圧倒的ダイナミズムで魅せる『「進撃の巨人」-the Musical-』開幕

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1月7日より大阪で『「進撃の巨人」-the Musical-』が幕を開ける。

 

2009~2021年に『別冊少年マガジン』(講談社)で連載された諫山創による漫画『進撃の巨人』。コミックス全34巻の発行部数は世界累計11千万部を越え、日本のみならず海外でもセンセーションを起こし、TVアニメ化をはじめ様々なメディアミックスが行われた。

 

連載終了後の現在も絶大な人気を誇るこのダークファンタジー作品をミュージカル化した本作。原作の世界観はどこまで再現するのか、巨人の出現はどのように描くのか...など、多くの関心を呼び、謎のベールに包まれた舞台がいよいよ、白日の下にさらされる。そこで初日前日に行われたゲネプロの模様をレポートする。

 

会場に入ると舞台にはタイトルロゴが描かれた幕が下りており、その向こうに何があるのか客席からはまだ見えない。木々のざわめき、小鳥のさえずり、そして時折、地鳴りのような大きな足音が聞こえてくる。早くも壁の中の世界へと迷い込んだようだ。

 

時は来た。徐々に会場の明かりが落とされ、闇に包まれた。ワイヤーアクションも飛び出すオープニングを経て、物語はウォール・マリアに護られたシガンシナ区から始まる。まだあどけなさを残すエレン・イェーガーとミカサ・アッカーマン、アルミン・アルレルトたちが登場。エレン役の岡宮来夢、ミカサ役の高月彩良、アルミン役の小西詠斗がみずみずしい存在感で惹きつける。エレンを演じた岡宮は巨人に憎悪を募らせ「駆逐してやる」と誓った瞬間、目に獰猛な光を宿し、幼さを脱ぎ捨てる。高月は冷静なミカサを、佇まいで表す。ただそこにいる、という難しい場面も力強く描き切った。小西はあらゆる感情を引っ張り出して、頭脳明晰ゆえに恐怖心も人一倍強いアルミンに姿を重ねる。

 

そんな彼らを筆頭に、原作に忠実なキャラクターが次々と登場する。ビジュアル、衣装、話し方まで、まるで原作から抜け出たようだ。エレンやミカサを幼いころから知るハンネス役の村田充は、ちょっとお茶目な一面も持つ彼を好演。第104期訓練兵団の鬼軍曹、キース・シャーディスを演じる林野健志は195センチという長身を生かし、威圧感をビシビシと放つ。松田凌はリヴァイの冷酷さを表情に影を落として見せるも、優しさを併せ持つ面を声色や仕草で表した。訓練生であるジャン・キルシュタイン役の福澤侑、マルコ・ボット役の泰江和明、コニー・スプリンガー役の中西智也、サシャ・ブラウス役の星波も、怖いもの知らずの若者たちを、若さ特有の高揚感を湛えて熱演した。

 

印象的な場面も幾度となく訪れる。立道梨緒奈演じるハンジ・ゾエから巨人について学ぶシーンでは、机を前にして一列になって椅子に座る訓練生は宗教画のように美しい。訓練生たちの特長を一人一人、紹介する場面ではトランポリンを使ったウオールアクションもあり、サーカスを見ているような面白さもあった。寮内でジャンを中心にダンスするシーンは音楽のライブさながらで、ついつい体がリズムを取る。

 

臨場感を醸成しているのは、Blade Attackersの存在も大きい。彼らは恐怖や喜怒哀楽をアクロバットや様々なダンス、そして力強い歌声で表現し、訴求する。巨人に襲われ、逃げ惑う人々も身体表現で魅せ、ステージ上に大小の渦を作り、混乱を起こした。

 

キャスト達の歌声も注目だ。岡宮は時に力強く、時に優しく、エレンの気持ちを歌に乗せる。小西との掛け合いでは、低音の岡宮と高音の小西のハーモニーが実に心地よく、息もぴったり。幼馴染のエレンとアルミンという関係性を歌声でも丁寧に描いた。高月も凛とした強さが印象的なミカサの心のうちを歌に込める。エレンという光を求めるミカサ、その気持ちが痛いほど伝わってくる。調査兵団第13代団長のエルヴィン・スミスを演じる大野拓朗も圧倒的な存在感を見せた。会場を包み込むような朗々とした歌声に、エルヴィンのカリスマ性が全身からにじみ出ているようだ。

 

100年の沈黙を破り、突如現れた超大型巨人と、人をむさぼり食う巨人たち。それは、最新の映像技術とアナログの技法を用いて魅せた。映像と舞台上のキャストの動きをリンクさせ、巨人の非道ぶりを描く一方で、人力でも超大型巨人の顔や手を動かし、ダイナミズムを発揮する。客席まで巨人の手が届きそうな瞬間もあり、前方の座席では思わず体がのけぞってしまうかもしれない。様々な技法を駆使して表される巨人は、舞台人の叡智の結晶でもあり、息を飲む迫力に圧倒されながらも、そのアイデアや見せ方に感動を覚えた。

 

原作から支持されている各キャラクターの名台詞がどのように発せられるか、どの場面を取り込んでいるのか、目が足りない!と思うほど隅から隅まで見どころばかり。あっという間にエンディングを迎え、ハッと我に返る。エンディングのキャスト全員によるパフォーマンスも躍動感があり、時間を忘れるほどの没入感を満喫した。

 

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本作は19()まで大阪・オリックス劇場で公演後、114()から24()まで東京・日本青年館ホールで上演される。

(取材・文:岩本和子)

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