●ヒラノの演劇徒然草●
東野圭吾の大ベストセラー『容疑者Xの献身』。
天才物理学者・湯川学がその知識を活かし、一見不可思議に思える事件のからくりを解いていく"ガリレオシリーズ"の中でも、特に人気の高い作品です。
今年はこの英語版が、ミステリー界のアカデミー賞と呼ばれる米国のエドガー賞最優秀長編賞にノミネートされたのも大きな話題となりました。
映画版も大ヒットしたこの作品を、キャラメルボックスが舞台化したのは2009年のこと。
原作者・東野圭吾も「初演を目にした時には、あの物語をこんなふうに芝居にできるのか、と驚いた」というその舞台は、原作に忠実でありながら演劇的面白さが際立つものでした。
その作品が、3年ぶりに再演されます。
5月某日、その稽古場に伺ってきました。
東野圭吾の大ベストセラー『容疑者Xの献身』。
天才物理学者・湯川学がその知識を活かし、一見不可思議に思える事件のからくりを解いていく"ガリレオシリーズ"の中でも、特に人気の高い作品です。
今年はこの英語版が、ミステリー界のアカデミー賞と呼ばれる米国のエドガー賞最優秀長編賞にノミネートされたのも大きな話題となりました。
映画版も大ヒットしたこの作品を、キャラメルボックスが舞台化したのは2009年のこと。
原作者・東野圭吾も「初演を目にした時には、あの物語をこんなふうに芝居にできるのか、と驚いた」というその舞台は、原作に忠実でありながら演劇的面白さが際立つものでした。
その作品が、3年ぶりに再演されます。
5月某日、その稽古場に伺ってきました。
シリーズの主役、ガリレオ先生こと湯川学は初演に続き岡田達也。
細いフレームの眼鏡が似合い、理知的な湯川にぴったり。
その湯川と対決するもうひとりの天才、石神哲哉には元劇団員の近江谷太朗。
物語は、石神がアパートの隣人、花岡靖子のためにしたある犯罪をめぐり、展開していきます。
石神は、天才・湯川が「自身が出会った中で最高の頭脳」と認める存在。その彼が知恵をめぐらせひた隠す真実を、湯川は突き止めることができるのか...。
キャラメルボックスでは三枚目的役柄を演じることが多い近江谷さん、今回演じるのは愛する人のため自己犠牲を貫く男。
すでに稽古場でも不器用な男の悲哀みたいなものを醸し出していました。
この日稽古場に伺った時、一同は石神が警察に自首してきてからのシーンのお稽古真っ最中。
まさにクライマックスシーンです。
石神の話す真実は本当に真実なのか?
石神と、疑いと戸惑いをもって彼に対峙する刑事たちの緊張のやりとりが繰り広げられます。
湯川の友人でもある草薙刑事は青年座の小林正寛。草薙刑事の上司である間宮刑事は川原和久。
刑事役ということで...やっぱり『相棒』シリーズを彷彿としてしまいますね。川原さん&小林さんの刑事コンビはとにかくよく響く声と目ヂカラで、言い知れぬ迫力。
対する近江谷さんも"狂気を演じる"目がとんでもなく怖いです。緊張の攻防ですが、演出の真柴あずきさんは(この日は成井豊さんは別作品の稽古中とのことでした)、「観ている方も息がつけないくらいの緊張感がほしい。このあとの石神の"(お茶の)お代わりいただけますか"で(観客が)ほっと息を抜くくらい」と、さらなる臨場感を要求していきます。
...と、稽古内容はとてもヘビィなのですが、稽古場自体はベテランの俳優さんたちが多いせいでしょうか、ピリピリ感はなくどちらかというとリラックスした感じ。
大人の余裕、のようなものを感じます。
こちらは演出家のダメ出しを律儀に台本に書いていく小林さん。
その書き込みの多さをみんなにからかわれ、真柴さんには「こば君、もう書くところないんじゃないの?(笑)」と言われる始末。
西牟田さんも「私の台本あげよっか?」と余裕の発言!?
