宝塚歌劇宙組公演『ベルサイユのばら-オスカル編-』の東京公演が6月20日、東京宝塚劇場にて開幕した。初日に先立ち19日には最終舞台稽古が報道陣向けに公開されるとともに、主人公オスカルを演じる宙組トップスター凰稀かなめ、トップ娘役実咲凜音が会見を開いた。
池田理代子の人気漫画を原作にし、いまや宝塚歌劇の代名詞となった『ベルサイユのばら』。この名作が劇団創立100周年であり、初演から40年目の節目の年に堂々の登場だ。宝塚歌劇はこれまでに『オスカルとアンドレ編』『フェルゼン編』など様々なバージョンで上演を繰り返しているが、今回は男装の麗人オスカルを主人公にした『オスカル編』。オスカルに扮する凰稀はその美しいビジュアルを存分に活かすとともに、フランス革命の動乱の中、鮮やかに生きたオスカルの一生を情感たっぷりに繊細かつ力強く演じ、これぞ決定版と言えるオスカル像を作り上げた。作品的にもオスカルの誕生シーンなど新たなシーンも追加されるなど、見どころ満載。宝塚の伝統たる"ベルばら"の良さは存分に見せながらも、洒落たフィナーレナンバーなど新鮮さもあり、歌劇団100周年に相応しい一作となっている。
会見で、今回の宙組版の魅力を問われた凰稀は「私がここに存在していられるのは、宙組の仲間や、今まで私を支えてくださった人たちの影響があったから。オスカルも同じで、そういう人たち...宙組の仲間が演じる衛兵隊や市民たちに出会い、彼らの気持ちや思いやりがあって、そこにいられるのだと思う。その部分が今回、すごく出ていると思います。オスカルが主役として立っていますが、私はこの作品は民衆が主役だと思っている。私もいろんな人たちの影響を受けて、最後まで生き抜き、散っていきたい」と語った。オスカルを慕う少女ロザリーに扮する実咲も「私も『オスカル編』ということでオスカル様の一生のお話だと思ったのですが、周りにいる人たちがオスカル様を思う気持ちがそれぞれ違うので、それをどれだけ色濃く描けるかで、オスカル様が引き立つ」と話し、現在の宙組の団結から生まれる充実感を垣間見せた。
また凰稀は今月、退団発表をしたばかりだが「主演男役としてどこまでいこうかと考えながらも、悔いのないようにここまでやってきましたし、今の宙組だったら次に繋げてくれると思った。でも今はまったく実感がないですし、辞めるということを口にしたくない気持ち。それはラストの2月15日までとっておきたい。今はお客さまに楽しんでいただけるように、100周年という記念すべき年にこうして自分もいられたという感謝の気持ちをこめて、毎日公演をしていきたい」と心境を話していた。
『ベルサイユのばら-オスカル編-』東京公演は7月27日(日)まで上演。
凰稀かなめ、実咲凜音 囲み取材
――原作から抜け出したようなオスカルでした。役作りで拘った点などは。
凰稀「とにかく原作の漫画をずっと読んでいました。アニメももちろん見ました。(オスカルと自分は)立場的にはとても似ている部分がありますし、性格的にも似ているところがあります。そういう似ているところや"わかるな"と思う部分を少しずつ繋ぎ合わせて、ありのままの自分とオスカルがリンクするように作ってきました。
あとはカツラや化粧という面でも、今回たれ目に(アイメイクを)描いたりしていますが、その角度や大きさもこだわりましたし、でも衛兵隊とやりあっているときはキリッ見えるようなメイクの仕方をしたりとか、そういうところをこだわっています」
――制作発表の場で、植田紳爾先生が「凰稀さんの声はオスカルの声だ」と言っていた。その声の持ち主の凰稀さんが気に入ってるセリフは
凰稀「やっぱり「シトワイヤン、行こう!」の"シトワイヤン"です。以前、雪組公演で演じた時も、いつもの人たちと違う言い方をしたりしていましたが、それは気持ちでそうなってしまう。今は、仲間やお客さんと一緒に「行こう、シトワイヤン!」という気持ちで言っています。そこは私も私じゃなくなっている状態で、そこが好きです」
――今までも何度も上演されている作品ですが、参考にした先輩はいますか?
凰稀「受験生の時に、涼風真世さんのオスカルをビデオで見ていて、その頃からずっとオスカルがやりたいと思っていました。でも今回は今回のオスカルを作りたいと思っていたので、あまり上級生の方の演技は見ていません」
――ずばり今回の宙組版のみどころは
凰稀「...難しいですね、全部すぎて(笑)。私は彼女の一生を描く『オスカル編』というのが好きなのですが、私がここに存在していられるのは、宙組の仲間や、今まで私を支えてくださった人たちの影響があったからだと思っています。オスカルも同じで、そういう人たち...宙組の仲間が演じる衛兵隊や市民たちに出会い、そういう人たちの気持ちであったり、人間の生きる力や、人が人が思う思いやりがあって、そこにいられるのだと思う。その部分が今回、すごく出ていると思います。オスカルが主役として立っていますが、私はこの作品は民衆が主役だと思っている。私もいろんな人たちの影響を受けて、最後まで生き抜き、散っていきたいです」
実咲「私も『オスカル編』ということで、最初はオスカル様の一生のお話だと思ったのですが、周りにいる人たちがオスカル様を思う気持ちがそれぞれ違うので、それをどれだけ色濃く描けるかで、オスカル様が引き立つのだと思います。宙組の全員が、そういう気持ちで一致団結して真ん中に向かって走っていくというのが、今回の宙組の『ベルサイユのばら』というものになっていると思います」
――先日、退団発表をされました。
凰稀「こういう時期に退団発表をしてみなさんびっくりしていると思うのですが、ずっと私自身も主演男役としてどこまで行こうか、先をどうしようかと考えながらも、悔いのないようにここまでやってきました。それに今の宙組だったら次に繋げてくれるんじゃないかと思ったので、今回退団発表させていただきました。今はまったく実感ないですし、辞めるということを口にしたくない気持ち。それはラストの2月15日までとっておきたい。今はお客さまに楽しんでいただけるように、100周年という記念すべき年にこうして自分もいられたという感謝の気持ちをこめて、毎日公演をしていきたいと思いますので、温かく見守ってくださったら嬉しいです」
取材・文・撮影:平野祥恵