演出・長塚圭史が『浮標』への思いを熱く語る!

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「生とは何か」「死とは何か」――
観る者の死生観を揺るがす激しくも美しいセリフの数々
砂を敷きつめただけのシンプルな舞台上に膨大なエネルギーが放出される。


2011年、ロンドン留学中に号泣しながら読んだという長塚圭史が、帰国後の新プロジェクト「葛河思潮社」の旗揚げ公演として横浜、松本、東京で『浮標』を上演。上演時間4時間の超大作にもかかわらず、連日立ち見が出るほどの大きな反響を呼び、2012年秋には東京、大阪、兵庫、仙台、新潟での公演を実現した。そして今夏、この三好十郎の渾身の戯曲を再々演が決定。

演出の長塚圭史さんに『浮標』への思いを熱く語っていただきました。


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一部新たなキャストを迎え、次なる『浮標』で再び長塚圭史が伝えたい想いとは・・・


3度目の上演となる『浮標』にかける熱意―

もともと『浮標』は一昔前の戯曲とも言われかねない作品ですが、それをト書きにあるような時代を帯びた具体的なセットでなく、もっとシンプルな形で上演出来ないかと考えていました。俳優さえいれば立ち上がる世界をつくりたかったのです。
2011年1月に初演しましたが、その直後に東日本大震災がありました。僕自身この『浮標』を再演したいとはその前から言っていましたし、初演だけでは終われないと思っていました。俳優たちからも"この膨大な劇も、真摯に立ち向かえばもっと先にいける"という実感が見て取れたので、「じゃあもう一度やりたいな」と。そこに残念ながら震災が起こりました。多くのものを失った中で、東北の方にも観ていただきたいという思いが後押しにもなり、異例なことですが、2年続けての上演ということになりました。そこで兵庫県立芸術文化センターでも上演し(2012年10月)、東北にも行くことができました。
田中哲司さんは、年齢的にもうそろそろ久我五郎役を演じるのは難しいのではないかと言ってます。五郎は30代の設定ですが哲司さんは50歳になります。でも僕はまだハッキリと哲司さんの久我五郎を追いかけたい。哲司さんは「じゃあこれで最後にしようか」ですって。僕はまだまだわからないと思っていますがね。さて、今回の再々演では作者・三好十郎の故郷の佐賀をはじめ、前回上演出来なかった西にも届けたいという思いから、期せずして九州にも行くことになりました。"「死」を前にして「生」を問う"ことや"日本の歴史"を感じられる深い4時間となると思います。

シンプルながらも印象的なセット―

『浮標』を初めて読んだ時から、全て砂の上で出来ないかとずっと考えていました。砂は僕にとっては記憶の象徴。さらさらと流れるけれども堆積するものであり、それは歴史や人にも当てはまるイメージです。美術家の二村周作さんや舞台監督の福澤諭志さんと延々と話し合い決めました。「舞台に砂を入れたい」なんて普通の劇場なら絶対嫌がるはずなのに、どの劇場も良いと言ってくれて本当に有難かったです。
砂、そして極端にシンプルなセットで4時間を観せ切る。それができると僕らは確信しています。


継続して出演するキャストと新しい面々―

5人は前回から継続して出演します。そのことだけでも、大いに前進する可能性を秘めている。3回連続主演となる田中哲司さんは、初演時は五郎のエネルギーを掴み取ろうと必死にもがきましたが、再演の時にはもう少し腰を据えていました。今回はもう三月位から準備を始めていると思います。3度目の出演でも今から向き合わないととても間に合わない。それほどの役なんです久我五郎というのは。新たに出演するキャストも準備せざるを得ないですよね(笑) 継続出演の僕らは既に様々なアイデアを獲得している。でもそれを一度取り払い、稽古を始めます。田中さんによって更に進化するであろう久我五郎の妻・美緒役を演じるのが、これまでで一番設定年齢に近い女優、原田夏希さんです。美緒は子供を産めずに死んでいった30代前半の女性ですが、彼女の生きているエネルギーと原田さんの現在への渇望に融合が生まれたら、と思っています。新しいメンバーもみなさん丁寧に集めていったメンバーですので楽しみです。


三好十郎が紡ぐ台詞―

なによりの魅力は三好十郎の台詞の美しさ、力強さ。詩的な台詞ではありませんが、具体的なことを語っていながら、人間への期待が込められている凄みのある言葉たち。それに対する自問が身体の中でぶつかり合う。それが火花を散らして三好十郎の劇は凄くなっていく。病みつきになる台詞ですが、その分扱うのが難しく、相当稽古しなければならない。諦めずにきちんと追い続けていくと、テクニックではなく、言葉の意味が浸透して表に出せるようになる。その喜びは必ずお客様に伝わると思います。
今、『浮標』を書ける作家はいないでしょうからね。「こんなにすごい人がいた」と単に紹介するのではなく、僕らを通して燃やさなければいけないし、その先にいきたい。初演・再演を通じてまだ先にいけるという確信があるのです。


女性たちの強さ―

作品に出てくる女性たちの強さ、激しさ、生命力が、五郎や男たちを照らしていくと思います。これからどうなっていくか分からない世界の中で女性たちがどう生きていこうとするか、その中で死にゆこうとする美緒がいる、ということが作品の核となっていくでしょう。
初演では久我五郎という人物に圧倒されて見つからなかったとことでもあります。再演で随分見えてきたので、今回大いに掴んでみたいところです。女性たちによって照らされる男たち。女性たちのつくり方でぐっと変わってくるでしょう、そこが楽しみですね。


2回目の上演となる芸術文化センター―

こんな大変な作品を前回に引き続き、今回も上演するなんて凄いですね!正常とは思えない(笑) 2度やっていただけて、しかも今回は2回公演していただけるなんて本当に有難いことです。
兵庫県立芸術文化センターが様々な作品を発信している姿勢を非常に信頼しています。阪急中ホールはサイズもちょうどよく、劇場として、一つの形だけでなく広く許容し多彩な形でやろうとする柔軟な姿勢を持っていることは、クリエイターにとっても魅力です。

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とても饒舌に、熱く語ってくださった長塚さんからは、『浮標』に懸ける想いが溢れていました。
砂の上に込められた長塚圭史の想い、美しい三好十郎の台詞―
シンプルな舞台で繰り広げられる、長く深く濃密な4時間。
暑い暑い夏に、熱い熱い舞台を目撃に、劇場へぜひ。

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2012年第二回「浮標」公演より 撮影:五十嵐絢也


<あらすじ>
軍靴の足音が次第に高まるなか、洋画家・久我五郎は、千葉の郊外にある海辺の借家で、肺を患う重病の妻・美緒の看病に明け暮れている。美緒の回復を信じながらも、その病状は悪化の一途をたどるばかり。さらに、美緒に財産の譲渡を迫る家族、五郎を組織の政治に利用しようとする画壇、経済的不安などといった逆境にさらされ、次第に追いつめられていく五郎。戦地へ赴く親友との再会に五郎の心は一時和らぐものの、その矢先に美緒の容態は急変するー。


【横浜公演】
8月4日(木)~7日(日) 
KAAT神奈川芸術劇場〈大スタジオ〉
【豊橋公演】
8月11日(木・祝) 
穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
【兵庫公演】
8月13日(土)・14日(日) 
兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
【東京公演】
9月2日(金)~4日(日) 
世田谷パブリックシアター

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