『モーツァルト!』シカネーダー役 吉野圭吾インタビュー

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東京・帝国劇場にて絶賛上演中のミュージカル『モーツァルト!』
ウィーン発、日本でも2002年の初演から5回目の上演となる人気作品ですが、今回は日本初演から主人公ヴォルフガング・モーツァルトを演じている井上芳雄さんのファイナルであることも話題になっています。

そしてカンパニーは井上さん以外にも、初演からのキャストが多いのも特徴。
日本の『モーツァルト!』ファンにとっては、「この役といえば、やっぱりこの人よね」といった印象のあるキャストが揃った、まさに"磐石"の布陣での上演となっています。

そんなオリジナルキャストのひとり、エマヌエル・シカネーダー役の吉野圭吾さんにお話を伺ってきました。
シカネーダーは劇場支配人にして、俳優で、脚本家でもある多才の人。
オペラ『魔笛』の台本を手がけたことでも知られています。

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● 吉野圭吾 INTERVIEW ●


――11月26日の公演で、シカネーダーとしてちょうど450回目の公演だったとか。12年、ずっとこの役をおひとりで演じていらっしゃいますね。

「自分の俳優生活の中でも、こんなに長くやっている役は初めてです。でも毎回、新鮮なんですよ。シカネーダーというのは、"どんな出来事が起こるのだろう"と常に待っているような役。いつも周囲をぐるっと見渡していて、何が起こっても見逃さず、柔軟に対応できなきゃいけない役だと思っています。そういうところが新鮮に感じるんでしょうね」


――やっぱり印象的なのは『チョッピリ・オツムに、チョッピリ・ハートに』のシーンです。

「そこがシカネーダーの登場シーンなのですが、実は僕は出演者の中で、一番遅く舞台に出ていくんです。もうみんな温まってエンジン全開の中に飛び込んでいく。しかも誰よりもエンジンがかかっていないといけない(笑)。だからこそ、まわりの出来事には敏感でありたいなと思って毎回やっています。そのシーンの一番の目的は、ヴォルフガングを自分の側に引き込むことなのですが、根本のところでは大衆を喜ばせること、貴族ではなく大衆が喜んでこその芸術だ、という部分が出せたらいいなと思っています」
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写真提供:東宝演劇部

――シカネーダー自身は、貴族ではない?

「はい。でも劇場を持っていますし、地位が低いわけではない。ただ、これからは民衆を引き込んでいかないと、という目を持っています」


――それこそ、このミュージカル『モーツァルト!』が初演されたアン・デア・ウィーン劇場を作ったのもシカネーダーですよね、すごい!

「ありがとうございます! ...って、僕が言うのも変か(笑)」


――そんなシカネーダーを、実は吉野さんはこの作品以前にも演じたことがおありだとか。

「そうなんです、音楽座の『マドモアゼル・モーツァルト』(1996年)という作品で。音楽座でやっていたシカネーダーはニューウェーブの象徴という感じ。新しい時代がやってくるぞということを告げにくるような役どころでした。これから時代は変わる、一緒に手を組んで次の時代へ繋げる新しいものを作ろう、と。この作品でも貴族のためではなく、民衆のための芝居を共に作ろうとモーツァルトに言う。根本は同じだと思います」


――シカネーダーには運命的なものを感じますか?

「音楽座でシカネーダーをやって、それが終わって、その後劇団が解散し、外の世界に出て。しばらくして『モーツァルト!』をやります、シカネーダー役はどうですかと言われた時にはやはり、運命を感じましたよね。いや絶対やるでしょ!って思いました。キター!って(笑)」


――先ほど仰っていたシカネーダーの意識、「大衆を喜ばせる」ということに関して言えば、吉野さんも俳優として通じる部分があるのでは?

「そうですね。やはり観ている人を引き込む役者でありたいなというのは、シカネーダーもそうだと思いますし、吉野圭吾としても同じです。どんな舞台をやっていても1回1回が大事だし、命をかけたい。その回を初めて観る方もいるだろうし、今日この日しか観られないお客さまもいるわけですから。その人たちに常に一番のものを観ていただいて、楽しんでもらいたいと思っています」


――それにしても、舞台上で色んなことをやっていますよね! マジックだったり、ステッキを回したり...。そのあたりのご苦労は?

「初演の時はもうちょっと落ち着いて帽子を出せたんですが、今は振付が変わって、あせる時があったりもします、出ない!やばい!って(笑)。苦労というか...練習の量はハンパないですよ!小道具を完全に自分のものにしないと、モノに裏切られるので。それでもやっぱり昔はステッキを落としたりとかは、ありました。今一番怖いのは、(『チョッピリ...』のナンバーの中で)足に乗せたステッキをポンと上に飛ばして、自分でキャッチするところ。ただ真上に上げるだけじゃ面白くないから、空中で回転させて取るんですよ。落とすのはまだいいんですが、オケピに落ちたらと思うと怖い。だからあそこでは毎回、「今日の俺は自分に勝てるのか...?」と思いながらやっています(笑)」


――ああいう細かい部分は、振付なんですか? 

