【「人間風車」連載(1)】成河×ミムラ×加藤諒×河原雅彦座談会「もともと残虐非道に目がない」

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9月28日(木)に東京芸術劇場プレイハウスにて開幕する、PARCO&CUBE 20th.present『人間風車』

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『ダブリンの鐘つきカビ人間』や『MIDSUMMER CAROL〜ガマ王子VSザリガニ魔人〜』(『パコと魔法の絵本』として映画化)で知られる後藤ひろひと原作の本作は、1997年に後藤氏が劇団「遊気舎」に書き下ろした"童話ホラー"の傑作と言われる作品です。

パルコプロデュース版は、2000年にG2演出のもと、東京・PARCO劇場で上演され、生瀬勝久、斉藤由貴、阿部サダヲ、八嶋智人、大倉孝二 他が熱演。2003年(同じくG2演出)には、永作博美、入江雅人、河原雅彦 他が出演し、共に話題を集めました。

今回の14年ぶりの上演には、成河さん、ミムラさん、加藤 諒さんをはじめとする熱いキャストが集い、さらに演出は2003年版でサム役として出演した河原雅彦さんが手掛け、新たな演劇として上演されます。

後藤さんが「この作品はコメディであり、ホラーであり、ファンタジーであり、私が書いた脚本の中では最大の悲劇です。今回いくつもの部分を書き直す事にしました。きっとこれまでとはずいぶん違う『人間風車』をお見せする事になるのでしょう」とコメントを寄せた本作。果たしてどのような『人間風車』になるのか。河原さん、成河さん、ミムラさん、加藤さんにお話しいただきました。

<ストーリー>※公式HPより
売れない童話作家の平川(成河)が披露する奇想天外な童話に、近所の子供たちは大はしゃぎ。
けれども、童話の登場人物や題名はレスラーの名前、テーマも"三流大学出身より高卒の方がまし" だから、子供の親からはクレームばかり。
公演に集まる子供たちの中には、へんてこ童話の主人公になりきって現れる奇妙な青年・サム(加藤)がいた。
ある日、平川はひょんなことから売れない女優のアキラ(ミムラ)と知り合う。その出会いは平川の作風にも大きな変化をもたらしていくのだが...

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――『人間風車』に出演が決まっての感想を聞かせてください。ますは加藤さんからお願いします。

加藤 『人間風車』という作品は知ってたんですけど、映像でしか観たことがなくて。お話をいただいたときに、僕の前にサムを演じていたのが阿部サダヲさんと河原雅彦さんだと聞いて、一気にプレッシャーを感じました。「大丈夫かな、大丈夫かな」って今は不安の方が多いです。


――ミムラさんはいかがですか?


ミムラ 私は映像で斉藤由貴さんが演じていらっしゃるのを観て、(2003年版では)永作さんも演じていらっしゃいますし、(加藤さんと逆で)「こんなすごい先輩方が演じた役をやらせてもらえるなんて!」という喜びがありました。それと、作品の持つ引力の強さに「この中に立てるなんて楽しみ!」っていう...楽しみばっかりです。
河原 すごい良い受け答えじゃないですか! 俺や阿部くんも、諒にそう言ってもらえたらどんなに......。
加藤 ......!! いやいやもう。だからこそ不安なんです!


――(笑)。成河さんはいかがですか?
成河 僕は2000年版の映像を観て、(成河さん演じる平川役は)生瀬さんが演じられていましたけど、すごく気力体力がいる役だなというのもありつつ。でもやっぱりああいう不安定な人物というのはやりがいを感じました。ちょっと追い込んで、やれるところまでやりたいなという感じです。


――河原さんはいかがでしょうか?
河原 率直に言うとすごく難しい作品だなって思いました。もともと後藤さんが「遊気舎」っていう劇団時代に書いた脚本と、パルコプロデュース用に演出のG2さんが後藤さんと一緒に練りこんでいった脚本があって。今回の大元はパルコプロデュース用の脚本なのですが、演出家が脚本づくりに関わってる作品って、演出プランが結構脚本に入ってるんですよ。だから普通に作家さんがフラットに書いたものを預かるほうが、僕としてはいろいろ発想をしやすいっていうね。


――G2さんの香りが残ってるわけですね。
河原 ここはこういう流れでこう見せてくって計算されたものがテキストになってる部分はあると思います。


――そこを敢えて変えるのでしょうか。
河原 変えていいことあるのかな?(笑)でもこれからかな。無理に変えることはもちろんないですし。ただ「遊気舎」の脚本のほうが残虐非道っぷりがすごいらしくて。それにすごく興味が......。もともと残虐非道に目がないので(笑)。
成河 残虐非道ソムリエ!(笑)
河原 そこは後藤さんと僕が打ち合わせしたときも話をしていて。もちろん今までのも、とてもいい作品だったと思うんですけど、なんかちょっとトライがないとね、と思うので。そこは後藤さんと一緒に。