その西牟田恵さんは、物語のキーパーソンである花岡靖子役。
靖子の娘・美里役の實川貴美子さんとのコンビネーションも抜群。
現場検証のシーンでは、
「前かがみになりすぎると、棚にかぶって顔が見えなくなっちゃうから気をつけて」など演劇ならではのダメ出しから、
(刑事たちに)「義務的すぎる、後の"うかない顔"につながるように段階的に、ここはもっと人間臭い方がいい」といったキャラクターの心情まで、真柴さんの演出は細かく飛びます。
真柴さんの演出、淡々としていますが、説明が論理的でわかりやすい。
その後場面は変わって、石神と、石神の告白した内容に納得できない湯川との対決のシーンに。
...ちなみにこの作品、場面転換も見どころです!部屋から河川敷に変わるシーンなど、鮮やかで演劇的面白さに満ちています。
ところどころ、ナレーション的に原作をそのまま朗読するのも、文字が三次元へ変換されていく感覚に加え、原作へのリスペクトも感じられて、粋です。
さて、湯川と石神の対決は、ザ・ミステリー!とでも呼びたい火花散るシーンです。
湯川は石神が仕掛けた壮大なたくらみに気付きます...。物語はミステリーですが、謎が解けた後にわかる壮絶な愛の形に、さらに一層の衝撃を受けるに違いありません。
公演は5月12日(土)から6月3日(日)に東京・サンシャイン劇場、6月7日(木)から12日(火)に大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ、6月15日(金)・16日(土)に東京・THEATRE1010にて。
チケットはいずれも発売中です。
細いフレームの眼鏡が似合い、理知的な湯川にぴったり。
その湯川と対決するもうひとりの天才、石神哲哉には元劇団員の近江谷太朗。
物語は、石神がアパートの隣人、花岡靖子のためにしたある犯罪をめぐり、展開していきます。
石神は、天才・湯川が「自身が出会った中で最高の頭脳」と認める存在。その彼が知恵をめぐらせひた隠す真実を、湯川は突き止めることができるのか...。
キャラメルボックスでは三枚目的役柄を演じることが多い近江谷さん、今回演じるのは愛する人のため自己犠牲を貫く男。
すでに稽古場でも不器用な男の悲哀みたいなものを醸し出していました。
この日稽古場に伺った時、一同は石神が警察に自首してきてからのシーンのお稽古真っ最中。
まさにクライマックスシーンです。
石神の話す真実は本当に真実なのか?
石神と、疑いと戸惑いをもって彼に対峙する刑事たちの緊張のやりとりが繰り広げられます。
湯川の友人でもある草薙刑事は青年座の小林正寛。草薙刑事の上司である間宮刑事は川原和久。
刑事役ということで...やっぱり『相棒』シリーズを彷彿としてしまいますね。川原さん&小林さんの刑事コンビはとにかくよく響く声と目ヂカラで、言い知れぬ迫力。
対する近江谷さんも"狂気を演じる"目がとんでもなく怖いです。緊張の攻防ですが、演出の真柴あずきさんは(この日は成井豊さんは別作品の稽古中とのことでした)、「観ている方も息がつけないくらいの緊張感がほしい。このあとの石神の"(お茶の)お代わりいただけますか"で(観客が)ほっと息を抜くくらい」と、さらなる臨場感を要求していきます。
...と、稽古内容はとてもヘビィなのですが、稽古場自体はベテランの俳優さんたちが多いせいでしょうか、ピリピリ感はなくどちらかというとリラックスした感じ。
大人の余裕、のようなものを感じます。
こちらは演出家のダメ出しを律儀に台本に書いていく小林さん。
その書き込みの多さをみんなにからかわれ、真柴さんには「こば君、もう書くところないんじゃないの?(笑)」と言われる始末。
西牟田さんも「私の台本あげよっか?」と余裕の発言!?
その西牟田恵さんは、物語のキーパーソンである花岡靖子役。
靖子の娘・美里役の實川貴美子さんとのコンビネーションも抜群。
現場検証のシーンでは、
「前かがみになりすぎると、棚にかぶって顔が見えなくなっちゃうから気をつけて」など演劇ならではのダメ出しから、
(刑事たちに)「義務的すぎる、後の"うかない顔"につながるように段階的に、ここはもっと人間臭い方がいい」といったキャラクターの心情まで、真柴さんの演出は細かく飛びます。
真柴さんの演出、淡々としていますが、説明が論理的でわかりやすい。
その後場面は変わって、石神と、石神の告白した内容に納得できない湯川との対決のシーンに。
...ちなみにこの作品、場面転換も見どころです!部屋から河川敷に変わるシーンなど、鮮やかで演劇的面白さに満ちています。
ところどころ、ナレーション的に原作をそのまま朗読するのも、文字が三次元へ変換されていく感覚に加え、原作へのリスペクトも感じられて、粋です。
さて、湯川と石神の対決は、ザ・ミステリー!とでも呼びたい火花散るシーンです。
湯川は石神が仕掛けた壮大なたくらみに気付きます...。物語はミステリーですが、謎が解けた後にわかる壮絶な愛の形に、さらに一層の衝撃を受けるに違いありません。
公演は5月12日(土)から6月3日(日)に東京・サンシャイン劇場、6月7日(木)から12日(火)に大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ、6月15日(金)・16日(土)に東京・THEATRE1010にて。
チケットはいずれも発売中です。