【ぴあ×パルコステージ特別企画 『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル 尾上右近密着取材vol.1】 尾上右近インタビュー&スチール撮影レポート

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歌舞伎界の新星であり、7代目・清元栄寿太夫を襲名したばかりの尾上右近さんが、『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル』で満を持して「三足目のわらじ」となる現代劇に初挑戦! 

げきぴあでは、そんな右近さんが初舞台を踏むまでの過程に密着!!

作品の魅力も存分に紹介しつつ、注目の若き才能がさらにステップアップしていく姿を皆様にお届けします!




NL0_2940.jpg≪尾上右近さん≫




2012年のピューリッツァー賞戯曲部門賞受賞作『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル』が日本初上演される。邦題に"スプーン一杯の水、それは一歩を踏み出すための人生のレシピ"とサブタイトルをつけられたそれは、様々な問題を抱えた人たちが、それぞれに自分の人生を取り戻していく物語だ。

戯曲を手がけたのは、ミュージカル『イン・ザ・ハイツ』の脚本で知られるキアラ・アレグリア・ヒュディス。今作の上演を熱望したG2が、自ら翻訳し、演出を担当する。

そして、主演に歌舞伎界の新鋭・尾上右近を据え、篠井英介南沢奈央葛山信吾鈴木壮麻村川絵梨陰山泰といった実力派が集結。珠玉の物語を紡いでいく。まずそのストーリーを紹介しておこう。

■STORY■

フィラデルフィアのサブウェイで働いているエリオット(尾上右近)は、25歳のプエルトリコ人。少し足を引きずっているのは、イラク戦争に出兵して負傷したためだ。戦場でのあるできごとによって身体ばかりか心にも傷を負い、帰還後はモルヒネ中毒にもなった。人生の目的を見失ったエリオットの良き理解者である従姉弟で大学の非常勤講師のヤズミンも、離婚調停中で人生に行き詰まっている。

そんなとき、育ての母であり伯母であるジニーが亡くなったことをきっかけにエリオットの周りの人間関係がつながり始めた。中心にいるのは、エリオットの実の母でドラッグ中毒者のサイトを運営しているオデッサ(篠井英介)だ。彼女自身も元中毒者で、そのためにかつて幼い娘を見殺しにした過去があるが、今は中毒にあえぐ人々を救おうとしているのである。

そして、そのサイトに集まっている多種多様な人間たちにも、リアルな世界での関係が生まれていく。他者とつながりたいと願いながら、拒絶し、葛藤し、その末に新たな人生の行方を見つけていく人々。そのありようは、現代社会の光となり得るか!?

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

イラク戦争、ドラッグと、戯曲の背景に登場するのはアメリカ現代社会の闇である。しかし、登場人物たちが交わす会話は(主にネット上で)、今の日本に生きる私たちと無縁なものではない。おまけに、実は日本人も日本も登場するという、親近感を覚えずにはいられない戯曲なのである。 

げきぴあではこれから、主演の尾上右近に密着。日本初上演となる本作の魅力をどんどん深掘りしていく予定だ。

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆


第1回の今回は、スチール撮影に臨んだ右近さんのインタビューと撮影風景レポートをお届けする。

 
右近さんは、朗読劇『ラヴ・レターズ』の経験はあるものの、現代劇に出演するのはこれが初めて。もちろん現代劇のスチール撮影も初体験だ。だが、昨年のスーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』で市川猿之助の代役を見事にやり遂げた勘の良さと集中力を、ここでもいかんなく発揮。みるみる世界観を作り上げていった右近さんが演じるエリオット、早くも期待大である。

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▲「エリオット」を意識して(!)で用意したという
自前のお洋服でインタビューにもお答えいただきました。

■スチール撮影レポート■

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▲スタジオに入ってまず撮影コンセプトの説明を受ける、真剣な表情の右近さん。

  

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▲白の衣裳から右近さんがイメージしたのは、白いキャンバス。「これから役と作品を自分たちで染め上げていくんだということを象徴しているような気がしました」

 

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▲歌舞伎ではめったにない目線を外しての撮影も新鮮だったとか。「歌舞伎では拵えをして100%役になって撮りますが、今回は、役と素の自分が半分半分でカメラの前にいました」。

 

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▲スタッフから求められたのは苦しい表情とハッピーな表情。「スプーン1杯の幸せを表現してほしいと言われたのが難しかったですね。苦しいほうは実際に息を止めたので本当に苦しかったです(笑)」。

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▲いよいよメインの撮影に。イメージは水中に溺れるエリオット。「薬物に溺れ、トラウマに溺れ、抵抗できない感じを意識していました。ただ、やりながら思ったのは、自分の意志とは別に身体は生きようとするものだなということ。抵抗する力が自然と働くことを、手足の微妙な動きで表現してみました」。その身体の表現力で、どんな写真ができあがるか。

 

★NL1_9491.jpg▲実際に水に濡れての撮影も行っていた。

 

