宝塚歌劇雪組東京公演『一夢庵風流記 前田慶次』『My Dream TAKARAZUKA』が8月1日、東京宝塚劇場にて開幕した。雪組トップコンビ、壮一帆と愛加あゆの退団公演。初日に先駆け同日取材に応じたふたりは、爽やかな"仲良しコンビ"らしく、笑顔いっぱいでラストステージへの意気込みを語った。
『一夢庵風流記 前田慶次』は隆慶一郎による人気小説を舞台化したもの。大名・前田利家の甥にあたり、天下の傾奇者として名を馳せた前田慶次の豪放磊落な生き様を描く。みどころのひとつは慶次の愛馬・松風。中に入る"足役"とともに歌舞伎で使用する馬を松竹から借りる。迫力たっぷりに躍動する馬を見事に乗りこなし、豪快な立ち回りもみせる壮は「乗馬経験もありますが、本物の馬とあまり変わらない。でも普通の馬より大きくて(視界が)高いので、最初乗った時は怖かったのですが、稽古を通して慣れました。(中の人も)楽しんでいるようで、松風の勢いも芝居も、どんどんヒートアップしています。私も松風に負けないように魅力満載で前田慶次を演じたい」と語り、本人も楽しんでいる様子。
また、ショーの『My Dream TAKARAZUKA』はひとりひとりの人生にある夢をテーマにしたレビュー。宝塚歌劇100周年に相応しい、宝塚らしさ満載の内容だ。こちらは宇崎竜童と阿木燿子がメモリアルソングを提供していることも話題だが「お稽古場にもいらしていただいて、ご夫婦ですごく感動してくださったようです。宇崎先生は「宝塚に住みたい、とにかくみんな綺麗だ」と仰っていました(笑)。ご期待に添えるよう心をこめて一生懸命歌いたい」と壮。愛加も「毎日この場面で、壮さんを中心に雪組みんなで作り上げているというのを実感しています。壮さんと視線を交わすひとりひとりの表情もいい」と話した。
この公演をもって宝塚を去るふたりだが、壮は今の心境を「退団公演ですが、常に意識しているのは次につなげるための公演であるということ。寂しさを感じることもありますが、みんなと一緒にいる時は、その一瞬一瞬を楽しむことが私にとってプラスになる。みんなとの時間をとことん楽しんで、舞台ではお客さまとのコミュニケーションを楽しんでいきたい」とあくまでも前向き。愛加も「こんなに夢がいっぱい溢れた舞台はほかにはない。壮さんとご一緒に卒業できることが本当に幸せ。この気持ちをお客さまに感謝とともにお届けできたら」と笑顔で話した。
宝塚歌劇雪組『一夢庵風流記 前田慶次』『My Dream TAKARAZUKA』東京公演は8月31日(日)まで上演。
===『一夢庵風流記 前田慶次』===
===『My Dream TAKARAZUKA』===
以上、「チケットぴあニュース」でもお伝えした記事ですが、げきぴあでは8月1日の初日前に行われた壮一帆&愛加あゆ 囲み取材の模様もお届けします!
壮一帆&愛加あゆ 囲み取材
――開幕に際してひと言ご挨拶を
壮「今回は私と愛加と、ほか6名の退団公演となっていますが、やはり常に意識しているのは"次につなげるための公演"であるということ。千秋楽までみんなと心ひとつにして頑張りたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします」
愛加「私もこの公演で卒業させていただきますが、壮さんとご一緒に卒業できることが本当に幸せで、お客さまにこの気持ちを感謝とともにお届けできたらと思います。1ヵ月間頑張ります。どうぞよろしくお願いいたします」
――『一夢庵風流記 前田慶次』では、馬を松竹さんから借りての上演です。馬の乗り心地は?
