5月8日に東京・日生劇場にてミュージカル『グレート・ギャツビー』 が開幕しました。
原作はアメリカ現代文学を代表するF・スコット・フィッツジェラルドの名作小説。
これをを1991年に宝塚歌劇団雪組でミュージカル化、その高評価が現代の活躍にも繋がっている演出家・小池修一郎が、井上芳雄を主演に据え、新作として創出する意欲作です。
★公演の模様はコチラで→ 開幕レポート
初日公演には、小池修一郎版『グレート・ギャツビー』のオリジナル版とも呼べる、1991年に宝塚歌劇団雪組公演『華麗なるギャツビー』で主演・ギャツビーを演じた杜けあきさん、デイジーを演じた鮎ゆうきさんもご来場!
井上芳雄さん曰く"レジェンド"のおふたりが、終演後、舞台裏でキャストと交流をはかりました。
▽ 左から、杜けあきさん、ギャツビー役:井上芳雄さん、デイジー役:夢咲ねねさん、鮎ゆうきさん
杜さんと鮎さんのおふたりに2017年版『グレート・ギャツビー』の感想を伺いました。
―― 2017年版『グレート・ギャツビー』をご覧になった感想を。
杜「素晴らしかったです。1幕は、自分たちがやった台詞も多く、懐かしく拝見していたのですが、2幕は私たちのものより大人の世界を表現されていて、まったくの新作のようで、とても新鮮に拝見しました」
鮎「ギャツビーの世界は独特の世界観があります。衣裳や音楽含め、媚薬のような毒気もあり、この世界に気持ちよく酔わせていただきました」
―― しかもおふたりで並んで客席でご覧になったとのことで、感慨もいっそうだったのでは。
杜「本当にそうです。最初は懐かしすぎて...」
鮎「懐かしかったですね!」
杜「偶然なんですが、私たちふたりとも、今回改めて、自分たちがやった公演の映像を久しぶりに観たんです。26年前のVHSですが、全然古さを感じませんでした。この作品は色褪せることのない魅力がある。その作品が、今回は男性も入った新たなミュージカルとして、こういう形で上演されて、すごく嬉しかったです。私、井上芳雄さんのお母さんのような気持ちで観ていましたよ(笑)。可笑しいですね」
鮎「でもそれ、わかります」
杜「応援の気持ちが、そういう思いになっちゃったんだと思います」
―― 作品がご自分たちの手を離れてしまった...というような感覚があったりするのでしょうか。
杜「それはないです。自分たちのものは、自分たちの宝石箱の中にしっかりおさまっているので、そういう寂しさは全然ありませんでした」
鮎「そうですね、感覚としては"娘に会った"ような感じでしょうか」
杜「そうそう。自分たちとしては...例えば、「明日やれ」と言われたら出来そうな気がするんですよ(笑)。身体の中に、そういう収まり方をしている作品なんです。それがやっぱり良い作品が持つ魔法なのかもしれません。それだけ、身体の中に入っているんですね~」
鮎「本当に、玉手箱のよう。一度宝箱にしまったものを開いたら、同じにキラキラと輝いていて、ああやっぱり素晴らしい作品だったんだなと、今日拝見してとても感動しました。細かいディテールなどもより繊細に、ゴージャスになっていて、本当に楽しかったです」
杜「上演時間が私たちのやったものより長いので、表現も細かくできるし、とにかく衣裳もきれいで、音楽も全く違うし、本当に新鮮でした」
―― 井上さんや夢咲さんには、どんな言葉を贈りましたか?
杜「私は芳雄君には「背中、大きかったよ~!」と伝えました(笑)。芳雄君は「肩パットは入れてないですよ!」と言ってましたが(笑)。最後の幕切れのギャツビーの背中が、非常に印象的に残る作りになっていましたしね。本当に最後の背中、良かったです。でも芳雄君が「こんなに大変な役とは思わなかった。稽古場ではそれほど思わなかったのですが、今日舞台に立ってみて、本当に大変だと思いました」と言っていたのが印象に残っています。それは、ギャツビーという役は、人を全身全霊で愛する男の話だからだと思うんです。人を愛するというのは、ものすごくエネルギーがいること。さらに、心の底から幸せだったり、どん底に突き落とされたり、この3時間のあいだにものすごく感情が動く役ですので、真剣になればなるほど疲れるんだと思う。だから芳雄君が「疲れる」と言ったのは素晴らしいと思いました」
――それだけ、役に生きていると。
杜「そうですね。そして最後は"達成感のある背中"だったとお伝えしました。やっぱり生きた人生が、背中に現れる役なんだろうな、ギャツビーは...と、改めて客観的に観て思ったんです。いやぁ、やっぱり良い役ですよねギャツビーは」
鮎「私は少ししかお話が出来なかったのですが、本当に素敵でしたとお伝えしました。デイジーも難しい役で、感情の起伏が激しい。繊細で儚いところと、ちょっと狂気があるようなところと、両極端です。私が演じた時は、常に神経を研ぎ澄ました状態が続いたので、五感に影響が出そうなほど大変だったことを思い出しました。でもやりがいのある、すごく良い役ですので、夢咲さんにもデイジーを楽しんで演じてほしいですね。応援しています」
杜「大変だったね...(しみじみ)」
鮎「(笑)。今日は素晴らしかったです」
杜「でも興奮を肌で感じられたので、初日に見ることが出来て、本当に良かったね。ギャツビーとデイジー以外の皆さんもすごく良かった。キャスティングがとにかくぴったり! 万里生くんも良かったし、あとトム・ブキャナンの広瀬君、(嫌味な役が)ぴったりすぎて、帰り道で石投げられないように、って思っちゃいました(笑)。皆さんそれぞれ、役をつかんでらっしゃって素晴らしかったです」
取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)
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