仁・義・礼・智・忠・信・考・悌――
文字が浮き出る不思議な玉を持つ8人の若者。
不思議な縁(えにし)で結ばれた彼らを待ち受ける、苛酷な「運命」とは――
お馴染「八犬伝」が新たな物語となって甦る!!
江戸時代後期に滝沢馬琴によって著された「里見八犬伝」。
28年かけて完成した98巻106冊の大作であり、日本の長編伝奇小説の古典の一つです。
室町時代後期を舞台に、安房国里見家の伏姫と神犬八房の因縁に結ばれた8人の若者(八犬士)が活躍するこの作品は、現在に至るまで、演劇、映画、ドラマ、アニメなど各ジャンルの創作に多大な影響を与えてきました。
この壮大な物語を演劇的に捉えなおし、8人の若者の成長物語として描く、まったく新しいエンターテイメント舞台が3月にシアターコクーンで上演されます。
キャストは舞台・映像と幅広いフィールドで活躍する阿部サダヲを筆頭に、瀬戸康史、津田寛治、中村倫也、近藤公園、尾上寛之、太賀、辰巳智秋、二階堂ふみ、田辺誠一ら若手&実力派俳優が集結。
さらに、台本の青木豪と演出の河原雅彦はシアターコクーン初登場!
いったいどんな舞台になるのか、期待が高まります。
2月某日、その熱気溢れる稽古場を訪ね、取材をしてきました。
稽古場に入ると、まず櫓の上の和太鼓が目に入ります。
俳優たちの稽古着は和装の人が多い。
浴衣や剣道着、足元はエアー地下足袋!
よくみると底がクッションのような構造になっています。
これは衣裳部の方が揃えたのだそう。激しいアクションでも足を痛めないようにという配慮ですね。
アクションと殺陣指導は、劇団☆新感線でもおなじみの前田悟さんが担当されるので、スピーディな殺陣が期待できそう。
なおげきぴあでは、極力ネタばれにならないよう写真を中心に稽古場の様子をお届けします。
どの写真がどのシーンかは、本番の舞台をお楽しみに♪
[左から阿部サダヲ、中村倫也、瀬戸康史、近藤公園、田辺誠一]
[田辺誠一]
[左:瀬戸康史、右:中村倫也]
[演出:河原雅彦]
河原さんの演出はとにかく丁寧!
シーンのどこに音を入れるか、セリフの間をどうするかなど、スタッフやキャストと細かく相談しながら演出をされていました。
ドンドンドンドーン、稽古場に響き渡る和太鼓の音。
和太鼓の音は、叩き方ひとつでまったく印象が変わります。
河原さんは何度も奏者と確認しながら、ベストなシーンを作り出す作業を繰り返します。
[左:津田寛治、右:近藤公園][左:中村倫也、右:阿部サダヲ]
下の写真はなんだか楽しそうなひとコマですね。
これはあるシーンが上手くいってみんなで喜んでいるところ。
八犬士が全員揃ってのシーンです。
実は八犬士8人が揃うのは唯一このシーンだけなので、ここは俳優も気合いが入っていました。
熱気溢れる稽古場の様子は(後編)に続きます。
☆後編ページはこちら
撮影:本房哲治
げきぴあでは、この舞台を企画・製作した(株)森崎事務所の大矢亜由美プロデューサーにお話を伺いました。
――青木豪さんが書かれた台本を読まれた時の感想をお聞かせください
すごく読みやすかったです!
長い話を、ただのダイジェストではなく登場人物の関係性も描きながら、最後はオリジナルの話になっていて。
最初読んだ時はちょと驚きました。裏切りがあったりとか、大胆に面白くアレンジしてあって。これぞ職人芸だなと。
――まさに理想どうりの台本だったのですね
当初から8人の青春物語にしたいと思っていたんです。「八犬伝」はキャラクターが登場してくる過程が面白いので。
お祭りみたいな公演がやりたいってお願いをしていたら、とてもダイナミックな話にまとめてくださったので嬉しかったですね。
――河原雅彦さんが演出されるのも楽しみです
そうなんです。
シアターコクーンで演出できるのは夢だったと河原さんもおっしゃてくれて。
今回和太鼓を入れるんですが、音楽の和田(俊輔)さんと打ち合わせをしていたときに河原さんからアイディアが出たり。あと、スタッフも優秀な方が多くて、みんなが意見を持ち寄って、提案してどんどんやりたいことが増えているんです。
八犬士の持つ玉だったり、ほかにもビックリするような仕掛けもあります。
(予算のこともあるので)ときどき打ち合わせをしていてヒヤヒヤすることもあるくらい(笑)。
――見せ場がたくさんありそうですね
和太鼓を入れたことで迫力もでてカッコいいですよ。
阿部さんと尾上さんの太鼓合戦もあります。
あとは殺陣のシーンが多いです。
シャープでスピーディーな現代的な殺陣で、とび蹴りや八犬士のキャラクターに合わせた技もあります。
俳優は段取りを覚えるのが大変だと思いますよ。
型でみせるというか、歌舞伎っぽい部分もありますね。
とにかく河原さんは丁寧に稽古されているので、心情で見せるところとビジュアルで見せるところがしっかりあって、人間ドラマとスペクタルの両方を楽しめるエンターテイメント作品になっていってるんじゃないかと思います。
――衣裳はどんな感じですか?
シンプルな和物です。八犬士の色にはこだわっていますね。
――音楽と衣裳の話を伺うと「和」が基調なのかなと思います
そうですね。八犬士が個々に名乗るシーンがあるんですが、ここは歌舞伎をちょっと意識して。
実はここだけコンドルズの近藤良平さんにステージングをお願いしました。
――それはすごいですね!
ほかのシーンで8人が揃うところがないので、にぎやかにしたいなと。
河原さんは『STOMP』みたいにしたいって言ってたんですよ。
――最後にこの舞台への思いをお聞かせください
『八犬伝』はずっとやりたいと思っていたので、評判になるといいなと思っています。
取材:金子珠美(ぴあWeb編集部)
【公演情報】
2013年3月8日(金)~3月31日(日)
Bunkamura シアターコクーン
原作:滝沢馬琴
台本:青木豪
演出:河原雅彦
出演:阿部サダヲ、瀬戸康史、津田寛治、中村倫也、近藤公園、尾上寛之、太賀、辰巳智秋、二階堂ふみ、田辺誠一、ほか