―2人は、舞台初共演ということですが。
柿澤 竜也さんの舞台はもちろん何度も観ていますし、竜也さんの舞台の稽古場にも、何度も見学に行かせていただきましたけど、舞台での共演は今回が初めてです。
藤原 映画では共演したよね。
柿澤 はい。初めて出演させていただいた映画が竜也さん主演の『カイジ』だったんです。
藤原 僕も、カッキー(柿澤)のミュージカルは何度も観てます。『スリル・ミー』とか、
『フランケンシュタイン』とか。
柿澤 『デスノート』は観られなかったんですよね?
藤原 ちょうど忙しくてね。でも、WOWOWで放送された映像は観ました。あれだけ次々と大きなミュージカルの主演をやる人だから、カッキーは選ばれた人なんだと思います。
柿澤 いえいえ(笑)。『デスノート』のミュージカルをやったときは、竜也さんが主役を演じた映画版を何度も観て参考にさせてもらいました。
―稽古場での藤原さんはいかがですか?
柿澤 とにかく瞬発力が凄いんです。稽古場でせりふが変わっても、その場で
すぐに台本を離してやってしまう。あれは、できる人ほかにいないと思います。
藤原 離せばいいってもんじゃないけどね(笑)
柿澤 竜也さんが演じるアペマンタスは本当に凄くて、本当に勉強になります。自分は竜也さんより5歳下ですけど、あと5年でこの芝居ができるのかなーって考えてみても、やはりできないと思います。
―柿澤さんはいかがですか?
藤原 鋼太郎さんとも話してたんですけど、カッキーの演じるアルシバイアディーズは
とても難しい役なんです。アテネから追放されて、タイモンからも突き放されて、とてもストレスがたまる役だと思うんですけど、カッキーすごくいいですよ。迫力あるし、声は強いし。アテネに対する憎悪を抱え込みながら、演説をするシーンがあるんですけど、まるで今の世界情勢を言っているかのような演説に聞こえてくるんです。
柿澤 稽古に入る前に鋼太郎さんに「武将の役をやるために、身体を鍛えるとか、何か用意をするものはありますか?」って聞いたら「そのままでいい。俺が導いてやるから」
って言われて。
藤原 かっこいいなー(笑)
柿澤 鋼太郎さん、竜也さん、横田さんをはじめ、ニナガワカンパニーの先輩方も本当に素晴らしい役者さんばかりなので、皆さんの背中について行こうと思います。
―藤原さんが、始めてシェイクスピアに出会ったのは?
藤原 20歳のときです。
柿澤 早いですよね。
藤原 若いころは調子よかったんですけど(笑)蜷川さんが亡くなる前でご一緒した『ジュリアス・シーザー』や『ハムレット』では相当叱られました。蜷川さんが「俺の演劇的志向が変わったから、今までお前に教えてきたことを一度、全部忘れてくれ」と突然おっしゃって(笑)こちらは15歳のころからDNAに叩き込まれてますから簡単には忘れられませんよね。どん底に突き落とされたまま、そのまま蜷川さん亡くなっちゃいました(笑)
柿澤 そんなことがあったんですね。
藤原 毎日稽古場来るのが本当に嫌でしたね、あのころは。稽古場くる途中に川を越えてくるんですけど、何度も「このまま川に突っ込んだらラクになるだろうな」って思ってましたから(笑)
柿澤 竜也さんでもそうだったんですね。僕は、蜷川さんとは『海辺のカフカ』の一本しかご一緒していないんですけど、相当しごかれました。劇団四季を退団して初めてのストレートプレイだったんですけど、「芝居とは何なのかを常に考えろ。すごいヤツはいっぱいいるんだぞ」と教えていただきました。
藤原 『ハムレット』が終わったあと、正直、この劇場(彩の国さいたま芸術劇場)はしばらくはもういいかなと思ってたんです、埼玉の秩父出身のくせに(笑)でも、鋼太郎さんに呼んでいただいて、こんなに早く戻ってくることができて、感謝しています。
―お2人はプライベートでも仲がよいとか。
藤原 そうですね。事務所の後輩でもありますし。稽古に入ってからも何度かご飯に行きました。
柿澤 竜也さんがたまに夜、酔って電話を下さるんですけど、僕からかけるとあまり出てくれません(笑)
藤原 カッキーの電話は夜中だからだよ。夜中1時とかにかけてくるんです、彼は。
柿澤 竜也さんはだいたいテレビ電話なんですけど、先輩からの電話なので自分からは切れないじゃないですか。それをいいことに、全然切らせてくれないんです(笑)
家の天井とかが写ったまま、ずっと待たされていることがよくあります。
―では、最後に作品を楽しみにしているファンに一言お願いします。
藤原 鋼太郎さんの演出は、蜷川イズムを見事に継承しながらも、鋼太郎さんならではの独特なユーモアを折りまぜて、独自の視点でシェイクスピアのせりふを現代の観客に響くように仕立てていると思います。さいたま芸術劇場は、僕たちを育ててくれた場所なので、シェイクスピア・シリーズが復活するのはとても嬉しいです。これから鋼太郎さんを中心に、劇場が盛り上がることを期待しています。
柿澤 ずっとシェイクスピア作品に出演したかったので、いまは稽古が楽しくて仕方ありません。稽古に入る前に台本を読んだ時には、自分にこの難しいせりふが言えるだろうか、と不安でしたが、鋼太郎さんが的確に方向性を示してくださり、今は本番が待ち遠しくなっています。ぜひ劇場に足を運びください。
―ありがとうございました。
「アテネのタイモン」
[作]ウィリアム・シェイクスピア [演出]吉田鋼太郎 [翻訳]松岡和子
[出演]吉田鋼太郎 / 他
【埼玉公演】
2017/12/15(金) ~ 29(金)
彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
S席 9,500円 A席 7,500円 B席 5,500円
【兵庫公演】
2018/1/5(金) ~ 8(月・祝)
兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
全席指定 12,500円