではなく、だんだん悪くなる。この作品の中でイエミツが一番成長していくんです。成長といっても、悪の方向に行くんだけど(笑)。
宮崎 影のある役っていうのはあっても、悪役って初めてだと思います。だからいきなり悪っていうよりもそういうグラデーションのある役の方がやりやすいと思うし、ありがたいですね。
――ざっくりとしたストーリーラインを説明すると......イエミツの治世に、世を再び乱世に戻さんとする"東照大権現・トクガワイエヤス"が現れる、と。たちまち日ノ本は闇に包まれ、イエミツは7人の極悪人"ピカレスク◆セブン"を異世界より召還。彼らとともにイエヤスに反旗を翻すも、今度は彼らの裏切りにあって自分の手に負えなくなり......という、ちょっとお騒がせな部分もある(笑)キャラクターですよね。
宮崎 自分で自分の首を絞めているようなヤツ(笑)。そういう巻き込まれ型のキャラクターも、今まであんまりないと思います。
毛利 でもそういうイエミツが一国を治める覚悟を決める話でもある。国を治めるという大義において悪とは、とかいう話にもなるはずで、「悪とはなんだ」というところを担うキャラクターでもあるんじゃないかな。
――悪役の経験はないとのことですが、"悪"にはどこか惹かれるものがありますか?
宮崎 それはもちろん! 全くやったことがないからこそ、「よくぞこの役を僕に」と思いますよね。
毛利 でも役を当てといてナンだけど、秋人に悪役のイメージ、全然ないんだよね。
宮崎 いや、ここから僕の悪役人生が始まるかも(笑)。
毛利 ここまで悪人を集めた作品を書こうと思ったのは、今「宇宙戦隊キュウレンジャー」(テレビ朝日系)という正義の味方が9人出てくるドラマを書いているというのもあると思う。ここまで正義があふれていると、逆に振れて、悪が書きたい気持ちにもなるというかね。「あっちで思いっきり悪が書けるぞ!」というのが、「キュウレンジャー」を書くモチベーションにもなりました(笑)。
宮崎 なるほど。作家さん的にはそういう理由もあるんですねえ。
――宮崎さんが感じている、毛利演出や作品の魅力を教えてください。
宮崎 演出家さんとしては、とにかく優しくて自由にやらせてくれます。でもそれは、より自分で考える力が求められるということ。で、自分では一生懸命はみ出したつもりなんですけど、いつも「もっともっと足りなかったな」って思うというか。
――孫悟空でいうところの、大仏の手のひらみたいな?
宮崎 そんな感じです! そこを軽々とはみ出しているのが、井俣太良(毛利とは高校時代からの付き合いになる「少年社中」の看板俳優)さんなのかなって(笑)。
毛利 彼の場合は、「オイ、どこ行くんだ。戻ってこーい!」って(笑)。
宮崎 観客として観ているときは、毎回心臓をギュッと握られるような感じがします。純粋なファンなんですよね。毛利さんの作品を観ているときは、ただのお客さんになる。で、毎回、「なんで俺これに出てないんだろう」って。独特の華があって、毛利さんの作品を観ると、魔法にかけられます。今回はかける側になって、お客さんを毛利さんワールドへ誘いたい! 僕のために書いてくださった役でもありますし、「やっぱりコイツでよかった」と言われるような結果を残したいですね。
毛利 新年一発目の観劇をこの悪人ばっかりの「ピカレスク◆セブン」で迎える方も多いと思います(笑)。これはこれで華々しい"悪の祭典"に、ぜひお越しください。
取材・文 武田 吏都