●ヒラノの演劇徒然草●
蜷川幸雄演出、音楽劇『ガラスの仮面 ~二人のヘレン~』の稽古場に行ってきました。
ご存知、美内すずえによる国民的少女漫画が原作。
何をやっても不器用だが、その演劇の才能を往年の大女優・月影千草に見出された天才少女・北島マヤ。
大女優と映画監督のあいだに生まれたサラブレッド、姫川亜弓。
演劇に情熱を傾けるふたりの少女が、幻の名作『紅天女』を演じることを目標に、女優として、人間として成長していく物語。
劇中劇として登場する舞台作品も魅力的、さらに演劇のバックステージものとしても楽しめます。
私も中高生の頃にハマりました。今でも続編が出ると単行本買います。
演劇を愛する人たちのバイブルといっても過言ではないでしょう。
蜷川幸雄演出版は2008年に初登場。今回はその続編で、原作でも人気の高い『二人のヘレン』のエピソードを中心に描かれます。
稽古場に伺ったこの日は2幕、まさに舞台『奇跡の人』をマヤと亜弓がWキャストで演じるくだりをほぼ通しでお稽古。
次の稽古日からは場所を舞台に移すという、まさに稽古佳境のタイミングでした。
舞台『奇跡の人』は三重苦のヘレン・ケラーに"言葉"と"世界"を教えたアニー・サリバンの物語。
マヤは、そのヘレン役のオーディションに挑みます。
ライバルは亜弓を含む強敵たち。
マヤ役は大和田美帆。
2008年版の時のオーディションで、応募者2000人超の中からこの役を勝ち取った彼女。
劇中劇とは思えない体当たりの演技です。
マヤはオーディションを経て、ヘレンを亜弓とともにWキャストで演じることに。
漫画の見どころでもある、ヘレンが言葉を理解する"奇跡"のシーンは必見です!
力いっぱいのヘレンの演技に加え、アニー役の母親・歌子がマヤにキスをするシーンでの嫉妬の感情など、柔軟に魅せていきます。
それにしてもこのアニーとヘレンの対決、まさに漫画のひとコマのよう!
亜弓の母である姫川歌子は香寿たつき。
香寿さんは今回が初登場です。
さすが元宝塚男役トップスター、大女優の貫禄!
原作同様、少女たちの演劇に賭ける情熱とともに、
マヤを中心とした恋模様も描かれます。
桜小路君は細田よしひこ、"紫のバラの人"速水真澄は、新納慎也。
『紅天女』上演をめぐる、速水真澄の表の顔・大都芸能社長としての彼と、月影千草の火花散るやりとりは短い時間ながら息をのみます。
そして月影千草は、2008年版でも大評判だった、夏木マリ。
その迫力、ビジュアル、月影先生そのものです。ゾクっとするぐらいに。
ところで。
2008年の会見で「(原作にビジュアルを)なるべく近づけたい」と蜷川さんが語っていたように、みなさんそれぞれ原作と照らし合わせても納得のビジュアルなのですが。
その中でもわたしのイチオシは小野寺役の原康義さん!
チョー小野寺です!!
原さん、椅子に座ってご自分の出ていないシーンを見ている時も、たたずまいが小野寺なんです。
パイプ片手に鋭い視線で。
(小野寺は、亜弓が所属する劇団オンディーヌの理事であり、演出家。亜弓に肩入れして、マヤを見下している人です)
稽古場に演出家がふたりいらっしゃるようでした(笑)。
そして蜷川演出といえば、"厳しい""怖い"イメージがありますが。
この日も蜷川さんからは「歩くのが早すぎるんだよトンマ!」など、威勢のいいお言葉がポンポン飛び出ていたものの、「キャラクター付けが明瞭になって、面白くなってきた」と満足げなセリフも。
原作ファンも満足するに違いない、(もちろん原作を知らない人も楽しめること請け合い!)
キャラクター付けバッチリな音楽劇『ガラスの仮面 ~二人のヘレン~』、チケットは現在発売中です。
↑前回同様、原作のビジュアルも登場するようです。