横内謙介、西田大輔、川村陽介、井上小百合(乃木坂46)が語り合う「音楽劇『夜曲』nocturn」

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「音楽劇『夜曲』nocturn」が、12月14日(木)から18日(月)まで東京・東京芸術劇場 プレイハウスで上演されます。

本作は、1986年に初演された扉座・横内謙介氏の戯曲「夜曲 放火魔ツトムの優しい夜」を、新たに音楽劇として立ち上げるもの。今回、脚色を岡本貴也氏、演出を西田大輔氏、音楽をYOSHIZUMI氏が手掛けます。

果たしてどんな作品になるのか......ということで稽古初日に原作の横内謙介さん、演出の西田大輔さん、主人公の放火魔・ツトムを演じる川村陽介さん、ツトムに放火を依頼する謎の少女・サヨを案じる井上小百合(乃木坂46)さんを直撃! 初日に感じた手応えや今回の音楽劇へのアレンジ、原作の誕生秘話もうかがってきました。

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 「なぜこの物語が生まれたか」

――今日は稽古初日ということで本読みをされたそうですが、いかがでしたか?
井上 ひとりで台本を読んだときにはあまり整理がつかなくて。自分で答えあわせをしようとがんばったんですけど、今日みんなで読んでみて、それは必要なかったんだなと思いました。皆さんとも話したのですが「わからなくていいんだな」って。

川村 不思議な題材だもんね。

井上 はい。だからそれをどう体験してもらうか、楽しんでもらうかっていうのを考えるほうが大事かなって。自分の中のサヨちゃん像も考えたんですけど、皆さんとやっていく中でそれがわかっていくのかもと思いましたね。

川村 僕もひとりで読んでいるときは、わからない部分が散りばめられていて整理がついてなかったんですよ。でも今日、みんなで本読みをしたときに「なるほどね!」って腑に落ちた感じがすごくたくさんあって。それって今まであまり感じたことなかった感覚というか。周りに身を任せることで楽しくなるような...。家で考えていたのとは全く違う風に喋ってる自分もいましたし。それでもう「宿題として考えてくるのはやめます」って勝手に決めました(笑)。

――身を任せることで楽しくなるというのはどういう感じなんでしょうか。

川村 自分勝手な登場人物たちが集まっているので、そもそも道理が通ってないことが多いんですよ。そのぶん頭で考えるんじゃなくて心で感じてもらえるようなものを僕らがつくって、それで「どうですか」ってやれたら、きっと成功なんだろうなと実感した、という感じです。

――横内さんも本読みに参加されたそうですが、どうでしたか?

横内 いい感じだったよ。まだ音楽を聴いてないからわからない部分もあるけど、そこは楽しみでもあるし。

――ラブストーリー感が強まっているそうですね。

横内 確かに今なら僕も多分そこをもうちょっと書こうとするんじゃないかなって思う。これ、もともと自分ではラブストーリーだと思ってなかった。初演を上演して気付いたことで。ツトムは六角精児、サヨちゃんは中原三千代でやってたんだけど、あるシーンでふたりが手を握って泣いてて「あれ!?」って。「中原美千代、ヒロインになってやがる」ってびっくりしたんだよ(笑)。そうやって役者が気付かせてくれた部分だったからね。

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――西田さんはこの作品をどういう風につくりたいと思っていますか?

西田 横内先生の脚本を読み返して、改めて今の時代とリンクしてると思ったんですよね。横内先生はこれからなにが起こっていくかを考えてらっしゃったのかなと思ったりもしたんですけど。

横内 全然考えてない(笑)。

西田 (笑)。でも僕は自分のことを(ツトムのような)"ならず者"だと思っているので、「なぜこの物語が生まれたのか」みたいなことは、ふたりと共に探りたくて。そういうことを考える機会でもあるのかなと思っています。

――横内さんはご自身が書かれた本が、こうやって新しい世代によって上演されることにはどう感じていますか?

横内 今日の読み合わせを聞いていて、我ながら「つたない言葉だな」と思う台詞もあって。自分でやるとおそらく整理しちゃうと思うんですよ。でもそれが残っちゃってるところが、恥ずかしくもありよかった部分もあるのかなって思いながら聞いてた。「今だったらもっとすっきり上手にまとめるんだけどな」って思いつつも「でももしかしたらあのとき自分たちがやってる芝居には合ってたのかな」とかね。

――当時の空気がそのまま残っているのですね。

横内 この当時の自分は本当に手探りでいっぱいいっぱいだったから、傷跡も生々しいくらいで。あのときこの作品をやったから今こうなってるんだよなって部分がいっぱい見えますね。

――ちなみにこの戯曲はどういう風に書かれたのですか?

