さいたまゴールド・シアター第5回公演「ルート99」 蜷川幸雄インタビュー

【げきぴあニュース】

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12月5日(月)、さいたまゴールド・シアター第5回公演「ルート99」の公開舞台稽古が行われ、演出の蜷川幸雄さんがインタビューに答えてくださいました。
大変ですね。幕開きますかね(笑)毎日怒鳴りまくっていますよ。(直前の公開舞台稽古について)最悪のところを見られちゃったな。あそこは問題のシーンなんだよ(笑)。

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――結成から5年経ちますが。
すごく上手くなったんですよ。意外と高齢者の方がお元気で演技が上手い。若い年齢の団員の方がムラつきがある。演技の上手さと元気を、高年齢の方に揃えろと言っています。良いとこは良いんだけど、駄目なところは駄目なんだよ(笑)。お年を召している方の方が、記憶力が良くて、ちゃんとしていますね。個人差もあるのかもしれませんが、去年より良くなったりするんですよ。

――見どころは?
岩松さんの戯曲には、現実の俳優さんの名前で出るようにと書かれています。劇中、さいたまゴールド・シアターという名前も出てきて、さいたまゴールド・シアターの俳優たちがある戯曲の稽古をして、劇中劇をやります。そして、この「ルート99」全体をさいたまゴールド・シアターがやっているわけで、そういう仕掛けがあります。そして、基地の問題があります。現実の日本の基地の問題、それと、基地で生活する人、関係のない島民の方、色んな人が入り乱れて問題をあぶり出します。台詞の数が多いのと、全員が出ているので大変です。修学旅行に行って、雑魚寝している生徒たちの傍で、見回りをしてくたびれている先生というのが僕の役回りですね。少し今までの演劇とは違う新しい演劇の要素が出てきたかなと思います。外国からも注目されて、公演をしませんかという声がパリとか韓国からある。頑張って、世界ツアーができる集団になりたいですね。

――新しい演劇の要素とおっしゃっていましたが、プロの俳優と違う面白さとは?
稽古をやっていて、普通そういうリアクションはしないようなぁ、という時がある。今までのルールとは違う表現をする時があるのです。それに、まず俳優として育ってきていないから、体型が俳優ではないでしょう。生活者の体型なのです。腰が曲がったり、足が曲がったり。顔も美男美女ばかりというわけではなくて、そこらにいる、普通の生活をしている人の顔なわけだから、より舞台上の空気がリアルに見えます。半分ドキュメンタリーの演劇でありながら、半分フィクション。今までの演劇だと、もうちょっと整合性をもたせようとしたり、整理しようとするところを、整理しようもなく存在していく。演劇の整っていこうとする形を壊していく力があります。高齢者が語ると、涙が出てくるほどいい時があるんです。

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――気を付けていることは?
体調管理ですね。毎年ひとつひとつ年をとっていくので、休憩時間に畳の上で休めるようにしようとか、5時間稽古をやったらもう止めておこうとか。体調面については気を付けていますね。

――前回の「聖地」は総力戦とおっしゃっていましたが、今回は?
今回も総力戦です。この劇場には、さいたまネクスト・シアターという若者の集団もあるのですが、全員稽古場に来て手伝うように言いました。代役をやったり、裏方として装置の転換をしたり、お年寄りの世話をしたり、手を取って階段の上り下りを手伝うとか。そうしないと成り立たないんです。高齢者と取り組む時、理性的に接しようとするんだけど、我を忘れて怒る時もあって。怒れば僕だって血圧あがるでしょ、大変ですね。忍耐力と成果をどこで摺り合わせていくかが結構大変。なかなか僕は成長しないです。忍耐力がないですね。声が枯れるくらい、遠慮なく怒っていますね。今日もあまりにも演技ができなくて、物をぶつけようと思ったもの。でも自分より年齢が上の人にそれはないよなって。
戯曲のことについて言うと、現在の若者はなぜ無表情で、なぜある事に対して強烈な関心をもたないでいられるのか。それに対して、苛立つお年寄りが出てくるわけ。若者を理解しようとすると、その中にもちゃんと焦燥感を抱えている若者がいるわけで、現在の若者を見るお年寄りの目、逆に、若者がお年寄りを見る目。そういうものを岩松さんは周到に書いています。その辺の見方もきちんと描かれていて、面白いなと思います。役名は実名で呼んで下さい、と書いている。固有名詞で書いているのと同じですから、実に俳優をやる気にさせる。そういうところは心優しい作者の配慮ですね。しかし難しくて、二重三重の仕掛けがある。作者自身の挑戦というか、面白がり方がすごいですね。よく見ていると色んな企みがあって、知的パズルゲームを解くような楽しみもこの戯曲はもっている。なかなかいい戯曲で、良い作家だなぁと思っています。

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――若者とお年寄りの違いは?
若者だったら1日でできるのが、我々は3日か4日できると考えた方がいいですね。手間暇は若者がやるよりも遙かにかかるんだけど、若者に代役で出てもらうとすぐ分かるのですが、演技の質と、その人についている個人史・生活史みたいなものが全然違いますね。演技力、表現の深さというものでいえば、圧倒的な差がある。年月をちゃんと背負った人のすごさです。

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写真 さいたまゴールド・シアター第5回公演『ルート99』 撮影:宮川舞子

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