――えぐみが足される?
河原 さあ、どうでしょうか。けど、えぐみがあった方がいいでしょ? このご時世。


――ちなみに河原さんは以前ご出演もされてましたけど、そのときに演出をしたいと感じられましたか?
河原 当時は思っていなかったですね。サムっていう役が絡む人って本当にお姉さん(アキラ)と作家(平川)が中心なので、本番中も楽屋に一人でいた記憶が(笑)。だから今回、改めて脚本を読み返して、やっと全貌がわかりました(笑)。

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――皆さんの役の印象を教えてください。加藤さんの演じるサムは、31歳の青年ですが、不思議な感性を持っています。平川の童話が大好きで、それを完璧に記憶し、体現し、現実化していく、という役どころです。
加藤 難しいなって。自分にないものがすごくいっぱいあって。まだどう演じたらいいんだろうっていうのがわからない状態です。でも、すごくやりがいはあるなと思います。


――ミムラさん演じるアキラは、実力のある女優だけど仕事に恵まれていない、という役どころ。実はサムのお姉さんで、そこがこの物語にも大きく関わっています。平川の純朴さと童話に心ひかれる女性です。
ミムラ アキラはとても魅力的なキャラクターだなと思っています。彼女のもつ、自分のやりたい仕事に就いてるけどもうちょっと上にいきたくて、でもこの仕事も今丁寧にやらないと先がないぞ、という30代の女性の切迫感みたいなところは共感していただけるはずだと思うので、そこはちゃんとやりたいです。

 あと、サムの場合と直結ではないんですけど、私にはダウン症で小児性麻痺の親族がいました。小さい頃は怖かったし、どう接していいかわからず、そこから「乗り越えてこうする"べき"だろうな」ができて、その「べき」からどうやって離れればいいのかっていう、自然体にいくまでまたスパンがあって。最後の最後までどうやって接したらいいのかわからないままで終わった経験があるんです。

 アキラも自分の現実を飲み込んでいるように見えるんですけど、でもどこかでは「こうがいいんじゃないか」ってところに縛られてたりとか、そこを突かれたからの行動っていう部分もあると思うので。そういう実体験がちょっと使えることもあるかもしれないなと思っています。

成河 ミムラさんの話に圧倒されました。舞台は稽古があるので、どういう風に演じようかは稽古に入るまであんまり考えないですけど。ただ、いろんな可能性があるだろうなっていう妄想は広げておきたいなって。多分、どんな平川像があってもいんだと思いますし。残虐非道ソムリエがいらっしゃるので(笑)。
ミムラ まだ調理前ですもんね。
成河 そう。いろんな調理法を一緒に考えていければいいと思うので。なるべく一つに決め込まずに、いろんな可能性を楽しんで思い浮かべておきたいなと今は思っています。


――平川は長台詞が多そうですね。
成河 僕はつかこうへいさんの劇団でお芝居をやっていたのでね。長台詞は好きですよ? 長台詞の方が...ラク...いやそんなことはないかな。でも会話のほうがすごく繊細だったりすることもあるので。長台詞はある程度一人で道筋さえ作ってしまえば。


――今のお話を聞かれて、河原さんから皆さんに対してリクエストはありますか?
河原 ミムラさんのお話とか聞いていて、そういうアプローチって持ち込めたら面白くなるなって。要は弟になじめないってことでしょ? 馴染まなきゃいけないのに馴染めないって、なかなかいいねって。美術ひとつとっても、音楽ひとつとっても、新しいものにはなっていくから。このカンパニーの『人間風車』にすべくいろいろコミュニケーションを取りながらと思っています。

 そもそも成河が、これだけ体動かさないと気が済まない人が、作家やるって。自分自身で何とかできてしまいそうな人が、自分では手を下せずにサムにある事をしてしまう、っていうことが楽しみですよね。新しい平川像になるかもしれないですね。諒は......そうねえ、フライングでもさせようか。

一同 (笑)。
河原 諒とは何回か一緒に仕事してるけど、なにせクセが強いから。それが今まではポジティブなほうが多かった。でも本当の諒って腹黒いし、ねえ?
加藤 言いたくない!(笑)
河原 陰の部分もあるから、本当に殺したい人のことを想像してって言ったら、すごい顔できると思うんですよ。だからそのギャップを使って面白くできたらなと思うんですけど。


――ミムラさんのお話を聞いても思ったのですが、人が素で持ってるというものを今回はえぐられるというか...。
成河 しんどそうですよね(笑)。こういう作品の場合は、自分の直視したくないものを出せてなんぼなのかなと思うので、そういうのを焦らずにできたらと思いますね。あまり軽々と人に言えるものでもなかったりするでしょうから、じわじわと自分の中で見つけていく作業を、時間かけてやれたらやれるほどいいんだろうなと。いろんなことを試しながらできたらいかなって思いますね。


――稽古時間が濃厚になりそうですね。
ミムラ 楽しみですよね。
成河 誰とも一言もしゃべらないような稽古に(笑)。


★その2に続きます!

『人間風車』は、9月28日(木)から10月9日(祝)まで、東京芸術劇場プレイハウス、大阪、ほか各地公演予定。

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