【ダンス オブ ヴァンパイア 2019 #2】
ロマン・ポランスキー監督映画『吸血鬼』をもとに、『エリザベート』の脚本家であるミヒャエル・クンツェが脚本・歌詞を手掛けたミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』。
吸血鬼のクロロック伯爵と、ヴァンパイア研究の権威・アブロンシウス教授の対決を軸に、一風変わった登場人物が入り乱れ、笑いと恐怖(?)の渦の中、熱狂のフィナーレへとなだれこむ......。
日本でも2006年の初演以来、観る者をとりこにし、劇場を熱く賑わせてきました本作が今年、4年ぶりに上演されます。
開幕も近付く中、今回新キャストとしてアルフレート役に挑んでいる相葉裕樹さんと東啓介さんにお話を伺ってきました。
アルフレートは、アブロンシウス教授の助手で、ちょっと気の弱い青年。
教授のお供でやってきたトランシルヴァニアで泊まった宿屋の娘、サラに一目惚れしますが......。
アルフレート役について、共演者の皆さんとのエピソード、そして2019年版の『ダンス オブ ヴァンパイア』について、たくさんお話してくださいました!
◆ 相葉裕樹×東啓介 INTERVIEW ◆
● 稽古に入り、現在の心境は...
―― おふたりは今回が『ダンス オブ ヴァンパイア』初参加ですね。すでに稽古に入って、いま、率直にどんな感想を抱いていますか?
相葉「まだ立ち稽古に入ってから1週間たっていないのですが、(演出の山田)和也さんが丁寧に説明をしてくださるので、わりと「どうしよう、わからない!」という感じにはなっていないですね」
東「そうですね」
相葉「でもまだ1周目(まず動いてみる段階)! という感じですので、やっぱりどこか頭で考えて動いちゃっているんですが、これがもっとちゃんと身体に染みこんできたら、自由に動けるんだろうな~。まだ、段取りを追っちゃっています」
東「すんなりとはいかないですね」
―― この作品、ほかの作品に比べてきっかけとかが細かくないですか?
相葉・東「細かい!」
東「むずかしい!」
―― ですよね。ソングスルーではないのに、ずっと音楽が後ろで流れている印象があります。
東「この音楽の間にここからここまでやる、みたいなことが多くて......すごいです」
相葉「Xタイム(あるきっかけまで繰り返される音楽)じゃないんだ、音楽にあわせて芝居をしないといけないんだ......というのは、やっていてすごく感じました。全編そうなんだ、って。それも含めまだ全体像を把握しきれていないので、もうすこし慣れてきたらアルフレートとして楽にやれるかな、と思っています」
▽ 相葉裕樹
―― とはいえ、せっかくお稽古に入ってからのインタビューですので、実際に動いてみて、演じるアルフレートの印象が変わった......とかがあれば、ぜひお伺いしたいです! アルフレートは、アブロンシウス教授の助手で、ちょっと気弱な男の子ですね。
東「『ダンス オブ ヴァンパイア』はもちろんコメディでもあるのですが、今回コメディ要素を抑えて、リアルなドラマとして山田さんが演出してくださっているので、個人的にはすごくやりやすいです。なんと言うか、オーバーすぎない。アルフレートとサラの関係にしても、サラがアルフレートをはねのけるのではなく、わりと1幕は順調に進んでいきます。まあ、アルフレートが空回りしているのは間違いないですし、いいようにあしらわれてるし、お客さまからすると「アルフレート違うぞ!」って言いたくなっちゃう感じではあると思いますが。でもそれもこちらは大真面目にやっているので、嘘がない男の子像になっているんじゃないでしょうか」
相葉「そうですね、今のところ無理せず、思ったままやれているなと思います。アルフレートって素直で、でも自信があるようでない青年。そんな子が恋に目覚めて頑張る、という感情の流れが、自分の中で無理がなく進んでいます。ただ、音楽が多いのですが、自分が歌っていない時間......誰かが歌っているときにどう動くかというところで、アルフレートらしさはもうちょっと探れるかな、と思っています」
―― アルフレートはサラに恋をするわけですが、あれは初恋ですか?
東「初恋です!」
相葉「そうなんですか(笑)」
東「ハハハ! どうなんでしょうね。でも運命的な出会いはそれまでにはなかったんでしょうね。マグダに出会ってドキドキしていますが、あれは胸に対してのドキドキなので」
相葉「だから男の子として、健全で正常ですよね。女の子に興味があるし、ただそのきっかけがそれまでなくて、サラに会ってドキンと胸打たれるものがあったんだな、という」
▽ 東啓介
●「山口祐一郎さんにハグされると、何かが浄化されます」(相葉)
―― そして、主演がミュージカルの帝王、山口祐一郎さん。おふたりとも山口さんとは初共演ですね。どんな方ですか?
