「マリアージュしちゃってる!」『成井豊と梅棒のマリアージュ』座談会

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『成井豊と梅棒のマリアージュ』が1217日(金)から27日(日)まで東京・サンシャイン劇場にて上演中です!

※公演概要はこちら:http://napposunited.com/mariage/

plat de 成井豊】と【plat d' 梅棒】の2バージョンで上演されるこの公演。先日、ぴあニュースでもお伝えした【plat de 成井豊】の通し稽古後、「演劇集団キャラメルボックス」(現在活動休止中)の代表である成井豊さんと劇団員の原田樹里さん・阿部丈二さん、「梅棒」の遠山晶司さん・天野一輝さん・野田裕貴さんにお話をうかがいました。

*****

――初めて【plat de 成井豊】の通し稽古を終えて、作・演出の成井さんはいかがでしたか?

成井 今日は面白かったですね。役者たちがみんな達者なので、昨日までの稽古よりもさらに良くなっていて。何カ所か「ああ、それ、そうやるんだ!」と驚かされたりもして。作者としては大満足な通し稽古でした。演出家としては「もっと」と思いますけどね(笑)。

――『彼女の空に雪が降るまで』という作品は、成井さんにとって約2年ぶりのオリジナル作品で、全7作品(各話15分)の連作短編集になりますね。

成井 なにしろ連作短編集というのが、59歳にして初めての経験で。私は脚本を書くことは大嫌いだけど今回は苦しまなかった......と言えばうそになりますが(笑)、でも、書いて楽しかったし、手ごたえもありました。一つずつの話を工夫する楽しさがあったし、野田くんに演じてもらった和彦は作家になる男で、私も作家の端くれですから、そうとう自分の体験や想いを盛り込んで書いたんです。そういった意味でも、出来不出来ではなく「書けたな」という手ごたえはありました。

――出演者の皆さんは通し稽古を終えてどのように感じていらっしゃいますか?

阿部 コロナ対策もあって、それぞれの話を別の時間で稽古していたので、今日通しで観て、こういう話なんだなと初めて気づかされるところがありました。この作品は(成井作品の特徴でもある)SF要素が全然ないけれど、それでもやっぱり成井さんの作品だなと感じましたね。

――というのは?

阿部 「時間」と「好き」という気持ちがテーマになっている気がして。失う時間、もう一度取り返せる時間、人以外にもいろんなものに対する好き......。タイムトラベルものではないけどすごく成井さんっぽい作品だし、キャラメルボックスのテーマにもなっている「人が人を想う気持ち」というものがたくさん入っていました。久しぶりに成井さんの世界を堪能できるなという思いでした。

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――主演の原田さんはいかがですか?

原田 【plat de 成井豊】は、7作中6作がふたり芝居がメインなので派手さはないんです。【plat d' 梅棒】がバンバン派手なので、こちらの作品はお客様にどう楽しんでいただこうかと実はけっこうずっと考えていました。でも今日観ていて、いろんな登場人物のいろんな感情がバンバン出てきて、そういう感情のダイナミックさでお客さんを巻き込んでいけたらいいんだろうなと思いました。登場人物みんながなにかをがんばってるし、お客様にはすごく共感していただきやすいと思います。

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遠山 僕は今日、通し稽古を観て「いいなあ~」と思いました。成井さんならではの作品で、どのお話も涙腺をガリガリ刺激されて、涙ぐみながら観てしまいました。ふたり芝居でこれだけ豊潤な世界を醸し出すことができる成井さんの作・演出、そしてキャラメルボックスの方々のお芝居。この少人数でこれほど感動させられるということに、羨ましいなという気持ちがあります。その中で、手前味噌ではございますが、うちの野田が!普段、梅棒の公演では台詞を使わずに演じている野田が!喋っても、こんだけ、ね?

