男同士の悲しい友情を壮大な楽曲で歌い上げるミュージカル『フランケンシュタイン』、日本初演好評上演中(観劇レポート)

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ミュージカル『フランケンシュタイン』が現在、日生劇場で好評上演中だ。メアリー・シェリーが19世紀に世に送り出した有名なゴシックホラーを原作に、オリジナル要素をふんだんに盛り込んで韓国で2014年に初演された、韓国ミュージカル界を代表するヒット作。日本では今回が初演となるが、韓国産らしいドラマチックで壮大な音楽が印象的なこの作品を、中川晃教、柿澤勇人らが見事な歌声と鬼気迫る演技で魅せている。メイン2役がWキャストになっているが、「中川晃教×加藤和樹」「柿澤勇人×小西遼生」の2バージョンを観劇した。
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"生命創造"に挑む科学者ビクター・フランケンシュタイン(中川晃教/柿澤勇人のWキャスト)が、禁断の研究の結果"怪物"(加藤和樹/小西遼生のWキャスト)を生み出してしまう...という骨子は原作のままだが、怪物の材料となる人体(脳)が、ビクターの友人・アンリ(加藤/小西)であるという点がオリジナル要素。そしてそのことから「ふたりの男の友情」がこの物語を中心を貫き、単なるホラーやスリラーものでも、科学者の葛藤ものでもない、多くの人が共感し得る作品になった。
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物語は19世紀ヨーロッパが舞台。"死んだ人間を蘇らせる"研究をしているビクター・フランケンシュタインは、ひいては死体から新しい兵士を生み出すために、戦場で働いている。そんな中、あるいざこざからアンリ・デュプレの命を助けたビクター。最初はビクターの研究に反発していたアンリだが、そのゆるぎない信念にひかれ、ふたりはやがて固い友情で結ばれることに。だが戦争後もビクターの故郷に戻り研究を続けるふたりだが、殺人事件にまきこまれたビクターを救うために、アンリは自らを犠牲にし、命を落としてしまう。ビクターはアンリを生き返らせようと研究の成果を注ぎ込むが、誕生したのはアンリの記憶を失った"怪物"だった。そして怪物は自らを作り出し、消そうとした創造主・ビクターに復讐を誓う...。
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そもそも、アンリが自らの命を投げ出すほど、そしてビクターが神を冒涜する領域に踏むこむほど強い友情をお互いに抱いたのは、それぞれが孤独な魂だったからだ。今回の主役たちは皆、孤独を上手く表現していて見ていて引き込まれる。孤独なビクターとアンリの熱い友情はもはや恋にも似ていて、その友情が熱く深いほど、そこから反転する怪物とビクターの憎悪は激しく悲しいものになる。ビクターとアンリ(怪物)の関係性がこのミュージカルの肝になることは間違いないが、今回はWキャスト×Wキャストで全4通りの組み合わせ。様々な友情と憎悪の形が生まれそうで、そこを見比べる楽しみも。ちなみに筆者が観た2バージョンは(ひと言で言うのは非常に難しいが)自らを孤独に追い込みながら突き進む中川ビクターを、優しい眼差しで包み込む加藤アンリ/逡巡を強がりで隠しながら進む柿澤ビクターに、すべてを温かく受け止める小西アンリ...とでも表現しようか。なお、こちらは1幕(アンリが怪物になる前)のみの感想。
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さらにこの作品のもうひとつのポイントは、怪物になるアンリはもちろん、メインキャスト全員が二役を演じるというところ。ビクター役の俳優もまた、2幕では闘技場の主人・ジャックを演じる。この闘技場はいわゆる見世物小屋的な場所で、怪物の人格形成上での重要なポイントではあるが、メインストーリーが暗い中、キャバレーのような華と色気のあるダンスやアクロバットなども盛り込まれ、ショーとしての側面も。そこでメインキャストたちががシリアスな1幕の役どころとはまったく違う顔を見せるユニークな構造。ここだけ切り取って楽しむことも十分できるのだが...、ただこのシーンの人間関係が、メインストーリーの人間関係とリンクするような部分もあり、深読みしようと思えばいくらでもできる、憎い構成になっている。
