イギリスの劇作家アラン・エイクボーンによって書かれた『扉の向こう側』(英題"Communicating Doors")が上演される。今回、このアラン・エイクボーンの原作をもとに、芦沢みどりが翻訳し、板垣恭一が上演台本・演出を手掛ける。
キャスト6名の紹介をしよう。
女優陣3名は、元宝塚歌劇団雪組のトップスターと娘役トップ経験者が揃った。
男役として、『ベルサイユのばら』で気品あるフェルゼンを、また退団公演『一夢庵風流記 前田慶次』の前田慶次を颯爽と演じた壮 一帆。宝塚退団後3作品目の今回は、なんとSMクイーンの役!「やっと女性らしい役が来たと思ったら、娼婦、しかもSMクイーン役とは!」と笑うが、「自分自身をどこまでさらけ出せるかが勝負。体当たりで挑みたいです」と、意気込む。
男性陣3名も実力派揃い。ミュージカルでもお馴染みの面々だが、今回はストレートプレイ。歌ではなく、セリフの直球勝負で芝居をしていく。
岸 祐二が演じるジュリアンは、殺し屋だ。「単なる悪役という形にはしたくないなと思っています。彼がどうしてそうなったのか、そういうところも考えて演じたい」と静かな意欲を見せる。
▲岸 祐二:ジュリアン
泉見洋平が演じるホテルの警備員は、この作品をかき乱していくような役どころだ。「僕が演じるハロルドは、事件に巻き込まれ、どんどん踏み込んで行く人物です。僕は歌がない"芝居"に出演したことがほとんどないので、難しさもありますが頑張りたいです」と、新境地に挑む覚悟を話した。
▲泉見洋平:ハロルド
吉原光夫が演じる実業家・リースは、物語の起承転結の「起」の部分で重要な役割を担い、「結」の部分でも核となる人物だ。吉原は、アラン・エイクボーンの魅力を感じていると言う。「台本に書かれている通りに演じようと思っています。イギリスの階級の違いや貧富の差、そういうところにも切り込んでいる、アラン・エイクボーンの"鋭さ"を感じます」と語る。
▲吉原光夫:リース
演出の板垣さんから「この場面は昨日の方がよかった」とか「今、そのやり方がすごく良かったのでその案は採用しましょう」という光景が毎日繰り広げられ、日々ブラッシュアップされている。
この日は稽古着だが、実際の衣裳がどのようなものになるか、見てのお楽しみだ。
撮影・ライター:住川絵理
<あらすじ>
物語の舞台は、ロンドンの五つ星ホテル「リーガル」のスイートルーム。
実業家リース(吉原)はジェシカ(紺野)とルエラ(一路)、2人の妻を殺した過去を持つ・・・と言っても、手を下したのは彼自身ではなく、彼の共同経営者のジュリアン(岸)。しかし何故だか表沙汰にはならず、人生の成功者としての日々を送っていた。
70歳になり死を意識し始めたリースは、自ら制裁を下すかの様に、自分とジュリアンの悪事を告白する文書を書く。その文書を法的に有効なものとする為には第三者の署名が必要だった。
その為、リースは滞在するホテルのスイートルームに娼婦を呼ぶ。そこへやってきたのはSMクイーンのフィービー(壮)。リースの企みに気づいたジュリアンはフィービーも殺害しようとするが、身の危険を感じたフィービーは「コネクティングドア」を開け、隣の部屋へ脱出を試みる。
しかしその扉の向こうは過去と現在を繋ぐ不思議な空間となっていた。
殺害された筈の2人の妻・ジェシカやルエラと出会うフィービー。
お互いの立場を何とか理解し合った3人の女たちは、気のいい警備員ハロルド(泉見)を巻き込み、自分たちの殺人事件を未然に防ごうと奮闘するが、果たして・・・。