《第5回クォータースターコンテスト》げきぴあ賞獲得の藤原佳奈さん(mizhen)インタビュー


エントレ主催の《第5回クォータースターコンテスト》の結果発表と授賞式が昨年12月に開催され、藤原佳奈さん(mizhen)の投稿動画『マルイチ』がグランプリを含む4賞を獲得しました。


2012年に始まったクォータースターコンテスト(以下QSC)は、演劇・舞台系動画のニュースサイト・エントレが主催する"15分編集なしの演劇動画を競う"コンテストで、グランプリを獲得すると賞金30万円が副賞として授与されます。
グランプリはエンタテインメント分野で活躍するクリエイターが審査員を務め、第5回は鴻上尚史さん、鄭義信さん、別所哲也さん、行定勲さんという豪華な顔ぶれとなりました。

また、協力団体が選出する各賞があり、げきぴあも第1回目から参加しています。

第5回は全国から96本の作品がエントリーされました。
その中から見事グランプリに輝いたのは、
藤原佳奈さん(mizhen)の『マルイチ』です。
4人の審査員全員が1位から3位までのいずれかに選んでいますので、この作品への評価の高さがうかがえます。

各審査員が選んだ結果とコメント詳細はこちら 


物語はバツイチ子持ち同士の男女の恋愛を描いたもの。オリジナルで作ったという楽曲が印象的な音楽劇。男性から見た状況と女性が受け取る感覚の違いをリフレインの手法を用いて効果的に見せています。前半の会話劇から後半の音楽劇に変化する手法など、工夫を凝らした演出もみどころです。

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【動画作品情報】
『マルイチ』
脚本・演出:藤原佳奈(mizhen)
出演:佐藤みゆき、橋本拓也
音楽:黒沢秀樹
撮影:佐々木智崇
協力:藤沢宏光、くるみ、じおん、ミサキドーナツ、フォセット・コンシェルジュ
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そして第5回QSCの【げきぴあ賞】もグランプリと同じ『マルイチ』が獲得しました!
本作はげきぴあを含む3つの団体賞も獲得しています。
各賞の受賞作品はエントレの「第5回クォータースターコンテスト 結果一覧」をご覧ください。


【げきぴあ賞】の副賞はげきぴあへのインタビュー掲載です。
そこで、さっそく脚本・演出の藤原佳奈さんにお話を伺いました。

P1050818.jpg

──マルイチは4冠ですね。
いっぱいいただきました。

──過去に投稿したことはありましたか?
初めてです。

──投稿しようと思ったきかっけを教えてください。
大学生の時に映像を作ったりしていたので、そのまま映像の業界に進もうか、大学に入ってから興味を持った演劇の世界に進もうか悩んだ時期があって。結局お金のない方(演劇)に進んじゃったんですけど(笑)。
QSC第1回のキャッチコピー「演劇×動画」を見たとき、これは私が出さねばなるまいと思って注目してたんです。
その時から、来年は出したい、来年は出したいと思っていたらズルズルときちゃって。
本当は去年出そうと思ってたんですけど、その時期は公演か何かと被っていて。
どうせ出すなら絶対グランプリがいいから、今出してもグランプリのクオリティが保てないだろうから、ってまた流れたんですよ、去年。
それで、5回目だし、今回出しとかなきゃダメなんじゃないか、"やるやる詐欺"みたいになっちゃうぞって思って(笑)。
ちょうど、女優の佐藤みゆきさんと音楽をやってくださった黒沢秀樹さんと「何かやりましょうよ」と話していた時期だったので、QSCの話をしたら、お二人からもやりましょうって言ってもらえてスタートしました。

──はじめからグランプリ狙いだったんですね。
狙ってました(笑)。やるからには!と思ってました。

──音楽は初めから入れようと考えていたのですか?
構成は私が考えましたが、せっかく黒沢さんとご一緒にやるなら歌を交えて面白い作品にしたいねと話していたので、「歌詞をこういう内容にしたいんだけど、黒沢さんこれで歌にしてください」とお願いしました。
ふだん、劇団で創るときは歌詞はわたしが書くのですが、今回はそこも頼みました。
それから、過去作品をみんなで見て、映像で見せるには何が必要かを話し合いました。

──戦略を練られていたんですね。
飽きさせないのって結構難しいんだね、って話をしてて。最初に話し合った時間は結構重要だったのかなと思いました。

──音楽の使い方が印象的でした。
"セリフが踊る"箇所を歌にしようと思って作りました。歌ゾーンにしようと思ったセリフは詩のように書いて、それを歌詞にした感じですね。

──子どもが出てくるとは思わなかったので驚きました。
ロケ地がミサキドーナッツという場所なんですが、そこのオーナーをされている藤沢宏光さんが、かもめ児童合唱団のプロデュースをされていて、場所を借りた時にかもめちゃん達に出てくれないかってお願いしてみました。
協力にクレジットされている「くるみ」と「じおん」がかもめの子どもたちです。
実は子どもがいないバージョンも撮っていて、演劇的にはいないバージョンの方が面白い感じもしましたが、子どもがアクセントになっているというか、ちょっと嫌がってる感じがいいなぁと思って(笑)。

──撮影にはどのくらい時間をかけたのですか?
ミサキドーナツの休業日に撮ったんですが、わりと何回も撮り直しました。
本当は昼の時間帯が良かったんですけど、結局夜になっちゃって。
外がだんだん暗くなってきて、まずい、まずい、ランチじゃないよ、ディナーだよって。
最後のシーンで時計の針を(外の時間に合わせて)だんだん遅くしたりしてましたね。
結局、(投稿したのは)ラストカットだったので、微妙な時間だけどいいかなって思って出しました。
15分ノーカットの撮影だと神経使うので、役者さんはぐったりしますよね。

