いじめに遭った中学生たちを描いた「かがみの孤城」、小学生男子の目線で描く「ぼくのメジャースプーン」、辻村深月の人気作品2本立てで送る「辻村深月シアター」。作・演出の成井豊さんと「かがみの孤城」で主人公・こころを演じる田野優花さんの、作品に向き合う想いとは......。
――田野さんは、これまで2作品同時上演という経験は?
田野 今回が初めてです。どちらもシリアスな内容なので、役者のメンタルも一緒に引っ張られそう(苦笑)。でも楽しみですね。
成井 2本共出る人は2役を演じてもらいますけど、どちらかがきつかったら、もう一方は演じ分けという意味も含めて遊べる部分のある役に。だから田野さんは「かがみの孤城」のこころは相当きつい役だけど、「ぼくのメジャースプーン」では遊びも入れて楽しんでほしいと思います。
――田野さんをはじめ、今回初参加のキャストに期待することは何でしょう。
成井 初演はコロナ禍が始まったばかりでしたが、初日近くに陽性者が出て。幸いほかの人たちは濃厚接触者には指定されなかったので、アンダースタディに急遽入ってもらって3日くらいの稽古でどうにか初日を開けたんです。
田野 大変だったんですね......。
成井 とても評判が良かったので、それは嬉しいけれど、もっと落ち着いて、ちゃんと集中してやりたかったという気持ちもありました。でも再演って下手すると縮小再生産になってしまう可能性があるから、メンバーはある程度変わったほうが良い。まずは、自分の感性に従って「これだ」と思うものをやってくれれば良いと思います。それだけで初演からのメンバーにとっては新鮮なはず。
田野 私はこれまで、ミュージカルを多くやってきました。もちろんすごく楽しいし、歌もダンスも芝居も好きですけど、芝居だけで表現するメッセージ性のある舞台をやりたいという気持ちが強くなっていたところに、今回のお話をいただいたんです。だからすごく嬉しかったですし、家族も原作小説を買って「すごく楽しみにしてる」って言ってくれて。「がんばらなきゃ」って思いますね。
――これから皆さんで創り上げる舞台が楽しみですね。
田野 今まで自分が経験してきた感情を大切にしながら、脚本を通してお客さまに届けたいと思います。
成井 僕にとって、辻村さんの作品は主人公が物語の中で経験するひりひりしたリアルな、切実な思いがたまらなく魅力的なんです。2作品共、少女と少年それぞれのものすごく切実な思いが描かれているので、ぜひ両方観てください。
<公演情報>
辻村深月シアター 舞台「かがみの孤城」「ぼくのメジャースプーン」
【東京公演】
2022年5月20日(金)~5月29日(日)
サンシャイン劇場