横内 僕は高校時代につかこうへいさんの芝居を観て「すごい!」と思って、台本を真似し始めたのね。それで高校演劇とかで褒められて、ずっと演劇をやることになるんですけど。つかこうへいさんの文体ってすごい強烈なので、真似し始めるとずっと真似になっちゃって。この作品を書いたときは、それがどうしたら変えられるかと考えている頃だった。それで古典...歌舞伎とかシェイクスピアとかに「これも演劇じゃん」って改めて気付いて。

ちょうど花組芝居の加納幸和さんと知り合ったこともあったんだけど。ネオ歌舞伎をやられている方だから。初演は加納さんに黒百合役で出てもらって、そこでいろんなことを教えてもらって。そういうことがこの作品には影響してる。"お話"がつくりたかったんだよね。その時代の流行りの演劇はストーリーがなかったから。自分にとっても転機になるように書いた作品です。

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この時代に『夜曲』をやるうえでの変化

――横内さんは今回の上演に対して「こうあってほしい」というものがあったりしますか?

横内 さっき思ったことで、この初演のころにも得体の知れない事件ってあったんだけど、その頃は「特殊なもの」として社会的に排除されていた気がしていて。でもそのあと、宮崎勤っていう犯罪者が出てくるんですよ。それも「ツトム」で僕はハッとしたものがあった。

西田 宮崎勤って知ってる?

川村井上 知らないです。

西田 宮崎勤の「連続幼女誘拐殺人事件」っていうのがあって、あれからいろんなことが始まったんですよね。

横内 そこから幻想と現実みたいなものがごっちゃになり始めて。それ以前は、そういう事件は「特殊なもの」として進んでたんだけど、宮崎勤の事件からみんながそこで立ち止まり始めたんだよね。知識人とか時代を読み解こうとする人が、宮崎勤に寄り添うような考えを提示したりして。それで初演の頃はツトムを"排除される者"として、見るからに危なそうな(笑)六角精児を使ってたんだけど。

彼(川村)みたいないい男がやると、より現代の孤独感とか満たされてないものとかが表現される可能性がある。そこにこの31年で生まれた別の展開が見られたりするんじゃないかって。そしてサヨを最先端のアイドルグループに所属する彼女(井上)がやることで、今日性とかが出るといいなって思う。

――おふたりは、この戯曲をやることをどういう風に感じていますか?

井上 不思議な縁だなと思っています。初演されたときには私、生まれてなかったので。でも今言われたように、この時代に私が演じる意味があるのなら、そこが伝わればいいなと思って頑張ろうと思います。

――サヨという役について感じていることはありますか?

井上 最初、この戯曲を読んだときにツトムだけが「蚊帳の外」だと思ってたんですよ。でもみんな蚊帳の外なのかもしれないなって思って。それぞれみんな孤独を抱えてるし、みんな違うし。なんかそういうことなのかなと思ったりしました。

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――川村さんはどうでしょうか?

川村 やっぱり昔から受け継がれている作品で、ツトムっていう主人公をやらせてもらうプレッシャーはまだあります。でも今のこの2017年にやる『夜曲』のツトムとしては、素直にみんなに身を委ねて、みんなに影響されて、舞台で生きていければいいのかなとは感じていて。ただすごく綺麗な言葉の戯曲なので、その言葉は一つひとつ大切に言っていきたいなと思います。

――先ほど言われたツトム像みたいなところはどう感じられますか?

川村 なかなかの犯罪じゃないですか、放火って。だからその火をつけてしまう狂気っていうのは必要で、普通に喋ってるときとかの瞬間瞬間に「なんか火つけそう」「なんか気持ち悪い」「なんか嫌、この人」っていうのを観てる人に感じさせられたら、みたいなことは思っていますね。でも本当にまだこれからって感じです。

――西田さんが川村さんと井上さんに期待されている部分ってどんなところですか?

西田 ふたりは年齢が一回り離れてるのですが、そうなるとやっぱり生きてきた時代がちょっと違っていて。感覚も違うんですよね。だから同じ言葉を言っても受け取り方が違うし、そんなふたりの掛け合いっていうだけで面白いことがたくさんあるんですよ。もちろん僕が「こういう風にしたい」っていうことはあるんですけど、同時にわからないことを一緒に探っていきたいなと思っていて。今回、今までの『夜曲』とは絶対に違うものになるんですけど、「ほお」と思ってもらえる瞬間をふたりとつくりたいです。まずはその一個目を探したいですね。

――最後に主演の川村さんから読者への一言をお願いします。

川村 30年前の作品を、ちゃんと年月を経て「今回の『夜曲』もよかったね」と言ってもらえるように、これから稽古をがんばっていきます。この作品はとても不思議な空気があって、だからこそ「なんかいいよな」っていうのは劇場に来てもらわないとわからないと思うので。ぜひ劇場でご覧ください!

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音楽劇「夜曲」nocturn

2017年12月14日(木)~12月18日(月) 

東京芸術劇場 プレイハウス

【原作】「夜曲 放火魔ツトムの優しい夜」(横内謙介:扉座)
【脚色】岡本貴也
【演出】西田大輔
【音楽】YOSHIZUMI

【出演】川村陽介 谷内伸也(Lead) 井上小百合(乃木坂46) 姜暢雄 KENTARO
蒼乃夕妃 法月康平 有澤樟太郎 山崎裕太 橋本全一 瀬尾卓也 藤田玲 山下容莉枝 ほか

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