人生は数値で測ることができるのか。
英国ウェールズの最先端コンビが現代社会を描く意欲作!
新国立劇場2012/2013シーズン演劇公演の柱となるシリーズ「With -つながる演劇-」。
英国ウェールズ、韓国、ドイツの演劇人とともに普遍的なテーマを探り、創り上げる新作を、3か月連続で上演します。
その第一弾となるのは、2010年3月に開場した、ナショナル・シアター・ウェールズの初代芸術監督ジョン・E・マグラーが演出を手がける『効率学のススメ』。
ウェールズ出身の新進劇作家アラン・ハリスが新作を書き下ろします。
製薬会社の研究室を舞台に、企業人・社会人にとって生きることの意義、人生の本質や豊かさをテーマに、現代を多角的な視点で描き出す世界初演作品。「効率性の追求」や「合理化」の先には何があるのか?
現代日本にとっても重要な問いに、日本に初めて登場するふたりが鋭くスタイリッシュに迫ります。
出演は豊原功補、宮本裕子、田島優成、渋谷はるか、田島令子、中嶋しゅう。
英国流ユーモアも交え、洗練された舞台が展開します。
げきぴあでは本作の稽古場に潜入!
演出のジョンさんにインタビューしてきました。
貴重な稽古場写真と一緒にお楽しみください。
【ものがたり】
ある製薬会社の研究室のリーダー、イフィーは、実験中に新しい発見をしたことを上司グラントに報告した。その頃、ビジネス・コンサルタントのケンが雇われ、研究開発の効率化に関する調査が始まる。彼による時間管理調査などの「ブラウンペーパー作業」は、研究を打ち切るためではないかと社内でも疑わしい。イフィーは早くこの発見を発表したいと願う。ケンはイフィーらと交流するうちに、人生は数値では測れないことに気付き、効率化の推進に疑問を持ち始める......。
★稽古場レポート★
登場人物と配役は以下のとおり。
ケン・ローマックス:豊原功補
イフィー・スコット:宮本裕子
ジャスパー・ハーディー(研究員):田島優成
ジェニファー・フィールド(研究員):渋谷はるか
グラント氏:中嶋しゅう
グラント夫人:田島令子
歩きながらもICレコーダーを手に効率的に仕事をこなすケン。(豊原さん)
イフィーの研究はどうなってしまうのか...。(宮本さん)
ジャスパーは立っているだけでもさまになるイケメンです。(田島優成さん)
ジェニファーはどうやら過去に秘密が...!?(渋谷さん)
自身の立場を案じるグラント氏とそれを何とかしようと思案する夫人。(中嶋さん、田島令子さん)
シリアスな会話をしているはず...なんですがコミカルな動きにも注目です。
"ブラウンペーパー作業"中。(田島優成さん、渋谷さん)
「研究が打ち切られるかもしれない...」と考えながらの作業って辛いですよね。
演出のジョンさんと何やらお話中の豊原さん。
稽古場レポートはここまでです。
「効率」を求めるあまり社会のあり方が変わってしまう。
「効率」ゆえに捨て去られるものがある。
わたしたちも決して他人事ではないこの問題。
彼ら、彼女たちは何を考え、求め、そしてどんな結末を迎えるのか...。
続きはぜひ劇場でお確かめください。
★ジョン・E・マグラー インタビュー★
――非常に興味深いテーマですが、このアイディアは脚本のアランさんから?
「そうです。新国立劇場から戯曲の書き下ろしを頼まれ、去年アランと一緒に日本にお招きいただきました。そのとき彼が、ウェールズと日本、両方に響くような芝居を書きたいと考えたんです。わたしたちが直面するのは経済的に難しい時代にどう生きていくかということだと思います。
英国では今、雇用や収入が減るいっぽう、労働量は多くなってきている現状があります。日本でも同じようなことが社会問題として起きています。そこでアラン自身の体験を戯曲にしようという話になりました。
もともと彼は新聞社で働くジャーナリストでした。そのとき、新聞社が"効率的になるには"と業務効率化のエキスパートを呼んだんです。アランは実際に、ブラウンペーパーエクササイズ(模造紙に業務内容を書き出す作業)という体験をしました。一週間、通常の取材ができないほど集中してこの作業をさせられたそうです。その後査定があり、クビになった社員も多かったとか。彼の体験を生かし、効率性やふたつの国に関係している社会的・経済的状況も含め"人が労働するとは"ということを絡めて劇作にしたらと思いつきました」
――ものがたりの舞台は新聞社ではなく製薬会社ですね。
「新聞社という設定にはしたくなかったのです。それで共感出来るような職種は何だろうと考え、いま社会問題にもなっている製薬会社を選びました。設定の中ではあることを研究していて、それをテーマとしていますが、観客のみなさんには本番中に知っていただきたい情報なのでここでは秘密にします」
――「効率学」と聞くと堅いイメージを連想してしまいますが、実際はコメディ的な要素もあるとか。
「ビジネスの視点からものを見る効率化のエキスパートと、発見や創造性という視点からものをみる科学者との議論の対峙を描いています。ふたりとも人間性に欠点があり、他者とうまくやっていくことが得意ではないタイプ。不器用なふたりの出会いと衝突がコメディ感に繋がっていると思います。確かに"効率学"そのものは面白いものではありませんが、人間が何かをしたいと思い、それを突き進めて上手くいかないとどうなってしまうか、というのはときにコメディになります」
――「人生は数値で測ることができるのか」というテーマをどう舞台で表現されるのか興味深いです。
「大きなテーマはありますが、舞台上で繰り広げられるのは普通の人間の日常です。だから大きなテーマを持ってはいますが、それを現実化できない人間の姿を観てもらえればと思っています」
――そういえば、新国立劇場・小劇場で初めて360°客席に囲まれたステージになるそうですね。
「私と舞台美術の二村周作さんと相談して決めました。実験する場所、ラボがそういう場所なので。見る方が実験をみるような体感をしてもらえればと思います。ここは科学的な実験の場であり、効率学の実験が繰り広げられている、それを4方向から観察するという舞台空間になりました」
――しかも周囲に映像を流すと伺いました。
「そうです。全面にプロジェクションを投影します。動画、アニメーション、グラフィックス......適当な用語は何だろう? 今作ってもらっていて、私も楽しみにしています」
――最後に、ジョンさんは同じ国立劇場の芸術監督の立場として、日本の新国立劇場の舞台制作の場をどう感じましたか?
「とても効率的です。いい意味で(笑)」
横から新国のプロデューサーが"わたしたちの周りはあまりそうじゃないんだけど(笑)"と話すと、
「そのジョークで終わっていい?」
とっても気さくでユーモアに溢れたジョンさんでした。
公演は4月9日(火)から4月28日(日)まで。 東京・新国立劇場 小劇場にて。
チケットは発売中。
取材:金子珠美(ぴあWeb編集部)
【公演情報】
[劇作]アラン・ハリス
[翻訳]長島確
[演出]ジョン・E・マグラー
[出演]豊原功補 / 宮本裕子 / 田島優成 / 渋谷はるか / 田島令子 / 中嶋しゅう
★お得情報
公演直前/A席特別割引受付もアリ。
定価5250円→4800円に割引