■『不徳の伴侶 infelicity』特別連載 vol.2■
作・演出家 荻田浩一が、盟友と呼ぶ音楽家 福井小百合と手を組んで贈る新作『朗読(クローゼット)ミュージカル 不徳の伴侶 infelicity』が、5月29日(火)から上演されます。
5月某日、その稽古場を取材してきました!
タイトルに "朗読ミュージカル" とありますが、俳優が椅子に座って手に持った台本を読む...という、一般的な "朗読劇" とは、まったく趣の違うものになりそうです!
(といっても、最近は多種多様な朗読劇がありますが...)
動く!
皆さん、けっこう動きます!
なんか、楽しそうです。
作品は、16世紀に実在したスコットランドの女王メアリー・スチュアートと、彼女の3度目の配偶者であるボスウェル伯ジェームズ・ヘップバーンの関係を軸に、陰謀渦巻く時代を描いた物語。
メアリー・スチュアートは生後6日でスコットランドの王位を継承、その後フランスの王妃となるも18歳の若さで夫を亡くし帰国、再婚を繰り返したのち故国を追われ、最後には血縁であるエリザベス一世により処刑されるという、波乱にとんだ人生を送ります。
メアリー・スチュアートは彩乃かなみさん、
ボスウェル伯は藤岡正明さん。
ふたりの立ち位置、距離もシーンごとにくるくる変わっていきます。
このふたりが "不徳"の関係なのですが......。
しかし、前半部分を拝見した感覚では、ものすごくドラマチックなラブロマンスに感じました!
メアリーととかく比較されて語られる同世代の女君主・エリザベス一世は、シルビア・グラブさん。
彩乃さんとシルビアさんの空気感の違い、声質の違いなども、メアリーとエリザベスの対比となって見応えがあります!
でも稽古場ではこんな笑顔のお二方。
そして音楽が素晴らしい!
クラシックテイストに壮大で美しいものから、ロックにカッコいいものまで!
また、皆さんの歌唱力が素晴らしい。惚れ惚れします。
吉本真悟さんもまた、一風変わった存在です。
もちろん台本を手にセリフを読むところも多々あるのですが、やはり名ダンサーですので、踊る踊る!
冒頭から、不思議な存在感。
役柄としてセリフを発するときもあれば、役柄として踊るときもあり、さらに、何かの象徴として踊っていたり...。
ちなみに荻田さんは、この時の吉本さんの存在に対しては「反応する(見えている)人と、反応しない(見えていない)人がいていい」と他の方々に説明。
<物語を語っている>人には吉本さんが見え、<自分の世界に入り込んでいる>人には見えない、という作りのようで、そんなことから、なんだか現実と非現実のあいだに物語がたゆたっているような感じもしてくるのでした。朗読劇ならではの作り方です。
舘形比呂一さんと百名ヒロキさんは何かを企み中...!?
ふたりとも、すきあらば王位を狙おうとしている存在だったり、ちょっと腹に一物ある役柄を演じるところが多そうなのですが、妖しげなインパクトの舘形さんと、ピュアな笑顔で残酷な言葉を発しそうな百名さん、それぞれの"屈折"が面白い。
こちらの舘形さんは、メアリーの義兄、マリ伯。
メアリー女王に対し跪いていますが、心の中ではどう思っているんだろう...というような。
百名さんも複数演じていらっしゃいますが、こちらはメアリーの2番目の夫・ダーンリ。
「愛らしい」と語られるダーンリ、百名さんにとっても似合っているのですが、この人物も美しい外見とは裏腹に、なかなか腹黒いところもありそうです。
そして百名さんも、とってもカッコいいナンバーを歌っていらっしゃいました!
...と、稽古場の写真からも、「座って、読む」というだけではない朗読劇だというのが伝わるのではないでしょうか!
何よりも音楽が素敵です。
グランドミュージカル級の楽曲が次から次へとやってきます!
それを素晴らしい歌声で聴かせる、歌唱力抜群のキャストの皆さま。
これ、上演形態は"朗読劇"としていますが、ミュージカルファンは見逃してはいけない公演になるのではないかと思いました。
次回の稽古場レポートでは、もう少し役柄や時代背景についてご紹介します。
取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)
【『不徳の伴侶』バックナンバー】
# 荻田浩一の新作、彩乃かなみ&藤岡正明らで上演決定
# 彩乃かなみ×藤岡正明×百名ヒロキ インタビュー
【公演情報】
5月29日(火)~6月3日(日) 赤坂RED/THEATER(東京)