相葉「祐一郎さんだぁ~! という感じです。"初めて組"だから稽古に入る前はすごく緊張していたんですが。どんな方なんだろう? と」
東「そうですね、すごく場を和ませてくださる方ですよね」
相葉「穏やかな空気が流れていて、すごくその雰囲気に救われました」
東「気さくで、毎回挨拶はハグだったり。素敵です」
相葉「お~は~よ~、ってハグしてくれるんですよ。ほっこりするし、何かが浄化されます(笑)」
東「わかります、わかります!」
相葉「悪いものが抜けるよね(笑)。じゃあ頑張ろっ! って気持ちになります。和也さんも優しいですし、先輩方がみなさん楽しい。まわりの方に恵まれています」
―― コンビを組む、教授役の石川禅さんも大先輩ですね。
東「禅さんも、素敵! もう、喋りだしたら止まらない、面白い(笑)!」
相葉「面白いですね」
―― どんなことをお話されるんですか?
東「本当になんでもないことですよ(笑)。さっき来る時にアレがこうこうでこれだったんだよー!......みたいな(笑)。でもその間に「次のシーン、こうなるといいと思うからこうしてみようか」とか「こっちの方がいいかな」とかが挟み込まれてきます」
相葉「そう、アドバイスをさりげなくくださる。優しいですよね」
東「とても周りを見ている方ですよね。しかも、まだまだ新しいことにチャレンジしている、今までの教授とはまた違う色を出そうとしていらっしゃる。そんな中でも僕らにも気を配ってくださる、本当にありがたいです」
―― この先もどんどん教授との冒険が続いていきますね。
相葉「急いで追いつかないと!」
―― それにしてもこのミュージカル、アルフレートはかなり忙しいですよね!
東「一生、出てますね!」
相葉「一生(笑)。うん、一生出てるね」
東「今回はセットが変わるので、たとえば部屋の中とか、以前だったらシーンによっては見えなかった場所が今回はオンステージになってたりもします。そこでもお芝居をしていないといけなかったりするので、本当に忙しい」
相葉「そうそう、でも今回セットが変わったので、ミザンス(動き)を作り直しているんです。そういう意味では心機一転というところもあり、"もう一度作り直そう" と稽古が進んでいっているので、僕たちとしてはありがたい」
東「それは本当にそうです!」
相葉「これが、前の形をなぞってどんどん進んでいく稽古場だったら、ここはこうして、ああして......って、なぞるだけで精一杯になってしまう」
東「それだと、自分の色が出せなくて終わりそうですもんね」
相葉「そうだよね~」
―― アルフレートが恋するサラちゃんは、神田沙也加さんと、桜井玲香さん。
東「ふたりとも、可愛いですね~」
相葉「いや、お美しいです!」
東「前回から参加している神田さんは頼りがいがありますよね」
相葉「そうだね。アルフレートが神田さんに引っ張られている。本来はね、男性が引っ張ってあげなきゃっていうのはあるんですけど、まあ、ヘタレだからいいのかなーって思ったり......」
東「確かに、振り回されていく......くそぅ!」
相葉「まずは、引っ張っていただこうよ(笑)」
東「あと、明日ぼく久しぶりに稽古場でたっくん(植原卓也/ヘルベルト役)に会えるのが嬉しい!」
相葉「わかる。たっくんも初参加組だから心強いよね。稽古場、皆さん楽しいんです、コングさん(コング桑田/シャガール役)も面白いし」
東「コングさんはザ・ムードメイカーですよね。意外と天然なところも可愛い」
相葉「大きい声ですよね~。コングさんを見ていると、シンプルに大きい声ってそれだけで笑っちゃうんだなって思う(笑)」
―― おふたりが楽しみながら作品に臨めているのが伝わってきます! この作品、ダンスシーンも見どころのひとつだと思うのですが、稽古場で観ていても気分があがりました!
相葉「カッコいいですよね。やっぱりこのミュージカル派手だなって改めて思います」
東「ね!」
―― あそこまで踊られると、自分も踊りたくなりませんか?
東「全然(笑)!」
相葉「これだけたくさん出て、踊りも追加されたら死んじゃいます(笑)」
● 相手役より重要な、ダブルキャストの相性
―― ところで今回おふたりはダブルキャストですが、普段はどんな感じなんですか?