壮「わたしは乗馬をしたことがあるのですが、意外と本物の馬と乗り心地がかわらないんです。ただ、普通の馬より大きくて、かなり高い。最初に乗ったときは怖かったのですが、でもお稽古場で何回も乗らせていただいたのですごく慣れました。舞台にあがってから松風の勢いがどんどん増して、大劇場の初日よりどんどん激しくなっているんですが、こちらも慣れてきたのでロデオ気分を楽しんでいます(笑)。(馬の中の人も)ものすごく楽しんでいるようで、芝居もどんどんヒートアップしています。「子どもと動物には負ける」とよく言いますが、負けていられないので、私も松風に負けないように魅力満載で前田慶次を演じられたら」
――『My Dream TAKARAZUKA』では宇崎竜童・阿木燿子夫妻が曲を提供しています。
壮「お稽古場にもいらしてくださって、ご夫婦ですごく感動してくださったようです。宇崎先生は「宝塚に住みたい」っておっしゃっていました(笑)。とにかくみんな綺麗だ、本当にいいものを見せてもらったと仰ってくださったので、ご期待に添えるよう心をこめて一生懸命歌いたいと思います」
愛加「この曲の場面では毎日、本当に壮さんを中心として雪組みんなで作り上げているというのを実感しています。壮さんと絡んでいるひとりひとりの表情を、いつも袖から見ています。今の雪組のパワーが、この場面で表現されているんじゃないかなと思います」
――おふたりにとって"宝塚"とはどういうものでしたか?
壮「あまりありきたりな言葉では言いたくないのですが、やはりお客さまが夢を見に来るところだなというのはとても感じます。だからそのご期待に応えられるように、私たちも夢を見ることが大事なんじゃないかなとは常に思っています。舞台で輝くために、自分たちもきちんと夢を持って、それに向かってまっすぐに進んでいるんだという姿勢を崩さないようにということは組子にも常日頃伝えていますので、そういうところが輝く雪組の舞台になっていればいいかなと思います。そしてその公演を観てくださったお客さまがひとときの夢を見てくださって、また来ようとか、生活の活力になってくださればこんな嬉しいことはありません」
愛加「私も壮さんと一緒なのですが、本当にこんなに夢がいっぱい溢れた舞台はほかにはない。それに宝塚に入ってから人との繋がりを感じました。ファンの皆さまも本当にに優しくて、素晴らしい方ばかり。宝塚に入ってたくさんの方と出会えたことが私にとってかけがえのない財産です」
――壮さんは「日本物の継承」ということを言われていましたが、今回新作の日本物。手応えは
壮「私も日本物が得意というわけではないんですが、大好きだったんです。でもスタッフの先生にその気持ちこそが大事なんだよと仰っていただきました。それに100周年の式典や祭典を経験して、昔はもっともっと日本物が多くて、その時の公演の歌を歌っていらっしゃるOGの方もすごく多かった。やはりこれは次の200周年に向けて残していってほしい財産だなということを強く感じたので、今回日本物を上演する機会をいただけたというのは私にとってもありがたいことでしたし、やはり次に繋げて行くためにも責任感を感じながらやっています。日本物とひと言で言っても演じてきた役は本当に様々で、時代も身分も境遇も全然違っていたので、やはりそれぞれに新鮮な気持ちで取り組むことが出来ました。私にとっても、組にとってもすごくいい経験になったのではないかと思います」
――卒業へのファイナルカウントダウンですが現在の気持ちは
壮「寂しさを感じることはあるんですが、みんなと一緒にいる時は、むしろその一瞬一瞬、何気ない生活のひとコマひとコマを楽しんで過ごすことが私にとってはプラスになる。寂しかったら家でひとりで泣きます(笑)。みんなと一緒にいる時はとことん楽しんで、舞台に立ったらお客さまとのコミュニケーションを楽しんでいきます。私のファンの方々も、最後だと惜しむのではなく、一瞬一瞬を輝いているであろう壮一帆を楽しんでいただけたら」
――来週にはNHKでショーが生中継されますね。抱負をひと言(※8月9日(土)19:30~NHK総合「第46回 思い出のメロディー」にて)
壮「全国の皆さまに宝塚のショーを生中継で観ていただくということで、私たちもとても楽しみなんですが......。普段テレビに慣れていないので、どこを見たらいいのかわからない(笑)! あと中継でちゃんと私がヒアリングできるかどうかというのが今もっぱらの不安(笑)。でもいつもテレビで見ている「はい、こちらナントカですー」と言うのを楽しみにしています。全国の皆さまに宝塚の魅力をお届けできれば」
「仲良しコンビ」で知られた壮さん&愛加さんですが、囲み取材のあいだもずっと楽しそうで、お互いの発言に良く笑っていた姿が印象的。
サヨナラ公演ですが、お芝居もショーも湿っぽさがなく、爽快な後味はこのコンビに相応しく、送る側(観客)も笑顔で送り出してあげられそうな、そんな作品です。
公演は東京宝塚劇場にて、8月31日(日)まで行われます。
取材・文・撮影:平野祥恵