劇団四季『ウェストサイド物語』稽古場レポートPart2

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劇団四季"新演出"で上演する『ウェストサイド物語』が、いよいよ2月14日(日)に開幕。
この新演出版『ウェストサイド物語』の一部が披露された2月1日の公開稽古レポートの後半をお届けします。
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★劇団四季『ウェストサイド物語』稽古場レポートPart1はコチラ

新しい演出を手がけるのは『ウェストサイド物語』のクオリティを守るジェローム・ロビンス財団から選ばれた、数少ない(世界で3人!)公認振付師である、ジョーイ・マクニーリー
エネルギッシュに稽古場を動きまわり、動線からダンスまで、自らやってみせるジョーイさん。
そのアツさに同調するかのように、熱気ある稽古場になっていました。

披露されたのは次のシーン。
1幕第1場『プロローグ』(稽古場レポートPart1に掲載)
1幕第4場『体育館のダンス』『マリア』
1幕第5場『トゥナイト』
1幕第7場『ひとつの手、ひとつの心』
1幕第8場『トゥナイト(クインテット&コーラス)』

レポートPart1にも書いたのですが、ジェローム・ロビンスの振付はそのままですので、装置・衣裳といったビジュアル面の刷新がわからない稽古場では、どこが新しくなったのか明確に指摘するのは少し難しい。

それなのに、舞台面から感じる熱気が、明らかに今までとは違います!
ガツンと正面から、キャラクターの感情がぶつかってくる感じ。

『体育館のダンス』
いがみあうふたつのグループ、ジェット団とシャーク団を和解させようと開かれたダンスパーティ。しかしその目論見ははずれ、それぞれが優位を競うかのような、ダンス合戦へ...。
マンボのリズムと、アクロバティックなペアダンスが見どころです。
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シャーク団のリーダー・ベルナルドと、その恋人アニタ。
年長者カップル、の魅力です。
この日の稽古場のアニタは、岡村美南さん
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激しいダンス合戦の中、時が止まったように、トニーとマリアが出会います。
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対立するグループ同士のふたりが惹かれあったことはすぐに気付かれ、引き裂かれますが...。
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トニーはマリアへの思いを高らかに歌い上げます(『マリア』
トニー役候補・神永東吾さん
近年主人公を演じることも多い神永さんですが、茶髪はちょっと珍しいような...?
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そして名曲『トゥナイト』のシーン。
バルコニーのシーンは演劇史に残る名演出。今回はどうなるのでしょう!
マリア役候補は、山本紗衣さん
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シーンを通したのち、ジョーイさんからは「皆さん(報道陣)が来てくれて、ハッピーです。やっとふたりがキスしてくれました!!」との発言があり、笑いに沸く稽古場でした。
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ジョーイさん、フットワーク軽く演出中。
「トニー、もっと登場をエネルギッシュに」
「感情のレベルをもっとアップさせて」
といった内面のことから、
「ちゃんとアゴをあげて」
「右を見る時はシャープに。全員が同じタイミングで向いて」
等々、見せ方に関すること、多岐にわたり細かく俳優たちに指摘していきます。
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続いて『ひとつの手、ひとつの心』
マリアのバイト先、ブライダルショップにトニーがやってきて、ふたりが結婚式の真似事をするかわいらしいシーン。
しかしこのあたりから、破滅への予感がひたひたと...。
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さらに1幕のクライマックス、こちらも名場面!!『トゥナイト(クインテット)』
それぞれが、それぞれの"今夜"への予感を歌い上げます。
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そして1幕最後のあの悲劇へ...。
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いかがでしょう、写真からも、カンパニーの熱気が伝わったのではないでしょうか...!
公開稽古後、ジョーイさんからも「皆さんが素晴らしいので、誇りに思っています」とのコメントも。


続けてジョーイさん、リフ役候補=松島勇気さん、
ベルナルド役候補=萩原隆匡さんの囲み取材の模様をお伝えします。
松島さんも萩原さんも、以前のバージョンでも同役を演じています。


◆ 囲み取材レポート ◆


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――今回、劇団四季がこの作品を新演出でやると聞いて、ジョーイさんはどう思いましたか。

ジョーイ「私はこれまでにも『ウェストサイド物語』の新演出を手がけています。最初は、2000年のミラノ・スカラ座です。この作品に出会ってから、私は常に新しい演出というものを求めていました。というのも、この『ウェストサイド物語』という作品が、"過去に置いてきぼりにされてしまっている"と感じていたんです。エネルギーや見た目というものが、時代遅れになりつつあると感じていました。ですので四季から新しい演出で再演したいというオファーを頂いた時は、本当にうれしく思いました。演劇は古くなってはいけないもの。今回のプロダクションでは、古いバージョンを思い起こさせるような要素は残しつつ、新しい、フレッシュなエネルギーがこもったものになっています」
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△ ジョーイ・マクニーリーさん


――主にどんなところが変わるのでしょうか。

ジョーイ「非常に細かいところです。例えばトニーとマリアの関係性は、以前よりも、よりエモーショナルになったと思います。そして暴力に関してもかなり激しくなっています。ただ、私は『ウェストサイド物語』を変えているわけではないんです。こういう細かい微調整を重ねてた上で、トータルで見ると、この物語で語られる一晩の出来事、お客さまに感じていただける経験というものが、まったく違うものになる。そういうものを目指しています。私が今回やろうとしているのは、お客さまにも『ウェストサイド物語』を初めて見たような経験をしていただきたいということなんです」

松島「より感情的になりましたし、心の動きがすごく明確になりました。あと心の動きから来るステージング...というものが大事なんだなということを改めてとても感じています」