野田 (恐縮している)

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遠山 すごく誇らしい気持ちになっております!僕らも出演しますから、そこで足を引っ張らないようにしなきゃなと思いました。

――野田さんは、メインの大切な役柄を演じられていますね。

野田 僕は今日初めて自分が出ていない作品も生で拝見して、すごく面白いし、胸も熱くなりました。自分もちゃんとこの作品に加われるようにならなきゃって、改めて思いましたし、すごく素敵なものがこんなふうにありありと立ち上がっているんだって体感できたので、すごく本番が楽しみです。これからの本番までの稽古の時間を大事に過ごしていきたいです。

天野 僕は出演者でもありますが、企画者として、これが観たいというのが形になっていて、本当に面白くて。ほとんどの作品は舞台上にいるのは、たったふたりなんですけど、作品の一つひとつで繋いできたバトンのようなものが、どんどんどんどんパワーを増しているなと感じました。

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――要素としてはすごくシンプルな作品ですよね。

阿部 実はこの作品は、「いつでも、どんな場所でも、少人数で上演できる作品」なんです。舞台って、基本的には場所、道具、複数のキャストなどいろんな要素が必要ですが、この作品はふたりいればできるので。

成井 僕ははじめ役者たちに「"出前演劇"をつくりたい」と言ったんですよ。例えば震災などの大きな災害があった時に、役者に何ができるのか。演劇人に何ができるのか。そういうことを考えてつくった作品です。普通、芝居を観てもらうためにはいろんなものが必要になってしまうけど、そうではなくて、身体ふたつだけでどこでも演じられる。街頭でも体育館でも、どこでも演じられるものをつくっておけば、いざというときにやれる。そういう"出前演劇"をたくさんつくって、キャラメルボックスの引き出しに入れておくといいんじゃないかと思いました。それでなるべく道具を使わないものをわざと書いたんですね。だから7本中3本は道具もなしです。それと、梅棒さんが派手なので、対抗するにはシンプルでいったほうがコントラストが生まれるんじゃないかなって。

――確かに。逆に両者の共通点はどのようなところですか?

成井 "役者の身体でみせていく"という部分は共通していると思います。どうして私が梅棒をこんなに好きなのかと言うと、やっぱり動いて感情を表現してくれるからなんですよ。それは舞台の面白さでもあります。映像でそれをやったら気持ち悪いけど、舞台だったら、思いきり身体を動かして感情表現するのは面白いし気持ちいい。そこが我々の共通点なんじゃないかなと思います。

――梅棒メンバーとして成井さんの作品に参加して、野田さんはどのように感じていますか?

野田 キャラメルボックスの皆さんの想いを伝える強さみたいなものに、自分はすごく惹かれるし、好きなんだなって、今日も観ていて思いました。もちろん言葉の力もありますが、それだけじゃない、気持ちがすごくあるから、舞台上で動いた時に本当に伝わってくる。そのすごさを、「これだあ」と思いながら観ています。そこにちょっとでも近づけるようにがんばりたいなと思っています。

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原田 プロデュース公演で、成井さんの作品を、これだけキャラメルボックスの劇団員がメインでやるのは初めてだと思います。キャラメルボックスの看板を背負って出ているような気持ちがあるので、劇団の公演ではないですけど、初めて観ていただく方にも「キャラメルボックスってこういうのなんだ」と思っていただけたらなと思いますね。

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――【plat d' 梅棒】の魅力も教えてください。

遠山 僕、個人的には、原田樹里さんを観てほしい!

原田 (立ち上がって)えー!!

一同 (笑)

遠山 僕らの公演は【plat de 成井豊】が開幕した5日後に開幕するのですが、あれだけの芝居を見せた後の、梅棒×原田樹里のマリアージュをぜひとも楽しんでいただきたい!

天野 【plat de 成井豊】では見られなかった樹里さんを、僕らがお見せします!

原田 なにそれなにそれー!

一同 (笑)

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――遠山さんは【plat d' 梅棒】で主に作・演出をされますが、どのように感じていらっしゃいますか?

遠山 僕ら梅棒は台詞を使わずに物語を表現していく作風なのですが、キャラメルボックスの方々とご一緒して、想像を超えた力を感じています。言葉がなくても身体で発するものがあって、それを音の中でリズミカルに発している。すごいパワーを持った方々なので、そのマリアージュをぜひ観ていただきたいです。そして4作中1作は成井さん作・演出の会話劇『CROSSROADS』を梅棒でやらせていただきます。僕らも喋るんだぞ!っていう.........泥臭い僕らの俳優魂を見せられるように!がんばりますので!!ぜひとも期待して!!!ください!!!!!