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さてキャストについての感想も。ビクターの中川は、デビュー作のモーツァルト役を筆頭にこれまでも"天才"という役どころを数多く演じてきているが、それらがどこか少年っぽさを残していた天才たちだったのに対し今回は"大人の天才"。ぐっと落ち着いた芝居の中での感情の高低を表現していて、役者・中川晃教の幅の広さを見せている。そしてやはりなんといってもミュージカル界が誇る歌声の持ち主。さらにこの作品、冒頭でも記したがドラマチックに歌い上げる難曲ばかり――つまり、中川の歌唱力を堪能するにはもってこいであり、ビクターの葛藤『僕はなぜ?』、そして決意を歌う『偉大なる生命創造の歴史が始まる』といったナンバーは、劇場中の空気がビクターの感情に染まるかのようだった。
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柿澤ビクターは幼少期の傷を抱えたままの孤独な天才といった風。アンリや、鈴木壮麻扮する執事のルンゲとの距離感が近く、表情豊かなナチュラルな芝居が印象的。また柿澤はなんといってももうひとつの役・ジャック役のインパクトが凄い。下衆で、キレた危険な男をはじけた演技で魅せている。そしてこの人ももちろん素晴らしい歌声で、難曲の数々に感情を乗せ歌い上げている。
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アンリ/怪物役はイケメンWキャストだが、ふたりとも容姿が良いからだけではない、孤独や寂しさから来る"色気"があって良かった。加藤アンリのビクターに対する友情には母性のような優しさを感じ、特にビクターの身代わりになり死刑台に赴くシーンでの満足げな笑顔が心に残る。一方で小西は大人の男性の落ち着きで、ジェントルなアンリ。そして怪物としてビクターの前に現れた時の凄みが印象的。ちなみに怪物は本当にアンリとは別物なのか、実はアンリの記憶を残していたのではないか? ...という点は、観客の妄想を最も掻き立てるところ。セリフにヒントのようなものもあるが、俳優の見せるふとした表情や間合いから、観客は好きに想像できるし、して良い作品だろう。それこそがこのミュージカルの醍醐味かもしれない。
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ほかのキャストについても駆け足で触れておこう。ビクターの姉エレンは濱田めぐみ。弱さのある女性で、それでも精一杯ビクターを守ろうとする優しい女性。自立した女性を演じることが多い彼女にとっては珍しい役どころだが、これが新鮮だがしっくりきていた。エレンがビクターへの思いを歌う『その日に私が』は涙なしには観れないシーンになっている。そして闘技場で扮する女主人エヴァは濱田節全開、さすがの迫力。
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ビクターの婚約者ジュリアは音月桂。元男役とは思えない、白い衣裳が似合うイノセントな女性だ。反面2幕のカトリーヌは悲壮ながら力強く、同一人物が演じているとは思えないほどだった。
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ビクターの執事・ルンゲを演じる鈴木壮麻はシリアスなこの物語の中、ほっと和ませる存在感。2幕のイゴールの変貌っぷりにも注目。相島一之はジュリアの父ステファン。町の名士たる威厳と、ビクターに対する偏見と恐れが混じった複雑な感情を上手く見せている。それとは真逆な下品さの2幕・フェルナンド役もなかなかのキーマンっぷりだ。
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多少、脚本上の説明不足を感じるところもあるが、その余白が逆に観客の妄想を駆り立てる。ハマる人は、どんどんハマっていきそうだ。おそらく今後上演を繰り返す作品になっていくだろうこの作品。日本初演を見逃す手はない。
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取材・文:平野祥恵(ぴあ)
写真提供:東宝演劇部


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【公演情報】
・1月29日(日)まで 日生劇場(東京)
・2月2日(木)~5日(日) 梅田芸術劇場メインホール(大阪)
・2月10日(金)~12日(日) キャナルシティ劇場(福岡)
・2月17日(金)・18日(土) 愛知県芸術劇場 大ホール(愛知)

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