「あそこは振付です。こういうこと出来ない?と言われて、いや多分出来ると思うんですけど...って。怖いんですけど、でも回転して取った方が絶対カッコイイじゃないですか」


――私、『ここはウィーン』の最後、舞台袖に引っ込む直前のシカネーダーも好きです。照明さんとの息もぴったりですよね。

「ありがとうございます。自分じゃ見えないですからね。照明さん上手にやってくれてるかなって思いながら。でも暗転の中、客席がザワつくのがわかるんですよ。ちょっと嬉しい(笑)」

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――ところで吉野さんはウィーン・ミュージカルの常連のイメージがあります。

「そうですか? この『モーツァルト!』が僕にとってウィーン作品出演1作目。そのあと『レベッカ』『ダンス オブ ヴァンパイア』『レディ・ベス』に出ています。僕がいただくのって、飛び道具的な役が多いんですよね(笑)。なので...本当にありがたく、楽しく演じさせていただいています。飛び道具がコケるわけにはいかないので、若干のプレッシャーはありますけど(笑)。でも自分がその作品全体の中で、どういうところにいたらいいかということはすごく考えます。作品の中でその役を作っていく。だからいつも不安はあまりないんですよね。絶対これで行ける!と思えたりもするんです。変なヴァンパイアが登場してきて、だったら自分の役はこうくるだろう、とか。"絵"がすごく見える」


――飛び道具、ということで...客席から笑いが起こるインパクト大のシーンも、いくつかすぐに思い浮かびます。そういうシーンは、吉野さんご自身がアイディアを出されたりもするんでしょうか。

「はい。まず稽古場で試せることはできるだけ試そうと思いますね。やってみて、いらないと言われればやめますし。...人から(笑いをとる演出を)付けられるのがキライなんでしょうね、僕。キライというか...悔しくなっちゃうんですよ、あぁ、それがあったか!って思うのが(笑)。でも笑わそうとかではなく、作品を良くしたいということなんです。この作品が良くなっていくには俺の役はどう居なきゃいけないかというのはいつも考えていて、その役割はきっちり果たすぞと毎回思ってやっています」


――一方で近年は、悪役的なポジションも多く演じていらっしゃる気がします。『レディ・ベス』シモン・ルナールしかり、『天翔ける風に』溜水石右衛門しかり...。

「悪役と言ってしまっていいのかはわかりませんが...。そういったダークな役でも、全部が怖くて...じゃなくていいと思うんですよね。どこか面白みがあるとか、人間性が見えたりとか、そういうところがあったらいいなと思ってやっています。同じように三枚目的な役でも、「ハイ、面白いでしょ!」というのはキライなんです。最初から「あ、この人、面白い人だ!」という登場の仕方は嫌。なんかあの人いるだけで面白いよね、立ってるだけで面白いねって言われたい」

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――まさにそんな印象を、様々な作品で拝見していて抱いています! では『モーツァルト!』に話を戻して。シカネーダーはモーツァルトをどういう存在だと思っていますか?

「ヴォルフガングは地位とか身分は関係ない、これから時代は変わっていくんだ、僕の音楽はあなたたち貴族だけのものではないんだ、と言っている。そこがシカネーダーと似ていて共感するところ。さらに彼はコロレド大司教から逃げたがっていますよね。そんな彼に目を付け、その才能をシカネーダーは欲しがっている。だから"良き悪友"でありたいと思いますが、一方で上手く彼を利用したいと思っています。『チョッピリ...』の中にも「上手く立ち回ったやつが成功収め生き抜く」という歌詞がありますが、まさにそんな感じが出れば」


――逆にモーツァルトにとっては、シカネーダーはどんな存在だと思われますか?

「そうですね...。シカネーダーもですが、例えばヴァルトシュテッテン男爵夫人というのも変な存在じゃないですか。ヴォルフガングにとってみたら、あの人はある意味悪魔だと思うし、俺(シカネーダー)も悪魔だと思う。男爵夫人は、父親なんて、家族なんて捨てて、音楽のためにあなたは生きなさいと呼びかける。俺は俺で、コンスタンツェなんていない方がいい、これでお前はやっとお前ひとりで自由に音楽が書けるんだ、と言う。書け、やれ、書け、飛び立て...。みんなヴォルフガングに勝手なことを言う。そういう役割が面白い。みんながそうやってヴォルフガングを求めないと、最後に彼は死ねないと思うんです。ラスト近くにあるナンバー『モーツァルト! モーツァルト!』、シーン名は「熱狂」と付けられているんですが、そこはやはり、熱狂してみんなが彼の持っているものを全部奪っていかないと、ヴォルフガングの「僕の血はもうない...」というセリフにはたどり着かないと思うんですよね。最後は全部、彼の中にあるもの...魂も血も、何もかもみんながついばんでいく、持っていって、すっからかんになる。そういうことだと思います」


――なるほど...! とても興味深いお話をありがとうございました。最後に。今回、井上さんがラストステージだと公言されていますが、吉野さんは...。

「どうでしょう、もしかしたら僕もファイナルかもしれませんし、そもそもどんな舞台でもいつもこれが最後だと思ってやっています。ただ、シカネーダーはすごく自分を育ててくれた役。吉野圭吾を芝居の面でも役者としても育ててくれた役なので、やらせてもらえるものなら、できる限りやりたいと思っています。でもわからないですよ~、若い新人がバンバン出てきてるから(笑)!」


【公演情報】
12月24日(水)まで上演中 帝国劇場(東京)
1月3日(土)~15日(木)梅田芸術劇場 メインホール(大阪)


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