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▲メイク室で自らどんどん濡らしていく右近さん。

  

イメージに近づけていくスタッフに囲まれて、「みなさんのお考えに乗っかって自分がどう応えられるか。そのちょっとしたやりとりに面白さを感じました」という右近さん。「それがそのまま写真に映っている気がするので、お客様の目に届いたときに楽しみなお芝居だなと感じてもらえればうれしいです」。

 

続いて、作品と役について聞いてみた。

●尾上右近 インタビュー●

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──現代劇に初挑戦されますが、出演の話があったときはいかがでしたか。

いずれは挑戦させていただきたいと思っていたのでうれしかったです。こんなに早いタイミングでというのは少し焦りましたが(笑)。でも、本当に歓喜の思いです」

  
──なぜ現代劇をやりたいと思われていたのでしょう。
「これまで歌舞伎だけを修行してきましたが、現代の役者としてもっといろいろなことを経験して、視野や幅を広げていきたいという気持ちが強かったからです。そのなかでも現代劇はぜひやってみたいことでした。歌舞伎は、衣裳、かつら、お化粧、小道具、大道具といったものによってデフォルメされた世界です。でも現代劇は、そういう演じるにあたって自分を守ってくれるものがないに等しいですから、そんななかでいかに役として存在できるのか。見当がつかないからこそ挑戦してみたかったんですね」

 
──しかも、現代劇のなかでもいきなり翻訳劇に挑戦することになりました。翻訳劇をご覧になったことはありましたか。
「何回かあります。歌舞伎にしか目を向けていなかった自分が、ここ2年ぐらい、現代劇、翻訳劇、ミュージカルと、本当にいろんなものに触れるようになっいろんなものに興味を持ったり手を伸ばしたりするほど、自分自身がわかってくる感覚があるんです。自分に足りないものを思い知ったり、自分自身にどう向き合っているのかが見えてきたり

 
──実際に演じてみると、さらにいろんなものが見えてきそうですね。
「はい。すごくハードルの高い挑戦になるとは思うんですけど。でも、その壁を打ち砕いていくぐらいのつもりでやりたいと思っています。基本的に僕は、大変なことが好きなタイプで、大変なほう大変なほうを選びたがるところがあるんです(笑)。それはたぶん、本当はすごく恥ずかしがり屋で小心者だからだと思うんですが。そんな自分ではダメだ、そんな自分を超えていきたいっていう気持ちが、大変なほうを選ぶ原動力になっているんじゃないかなと思います。だから今回も、不安を力に変えるということが出来ればいちばんいいなと思っています」

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──戯曲を読んだ感想はいかがですか。
「エリオットというお役に関しては、彼も僕も25歳、年齢が一緒というところでまず捉えてみました。そうすると、エリオットにすごく共感できたんです。もちろん、イラク戦争の帰還兵であるとか、ドラッグ中毒であるとか、直面している問題は全然違いますけども。でも、いろんなことがわかりつつあるけれども、どうしていいかわからない部分もあるっていう、まだ思春期が尾を引いているようなこの年代ならではの悩みとか迷いとか戸惑いは僕にもあって。どんな時代でも、どんな場所でも、変わらず人間というものに常につきまとっているものが、テーマになっていると思いましたね」

 

──ともすればかけ離れた世界に見えますが、私たちの話でもあると。
「はい。みんな誰しも生きていくのは大変だと思うんです。その大変さの理由が、エリオットの場合はドラッグであったり戦争であったりするというだけで」

 

──歌舞伎でいろんな時代のいろんな人物を演じてこられたからこそ、その戯曲の核心が見えるのかもしれませんね。
「それはあるかもしれないですね。歌舞伎も結局最後に残るのは人の心ですから、無意識のうちに心というものに敏感になっているのかもしれません」

 

──翻訳と演出を手がけられるのはG2さんです。
「(取材時の3月9日の時点では)まだお目にかかっていないのですが、作品を拝見したことはあるんです。なかでも印象に残っているのは、作・演出をされた新作歌舞伎『東雲烏恋真似琴』('11年8月歌舞伎座公演)。人形に魂が入るっていうようなお話を観ながら、やっぱり人の心についてすごく考えさせられた覚えがあります。社会がどれだけ発達しても人の心は発達しないのが面白いなと」

 

──苦しみというものもなくならないし。
「そして答えが出ない。だからこそ演劇というものがあるのだと思います。一旦日常を忘れてその世界に入り込み、そのうえで改めて描かれているメッセージを考える。それは歌舞伎でも現代劇でも変わらないことだと思うんです。だから、日常を忘れさせる世界を作って伝えるっていうことが、今回も大事になるんじゃないかなと思っています」

 

──実際、一旦観始めると没頭できそうな世界ですよね。
「そう思います。場面も場所もどんどん変わっていくんですけど、登場する人たちの心はつながり続けている。そのワールドワイドにつながっていく様が、速度といい、密度といい、すごく面白いと思います」

 

 撮影:イシイノブミ

 取材・文:大内弓子

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