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一同 (笑)

野田 梅棒の4作品はどれもカラーが違っていて、僕らが喋るというのもそうですし、それ以外でもいろんな梅棒が見られると思います。そういう機会は初めてに近いと思うので......

遠山 (唐突に)うちの野田くんが!すごくかわいいですから!!!

一同 !?(笑)

野田 (笑)。いろんな役とか、いろんな格好とか、やりますので(笑)。ただただ楽しみに来ていただけたら嬉しいなという感じです。

天野 野田も言ったような、フラットになにも考えずに観て「ああ面白かった」と思ってもらえる作品づくりというのが僕らの根幹にあります。そこは実はキャラメルボックスさんと共通しているところなんじゃないかなと僕は勝手に思っていて。僕らの公演は後半ですが、成井さんに書いていただいた『CROSSROADS』は、梅棒とはまた違う手法でグッと引き込まれる作品で、観ると必ず【plat de 成井豊】が観たくなると思います。そういう方は、2627日公演は昼と夜で両バージョンが上演されるので、そちらでぜひ観ていただきたいです。

――キャラメルボックスの皆さんは【plat d' 梅棒】に参加してみてどうですか?

阿部 梅棒さんの、誰が観ても入り込めるキャッチーさはとにかくすごいです。ダンサーさんや役者さんの表現力もすごいんですけど、そこにさらにエンタメ性もあるのが素晴らしいというか......リスペクトしかない。そういう中で自分は何ができるんだろうということを毎日考えています。梅棒さんの作品は観ると絶対元気になると思うんです。僕自身も、参加しているだけでもすごく元気がもらえますし、フィジカル的にも元気な自分に戻りたいっていうような勇気ももらっています。そういうエネルギーが必ず伝わる作品だと思います。

原田 (阿部と)全く同じです。とにかく面白い。本当に面白い!自信を持って、声を大にして言えます。梅棒を観たことない人は絶対観たほうがいいし、梅棒ファンの人も絶対観たほうがいい!『CROSSROADS』は、梅棒ファンの人は見ない手はないっていうくらい、皆さんめちゃくちゃよいです!カッコいいんですよ!キャラメルボックスの役者がやったらあの空気感は出ないと思う。男らしくて、みんな。

阿部 ばかにすんなよ!(笑)

一同 (笑)

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原田 いやでも、醸し出す雰囲気が全然違うんですよ!あの姿を観たら、みんな好きになっちゃうと思います!

阿部 でも本当に、僕たちにとって成井さんの世界観ってとても好きでとても大切なものなんですけど、『CROSSROADS』で梅棒の皆さんがそこに対してすごく真摯に向き合ってくださっていることが感じられて、とても嬉しいし感謝しています。

天野 そっくりそのまま、いや、何倍にもしてお返ししますよ!

遠山 皆さんめちゃくちゃ練習してくれるんですよ!

原田 (笑)。愛し合ってるな~。マリアージュしちゃってる!

――『CROSSROADS』の作・演出をされる成井さんはいかがですか?

成井 前提として、本人たちは認めないんですけど、僕は梅棒のみんながカッコよく見えるんですね。その人たちに僕が脚本を書かなければいけないときに、カッコ悪く見えちゃうとまずいわけじゃないですか。カッコいいんだから。でも私は、カッコいい男を書き慣れてないんです。カッコ悪いヤツが一生懸命がんばって、結果的に2時間後にカッコよく見えるかもしれないものを書きたい人なので。だから、"20分後(上演時間)にみんながカッコよく見えるもの"にしようと思って書きました。先日、通し稽古で観た時、みんなカッコよかったのでホッとしました。それは本当に、阿部が言ったように、真摯に取り組んでくれたからで。ちょっとしたダメ出しも有効に利用してくれて、ダメ出し聞きすぎなんてこともあるくらいなんですけど(笑)、とにかく真摯に取り組んでくれました。だからこそ『CROSSROADS』は高い質まで来ましたね。稽古は残り一週間ありますが、あとは精度を上げるだけです。そしたらお客さんはきっと満足してくれるんじゃないかと思います。今は、ホッとしているところです。

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plat de 成井豊】バージョンは1217日(木)から、【plat d' 梅棒】バージョンは1222日(火)から、共に1227日(日)までサンシャイン劇場にて上演中!

文:中川實穂

撮影:川野結李歌

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