キャラメルボックス『また逢おうと竜馬は言った』を観てきました!

●竜太郎の演劇かわらばん●

 キャラメルボックスの『また逢おうと竜馬は言った』を観ながら考えたこと。それは、この作品を書籍にしたら、一体どこの売り場に並ぶんだろうかということ。時代小説コーナー? 答えはNO。そう早合点した人は、タイトルだけで判断した証拠。SF? いやいや、写真のイメージから時空を超えて現代と過去を描く物語かと思いきや、ばっちり現代劇だし。むしろ、青春ストーリーや恋愛小説に入れたほうが、しっくりとくる。というより、クライム・サスペンスやビジネス書の棚に入っていても、僕は驚かない。

                           撮影:伊東和則
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   竜馬の生き方をリスペクトはしても、それをしっかり実生活で活かせている人は少ないと思う。ひとことで言えば、時代が違う。何より、自分と竜馬を重ね合わせるなんて、むずがゆいというか、おこがましいわけで。福山雅治の勇姿を観て、「これは自分だ!」と思えたら、それはそれで幸せだけど。『また逢おうと竜馬は言った』が画期的なのは、そんな偉人と僕らの真ん中に、欠点だらけの会社員・岡本を配置したこと。どんな乗り物にも必ず酔ってしまうくせに、世界への憧れを捨て切れず、ツアコンになってしまった岡本。欠点だらけなのに決して憎めない彼になら、誰もが感情移入できるにちがいないから。
 ディスコミュニケーションに陥った友人夫妻を早く仲直りさせないと、ふたりは離婚してしまうかもしれない。そんな事態に直面し、奔走する岡本の支えになったのは何か。それは、心酔してやまない坂本竜馬が薩長同盟の仲介に当たった際の交渉術だった。岡本は、自分が直面したケースにカスタマイズしながら、竜馬の教えを実践していく。それを追体験しながら、観客も自分の身近に「薩摩」と「長州」が存在したらどう対処しようか、と思いをめぐらすことができる仕組み。まさにHow-To本でケーススタディする感じだ。作者・成井豊の編み出したこの設定は、もはや"発明"に近いと思う。

                            撮影:伊東和則

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 Wキャストのうち、観劇したのは〈空組〉で、左東広之が岡本、岡田達也が竜馬を演じていた。どこまでもひたむきで実直な左東と、晴れわたった空のように陽性な岡田のコントラストが面白い。一方で、少年のさわやかさを持ち続ける畑中智行が岡本、海のように広い包容力を感じさせる大内厚雄が竜馬を演じる〈海組〉では、まったく違うテイストが期待できそうだ。キャラメルボックスはやっぱり役者の層が厚い。まだ入団2年目だという原田樹里の堂々たる演技がそれを証明していた。


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