「テレビに出ている◯◯さんが観られてよかった」、そんな感想で演劇を終わらせたくない。/マームとジプシー・藤田貴大インタビュー

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まさに彗星のごとく現れ、ミュージシャンや漫画家や小説家らと広くコラボし、型破りのスピードで創作を続けてきたマームとジプシーが、10周年を迎えた。それを記念して過去作品を複数携えて全国ツアーを行う。前例のないプログラムに込めた、作・演出・主宰の藤田貴大の思いを聞いた。

IMG_3378.JPG――マームとジプシーの活動は、いわば燃料補給しながら走り続けているので、何周年といった節目を気にしないイメージがありました。10周年の記念ツアーを決めた理由は?

「確かに今回の企画の始まりは、10周年ということはあまり意識してなかったかもしれません。それよりも、僕が20代で書いた作品を"まとめて観る時間"を作りたいと思った。それは僕自身も思ったし、たぶん出演者やスタッフも思ったと思います。当然、その時間をお客さんに観てほしいねと」

――それにしてもボリューミーな内容です。テーマやモチーフが共通する3作を編集してひとつにした作品を3本、そして30代になった日常が反映される『あっこのはなし』を単独でと、全部観ると10作分になります。

「同じモチーフの作品を編集してひとつにするのは、去年、彩の国さいたま芸術劇場で予定されていた『蜷の綿』(藤田が蜷川幸雄の半生を戯曲化し、蜷川自身が演出するはずだった作品。2016年2月上演予定が蜷川の体調不良で延期された)の代替公演で、マームの過去の作品から"夜"と"不在"といった共通するモチーフを描いた作品を3本選んで、一つの時間にして、上演したのが最初です。その時の作品はさらに編集を加えて上演します。ツアーが彩の国さいたま芸術劇場から始まるのは、そういう経緯もあります。」

――地域によってプログラムは異なりますが、最低でも2シリーズ4作品は観られるようにしているんですね。

「僕らは5〜6年前から国内外の各地でよく公演していますが、通常、一つの土地に作品を持って行けるのは、当たり前にひとつだけだし、その土地の人たちは次に僕たちの作品に、出会えるまでに時間が空いてしまう。僕はそれが寂しくて。作家なら誰しもそうだと思いますけど、ひとつの作品で自分のことを全部言えたことなんてないわけで、とすると、地方のお客さんは僕のその時の一部に触れただけで終わってしまう。だから、マームの色んな側面を観られるように、複数の作品を持って、いろんな場所に行きたいと思いました。

 それと、自分自身が18歳まで、演劇作品がほとんど観られない町にいたコンプレックスがいまだに消えないのも大きいです。地方には当時の僕と同じように悶々としている人がきっといる。そこを訪れて、その時期に劇場に来れば3作品、4作品観られるような状態をつくりたいと思いました。仕掛け方は違うとしても、こういうプロジェクトが一般的にも可能になれば、"地方にいる"という事のコンプレックスを少しは解消出来る気もしました。」

――普段あまり演劇を見慣れていない人は、演劇に対して受け身になる?

「そうなのかな。ただ、対象が複数あって、その中から自分で選ぶ事は、意識的になりますよね。もちろん演劇を観にくる理由は何でも良いとも思うけど、内容とかじゃなくて "テレビに出ている◯◯さんが出演していた"という受け身の感想で終わるのは残念だなと思います。せっかく演劇を観に来てもらうのだから、作品をつくる側としては、演劇の奥行きや総合性みたいな事をきちんと見せて、次に"演劇"を見る事に繋がったらと思います。」

――どの作品も新たに手を入れるんでしょうか?

「もちろん、全ての作品手を加えます。たとえば『ΛΛΛ』は石橋英子さんが音楽を担当して下さる事になりましたし、衣裳もスズキタカユキさんがそれぞれの作品に新しく、手を加えてくれる事になりました。僕に関しても、そういう新しい要素から生まれる新しいイメージもあると思います。」

――編集すると、オリジナルの良さが失われたり、ストーリーがわかりにくくなるリスクがあると思いますが、その点は?

「僕らを初めて観る人は常にいるので、どうすればより伝わるかはいつも慎重に考えています。ただ、例えば作品に完全な"答え"みたいな物が僕の中にあったとして、それを分かりやすく提示して、観客の皆さんが同じところを見て、同じような感想を持つように導く事はとても気持ちが悪いと思います。舞台上で俳優が、重要な台詞を話しているときに、全く関係のないような舞台上の椅子が気になって、それをじっと見ている人や、全く僕の意図とは違うベクトルの事を考えていてもいいと思っています。出来るだけ多くの要素を舞台上に並べて、観ている間に観客が、何を自分で選ぶ事が重要な気がしています。今回の機会や僕らの作品がそういう体験になればなと思っています」

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