ガストン・ルルーの小説『オペラ座の怪人』をベースに、脚本家アーサー・コピットと、作曲 家モーリー・イェストンが'91年に制作したのが『ファントム』。醜い容姿に生まれ、孤独に生きるエリックという名の怪人が歌姫クリスティーヌに出会う物語だ。「以前、大沢たかおさんが演じられプレッシャーはありますが、資料になる映像はあえて見ていません。脚本を読んで、自分なりに感じたイメージを具現化していくことが僕の役づくりの方法なんです。大沢さんの怪人を見たら、そのインスピレーションで作る舞台になってしまう。今回は全く新しいファントムを作るつもりですし、城田の怪人は最高と言われたいですね」と意気込む。
面白いのは、今作の演出を手掛けるダニエル・カトナーが、アンドリュー・ロイド=ウェバー版『オペラ座の怪人』の演出家ハロルド・プリンスの愛弟子であるという事実。「ダニエルがハロルドのところへ挨拶に行ったところ、"君なら、ロイド=ウェバー版とはまた違う、素晴らしい作品ができる"と喜んでくれたそうです。僕は(今作の楽曲を手がけた)モーリーとお会いしましたが、"僕らの作品には豪華なシャンデリアやビッグナンバーもない。でも、怪人の人物像を繊細に描いている"とおっしゃっていた。そこを深く掘り下げたい」。ロイド=ウェバー版とは違い、今作では、怪人の幼小期や両親との関係などが明かされる。
さらに楽しみなのはイェストンの楽曲にのせる城田の歌声だ。昨年ブロードウェイのスターと共演したコンサート『4Stars』で、彼らに引けを取らない抜群の歌唱力で観客を魅了した。「『4Stars』は日本で10本のミュージカルに出ても得られないほどの貴重な経験でした。この後なら何でもできると思った」。「では、ブロードウェイを目指してほしい」とのリクエストには、「日本のミュージカル界では少しずつ評価頂けるようになりましたが、ブロードウェイはまだまだ。それに怖いです(笑)」と正直だ。それでも、城田の歌を聞いたイェストンから「君は今のままでいいよ」とお墨付きをもらっている。「モーリーの楽曲は一回聞いただけでは覚えられない深い闇のような音。エリックのねじ曲がった心と純粋さが見事に調和している」。
舞台デビューから12年。「寿命を削ってでも集大成をお見せしたい」と話す彼の新しい怪人が、この秋、誕生する。
公演は9月13日(土)から29日(月)まで東京・赤坂ACTシアター、10月5日(日)から15日(水)まで大阪・梅田芸術劇場 メインホールにて。チケット発売中。
取材・文:米満ゆうこ