東「めっちゃ喋ってます!」
相葉「とんちゃん(=東)はなんか、"24" って数字が腑に落ちないんだけど」
―― ああ、年齢が。
相葉「年齢と体格が一致してない感じがしていて」
東「アハハ!」
相葉「年下とも感じていないし、後輩とも思っていない(笑)。だから "同志" かな、なんでしょうね」
東「でもいっぱい話ができるっていうのは嬉しいです。稽古場の席が隣で、ずっと無言だったらどうしよう~!ってなりますし」
相葉「とんちゃんが本当に人懐っこいし、オープンマインドな性格だから。僕は自分の中に入っちゃうタイプなんで、ありがたいです。ダブルキャストって結構相性が重要になってくる。相手役より相性が重要かもしれません」
東「話し合って、よりよい作品にしようという意識がお互いにいい作用としてはたらいていると思います」
―― そういえば東さんは、帝国劇場に立つのが夢だと仰っていたような。
東「はい、30歳までに!」
相葉「余裕で叶えてるじゃん。あと6年もある」
―― 相葉さんから、帝劇に立つ上での心構えのアドバイスなどは。
相葉「ないですよ~! いや、ないことはないですが、先輩ヅラして僕が言えるものでもない......! 僕も「立たせていただいている」という感じですので。ただ帝劇の作品は帝劇内の稽古場を使えるので、それがいいなって思います。稽古の途中で稽古場所が変わる作品などもありますが、そうすると結構ドキドキするんですよ(笑)、魂が追いつかないというか」
東「猫みたいですね、環境になれるまで時間がかかる(笑)」
相葉「そう、猫みたいなの。だから通い慣れた場所でできるっていうのは安心」
東「このままの環境で本番いけるんだ、というのは心強いです」
●「フィナーレナンバーをただ楽しく歌いたくはない」(東)
―― でもこの話、アルフレートの成長譚という側面もありますし、お客さんはきっと彼に心を沿わせて観る人も多いと思うんです。
相葉「とりあえず今は、一生懸命頑張れば頑張るほど、アルフレートになっていくんじゃないかな、って思っています。アワアワしている方が」
東「確かに」
―― 彼は教授の弟子ではあるのですが、教授とは違って伯爵の闇の世界にちょっとずつ惹かれていってしまうところもある。
相葉「誘われちゃいますね」
東「僕、一番盛り上がるフィナーレナンバーを楽しく歌いたくないと思っていて。結構、歌詞がダークというか、曲がっている。『モラルもルールもまっぴら』とか。だから世の中に対して反対の行動を起こしているという暗い部分を残していきたいです。大団円でちゃんちゃん、じゃない」
相葉「和也さんが、以前は教授をひょうきんに描いていたけれど、今回は厳しくストイックに作っていきませんか? と禅さんに仰っていて。だからその教授を尊敬しているアルフレート、ということで、おのずと僕らの役作りも変わってくるんだと思います」
東「結構新しい作品になりますよね、たぶん。いい意味で観る方を裏切りたいです」
相葉「アルフレートは最後『......悪くないね』ってセリフを言うんですが、それについても考えてしまいます」
東「そこ、面白いですよね! 僕、台本を読んでまっさきに『悪くないね』ってどういう意味なんだろう? って考えました。『ダンス オブ ヴァンパイア』という作品の中で、一番謎の言葉だと思いました。だってヴァンパイアを倒すって明確な意思をもって生きてきた人が、恋人を追って、最後は『悪くないね』っていう曖昧な答えを出すんです。なんなんだろうこの感じは、と。成長する中で変わったのか、この子とだったらヴァンパイアになってもいい! という思いだったのか、それとも別の人格になってしまったのか。すごく深読みできる作品だなーって。まだ結論は出ていないのですが」
相葉「もちろん、最後は熱狂的に歌って踊って......というのは決まりではあるんです。だから、お客さまがどう感じ取っていただけるかはお客さま次第なのですが。腑に落ちてもらえるところまでいけばいいかな。そして最後に発散! という。まぁでも......まだ経験してないのでわからないんですが、(ラストシーンは自然と)楽しくなってしまうような気がしています」
東「それも、めっちゃわかります」
相葉「光るブレスレットみたいなものが配布される日もあるらしいですよ?(※ルミカライトを光らせてカーテンコールで盛り上がろう!という企画。対象日は公式サイトでご確認を!) 今回はよりシリアスな部分はシリアスに......ということになると思いますが、楽しいことには変わりはないですので! 手拍子もしていただきたいですし、スッキリ腑に落ちるところまで観る方を運んでいけたらと思っています」
東「はい!」
取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)
【TdV 2019年版バックナンバー】
#1 サラ役 桜井玲香インタビュー
【公演情報】
11月5日(火)~27日(水) 帝国劇場(東京)
12月15日(日)~21日(土) 御園座(愛知)
1月1日(水・祝)~7日(火) 博多座(福岡)
1月13日(月・祝)~20日(月) 梅田芸術劇場メインホール(大阪)