萩原「僕らは、どう見えるかということを無意識に考え、演じることを考えすぎてしまう。今まででも、それは良くないと言われていることではあるのですが。今回はすごくリアルな感情を引き出してくれて、それが行動へ繋がっていく。稽古場ではみんなジョーイさんに感動しています。その分すごく難しいんですが、みんなジョーイさんの導いてくれるようにやりたくて仕方ないんです。ジョーイさんがその場で(演技を)やってくれたら、泣いてしまうくらい。そういうのは、初めての経験ですね」

松島「ジョーイさんは心の動きやら感情の起伏やら、踊りもそうですけど、すべてを自分の体を使って僕らを導いてくれるんです。おひとりで『ウェストサイド物語』が出来るんじゃないかなってくらい(笑)」

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△ 松島勇気さん

ジョーイ「ひとりだとちょっと厳しいですね(笑)。おそらく今までとの違いというのは、プロセスにあると思います。俳優の皆さんも個々のキャラクターや物語全体に、何層にも色々な要素が積み重なっていたんだと気付いてくださっているんじゃないかな。違いは、目には見えないかもしれない、それは感じていただくものです。
さきほど"過去に置いてきぼりにされた"と申し上げたのは、見た目や構成について言いました。例えば暗転が何度もあったり。そういうところを省き、よりアクションのスピードを速く、スムーズにしています。そして、作品のテーマは、現代の社会においても非常に重要なもの。ですから、それぞれのキャラクターの感情的な高ぶりを、一段上に持っていこうとしています。その方が作品のペースも速くなるとともに、個々のキャラクターの物語に対する繋がりがより深く綿密になっていきます。また暴力の描き方については、無防備さや痛みを以前よりはっきり描いていると思います。私は女性から見たこの物語という面も強調しようとしています。そして装置も色々と違います。どういう環境でこの物語が行われているかがはっきりわかるようなものになっています。また衣裳も細かい変更があり、ふたつのギャング団の違いが見た目ではっきりわかるものになっています。そしてちょっと映画のような、シネマチックな演出・見た目にもなると思います」


――今回、新演出になりますが、演出が変わっても変わらないこの作品の良さはどこにあると感じていますか。

松島「社会へのメッセージ性の強さがある作品。こういったメッセージ性は変わらない、色あせないと思っています。時代が進歩し、発展し、過ごしやすい時代になっていますが、でも人種差別の壁や少年の非行、少年による犯罪、親からの虐待、そういう色々な問題はいまだに世の中からなくならない。これからも残念ながらそういった問題は続いていくのではないかという中で、我々は生きていかなくてはならない。でもこの作品を観て、この問題と向き合ったとき、"なくすまでは出来ないかもしれないけれど減らしていくって努力は出来る"と感じさせてもらえるような作品。そういうところが良いと思っています」

萩原「ジョーイさんが"トニーとマリアの愛は、コンクリートに咲く花"って言ってて、すごく感動しました。トニーとマリア以外にも色々な愛がある。ジェット団だったら仲間愛...それも家族から虐待を受けたりしている中での、擬似的な家族愛。僕らプエルトリコ(シャーク団)は兄弟の愛。でも愛ゆえに怒鳴りつけたりするし、恋人とも喧嘩しあう。色々な衝突の中で、トニーとマリアだけ純粋な愛なんです。愛ゆえに悲しいことも起こってしまうけれど、その愛だけは本当に純粋で素晴らしいもの...ということをすごく今回感じています。愛の素晴らしさがこんなにも際立つ作品なんだな、と」
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△萩原隆匡さん


――リリースには今回の新演出について「しかし『四季のウェストサイド』である以上、浅利氏ら当時の創作メンバーが作品に込めた祈りが変わることはありません」とあります。浅利慶太さんとなにかコンタクトは取られましたか。

ジョーイ「特にしていません。私も最近知ったばっかりなんですが、『ウェストサイド物語』は四季が初めて手がけたミュージカルとのことで、本当に驚きました。そのような大切な作品を使って四季が世代交代をしていくところに私はとても心を打たれました。でもご覧いただいたらわかるかと思いますが、以前の浅利先生のバージョンを生かしつつ今回の新演出に臨んでいますよ」


――『ウェストサイド物語』はやはりダンスナンバーが印象的です。時代を超えても古びないジェローム・ロビンスの振付の魅力、そして一番苦労したところを教えてください。

松島「すごく難しいです(笑)。感情と、踊りを一緒にしなくてはいけない...しかもレベルの高い感情と、レベルの高い踊りを一緒に繋げる。とても難しいというか、まだそこまでいっていない感じがしていますので、(本番までに)挑戦したいと思っています。やっぱり踊りをキレイに見せないと、とか思っちゃうんですよね、もちろんそれも大事なんですが」

萩原「そうそう、見せ方に走っちゃったりとかしちゃうんで、そこじゃなくて心の動きが、動きそのものなんですね。そこがすごく難しいですね。心の動きだけで繋げちゃうとゴチャゴチャしちゃうし、じゃあ(振りどおりに)踊ればいいかと言えば、何も見えてこないし。そこが難しいところです」

ジョーイ「どうしてジェローム・ロビンスの振付が古びず、いつの時代も我々に問いかけてくるのかというと、動きひとつひとつがキャラクターに非常に深い繋がりがある動きなんです。音楽の音符と同じくらい正確。歌詞やセリフ同様、ひとつひとつに意味がある。そして彼の素晴らしいところは、日常的な動きと、非常にレベルの高いバレエとををスムーズに繋げて見せたというところにあると思います。だからこそ、この振付は難しい。きちんとバレエのテクニックを持っていないと踊れないし、スタミナもかなり必要とされます」

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取材・文・撮影:平野祥恵


【公演情報】
2月14日(日)~5月8日(日) 四季劇場[秋]


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