元宝塚歌劇団のトップスターで、退団後もミュージカルを中心に精力的に活動を続けている湖月わたるさん。そんな彼女の舞台生活30周年を記念し、タイプの異なるふたつの作品が7月と10月に上演されます。Vol.1としてまず幕を開けるのが、『ドキュメンタリー・ミュージカル わたるのいじらしい婚活』。湖月さんが婚活!? そもそも"ドキュメンタリー・ミュージカル"とは? その秘密を探るべく、稽古初日の顔合わせにお邪魔させていただきました!
本作に携わるスタッフ、キャストが初めて一堂に会するこの日。湖月さんを始め、脚本の竹村武司さん、作詞・演出の永野拓也さん、出演者の朝海ひかるさん、廣瀬友祐さん、飯野めぐみさん、可知寛子さん、高橋卓士さん、宮島朋宏さんとスタッフ陣が顔をそろえます(迫田孝也さんはお休み)。まずはそれぞれの配役などが紹介されますが、今回湖月さんと朝海さんは"本人役"で出演。「本人役の湖月わたるさんです」とのかつてない紹介に、稽古場はワッと笑いに包まれます。
そして脚本の竹村さんが挨拶。竹村さんはテレビの放送作家であり、『山田孝之の東京都北区赤羽』なども手がける奇才です。「僕にはひとつ信念があって、面白いか面白くないかより、新しいか新しくないかにすごく価値を感じる人間です。その点、ドキュメンタリー・ミュージカルはまだ誰もやったことがないものですし、だからこそやりがいもあるなと。そしてこれをやるのは全員初心者で、つまり全員がビギナーズラックを持っているということ。そういう時には絶対に奇跡の瞬間が訪れるので、今回もそんな奇跡待ちをしたいなと思います(笑)」
続いて演出の永野さんの挨拶へ。「僕もひとつ大事にしていることがあって、オリジナルをつくる時、その人たちが集まって意味のあるものにしたいといつも思っています。例えば湖月さんって、喜ぶ時『ヤッタ!』って言うんですよ(笑)。それがすごくチャーミングで。ただ男役のころの話を聞くと、覚悟が決まっているし、めちゃくちゃカッコいい。で、僕が舞台上に乗せたいと思っているのが、この振り幅であり、それはほかのキャストの方も同じで。だからぜひ皆さんのことをいろいろ教えてもらいたいですし、そうすることできっと愛おしくて、観てよかったって舞台になるんじゃないかと思います」
休憩を挟んでついに稽古開始。多くの舞台ではここでセリフを声に出して読む、"読み合わせ"が行われますが、今回は"ドキュメンタリー・ミュージカル"という特殊な舞台ゆえ、永野さんから舞台の説明がされまず。大枠としては、湖月さんは湖月さん本人役で出演。舞台生活30周年記念公演として、ファンの方にどんな舞台をお届けすればいいのか。悩んだ湖月さんは、宝塚在団中から縁があり"わたコム"コンビとして知られている朝海さんに相談します。そして題材を自らの"婚活"に決定。その過程を、映像、お芝居、歌をリンクさせつつ表現していくというものです。
本作では映像を多用するため、永野さんからはまず舞台機構についての話がありました。舞台のよさと映像のよさをかけ合わせたその手法は、想像するだけでもワクワク! キャスト陣からも「なるほど」と言った声が漏れます。また「エンターテインメントでありつつ、湖月さんが普段やられているようなことを舞台上に表現したくて」との言葉の通り、台本に書かれているエピソードの多くは、永野さんが湖月さんとのやり取りの中で実際に見聞きしたことばかり。ひとり"オードリー・ヘップバーンごっこ"をしているなど、
顔合わせ序盤ではまだ緊張気味だったキャストの皆さんも、永野さんからひと通りの説明が終わるころにはすっかり和やかに。さらにその表情は誰もが晴れやかで、本作に対する期待の高さが伺えます。中でも特に楽しそうだったのが湖月さん。そんな湖月さんの"いじらしい婚活"のゆくえとは? ファンならずとも気になる結末は、ぜひ劇場でご確認ください!
取材・文:野上瑠美子
撮影:石阪大輔