──どんなところが苦労しましたか?
神奈川で撮影したので、無償で手伝いをしてもらう人が沢山いても申し訳ないなと思って、いるメンバーで何とかしてました。
吹き出しを出すのは、私が黒衣でやってましたね。
途中で役者にスプーンを渡すのも、黒沢さんが一度ギター置いて渡してくれたりとか。
一つでもミスできないのでそこが大変でしたね。
あと、反復する構成にしてるからスプーンを落とす位置が大きく違ったらダメで、全員すごい緊張感で15分やってました。

──チームワークが良かったんですね。
映像を撮ってくれたのも、いつもうちの舞台の映像を撮影してくれる佐々木智崇さんだったので、関係性的にもやり易い環境の中で出来たと思います。

──それ以外に大変だったことは?
過去の作品見て思ったのは、音って結構難しいと感じました。
QSCは後から一切の編集をしちゃだめというルールだから、その場で鳴っている音じゃないとダメじゃないですか。
声とか歌とか、環境音とかノイズとか、編集された映像を見慣れている私たちにとっては聞き心地がちょっとでも良くないとストレスになることが多いなって。
それを解決するために、どこにいてもできるだけ音が拾えるように、マイクを仕込んで何箇所かでスピーカーから音を出しました。
ちょっとしたPAがあって、あれがないと無理でしたね。
これも藤沢さんにご協力いただいて。


──物語の着想はどこから得たのですか?
男女が妄想し合う音楽劇にしようと最初から思っていました。
私、小学生の頃から"バツイチ"って言葉が嫌いで。
バツイチ、バツ2、バツ3...って、ペケが付いてる感じがすごくかわいそうだなって思って。
(別れる)ふたりにとっては英断である道を選んだのに、"バツ"って付けちゃうのが嫌だなって。
昔から考えていたそんな事を思い出して、バツイチ同士だったらどうかな。で、バツじゃなくてマルだよって歌とかどうかなって。
どういう男女がいいかな? 子供とかいたりして...という発想から発展しました。
それと、本を書く前にミサキドーナツにロケハンに行ったんですよ。
そこに有名なお魚屋さんがあって、そのお店が「マルイチ」という名前だったんです。
だから無意識の中にその名前が残っていたのかもしれないですね。

──今回、グランプリを受賞して、団体賞も3つ獲りました。かかわった皆さんはどんな反応でしたか?
好きな俳優さんやいいメンバーと楽しんでやった事が評価されたのは嬉しいです。
橋本拓也さんは「表彰されたのなんて小学校のときの漢字テスト以来だ!」って喜んでました(笑)。
撮影していた頃、プライベートで大変な状況を抱えたメンバーもいたんですが、受賞の知らせを聞いて「悲しい状況だったけれど、やったことが実ってすごく嬉しい。本当に救いになった」と言ってもらえたので、参加して良かったなと。

作品を作って思ったのはQSCの「演劇×動画」はあくまでも映像作品なんだなって。
だからこそ、演劇にしかできないこと、体感しないとできないことがあるんだと強く感じました。
演劇でしかやれないことは大事にしないといけないんだなって思えた事は良かったです。
あと、映像を作るのは楽しかったですね。
演劇と映像の面白い要素を一緒にした作品をもっと作ってみたいと思えたので、個人的には賞というよりこういう場があることがありがたいです。
本当にエントレさんありがとうございます。

──藤原さんが作・演出を務めているmizhenでやりたい事は何ですか?
わたしが演劇をやるうえで一番興味があるのは、空間や時間、あらゆるイメージを操れる俳優という身体なんです。俳優という生業へのリスペクトがものつくりをする原動力になっています。
mizhenで作る作品は、抽象的な舞台装置が多かったり、具象的なものをあまり使わなかったり、一人あたりの台詞が長かったりするんですが、そうすると、俳優の身体で表現しないといけないことが多いんですよね。まあ、俳優さんが大変なんですけど(笑)
そういう俳優の身体の可能性を最大限に活かせる作品を作っていきたいと思っています。

──目指している方向はありますか?
音楽劇が好きなんですよ。
体が踊っちゃうとか、言葉が歌っちゃうとかがすごく好きで。
なので音楽の要素とか、舞の要素を取り入れた形でミュージカルでもなく、今ある形式のものでもない、mizhenとして面白いものを提示したいなと思っています。
今までは探り探りでしたが、やりたいことをぎゅっと詰め込んで新しいものを作ってみたいですね。

──チャレンジ精神を感じます。
意欲はあるんですよ。
ただ、早くやらないとダメなんですよ、先越されちゃうから。
そういうのをやりたいと思っている人はたくさんいると思ってます。
日本語の旋律を気持ち良く奏でるところを極めたいですね。
マームとジプシーさんやままごとさんがリフレインだったりラップだったり、ある種のスタイルを確立されたところはあると思うんですけど、自分は関西で生まれ育ったので、ラテンぽいものや、商人の喋り方を面白く利用したことができないかなと思ってます。
以前から部分的にチャレンジはしてたんですけど、そろそろ濃縮したものを作りたいなと。
今年の4月にmizhenの実験企画をやります。
他にも新作を何本かやる予定です。
佐藤さんや黒沢さんとも、また一緒に何かやりたいと思っています。


[公演情報]
4月1(土)・2日(日)
mizhen実験企画転んでなんぼ『夜と夜』
@Yoga&Kidsdance スタジオ Rire



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