7月12日、都内にて宝塚歌劇花組公演『ハンナのお花屋さん ―Hanna's Florist―』 の制作発表会が開催されました。
作品は花組トップスター・明日海りおが主演するオリジナルミュージカル。
ロンドンの閑静な高級住宅地ハムステッドヒースの一角にある花屋を舞台に、明日海はデンマーク人のフラワーアーティスト、クリス・ヨハンソンを、相手役の仙名彩世はクロアチア出身の少女ミア・ペルコヴィッチを演じます。
会見の冒頭では明日海さん、仙名さんふたりによるパフォーマンスも披露されました。
明日海りおさん扮する主人公クリス・ヨハンソンは、フラワーアーティストであり、お花屋さん。
自分の"幸せ"について思いをめぐらせる、クリス。
「願い事を、make a wish...」
お花に水をあげてます。
自身の店、Hanna's Floristについての投稿をチェックしているクリス。
そこには、「こんな素敵な矢車草のブーケをもらった」と、"リトルマーメイド"と名乗る投稿者からの書き込みが。
リトルマーメイド=クロアチアからロンドンにやってきた少女ミアは、仙名彩世さん。
ピアノとヴァイオリンの生演奏をバックに、ふたりが優しい旋律を歌い上げます。
どうやらハートフルで優しい作品になりそう。
作中に登場する絵本『地雷ではなく 花をください』は、重要なアイコンになりそうです。
そのメインキャラクター、サニーちゃんのぬいぐるみも。
会見の登壇者は、明日海さん、仙名さん、小川友次歌劇団理事長、作・演出の植田景子さん。
小川理事長からは「私はいつも「花組が元気だったら宝塚は元気」と言っていますが、明日海がトップになってから、大劇場・東京とも、6作連続大入り。これは花組として新記録です。103年の歴史のなかで一番伝統のある花組が頑張ってくれているのも、明日海がこの花組を中心でひっぱっていってくれているから。今回の公演は、本人も初めてのTBS赤坂ACTシアターでの公演、しかもオリジナルミュージカルです。明日海のお花屋さんがどんな大輪の花を咲かせてくれるか、どんな色を彩ってくれるか、今から楽しみ」と期待を語られました。
作・演出は植田景子さん。
「個人的には、純粋なオリジナル作品はちょっと久しぶりです。キャラクターもストーリーも、今回の花組のための書き下ろし。オリジナルはハードルは高いのですが、自分自身も作家としてテーマも含め、非常にやりがいのあるものであり、新たな挑戦をできる作品になれば。
私はみりお(明日海)とは何回かお仕事をしていますが、彼女がトップスターになってからは初めて。最近の花組さんは、どちらかというと"闘う"ということをテーマにしたりとか、古典的な作品が続いていたので、ガラリと変えて意外とやっていなさそうな現代もの、カジュアルポップでハートウォーミングな方向性の作品です。花組は組自体の雰囲気が非常に明るい。ポジティブな空気があるので、このメンバーでやることが今から私も楽しみです」とご挨拶。
なお、"お花屋さん"が題材になった経緯は
「実は今回、企画がたくさんありました。赤坂の真ん中でやるというのは宝塚大劇場とは空気感も違います。海外ミュージカルの話もありましたし、私も大劇場でやるものとは違う方向性のものをと、いま流行っている日本の小説とか、どういう内容にするかプロデューサーとも悩みました。今までで一番時間のかかった企画でした。すごくすごく悩んだあとに、ふと「最初に明日海りおさんで現代もの...と言ったときにイメージしたのは、「花屋の王子様」だったんですよね」と言ったら、プロデューサーたちが「それ、いいじゃないですか!」と。...すみません、こんな簡単に決まったと誤解していただきたくはないんですが(笑)。私としては「花組で、花屋の王子って、ベタですよ」と言ったのですが、「絶対キャッチーです、ファンの人は見たいです!」と言われ(笑)。プロデューサーはいそいそと、以前『宝塚グラフ』で撮った明日海の花屋の写真があります!と持ってきてくれて、またそれが似合っていて...。私自身もお花は大好きですし、お花をテーマにした作品は言葉もどんどん出てくるし、花屋の王子でいいんだ...というところから企画の第一歩が決まりました」
と明かしていました。
明日海りおさんは次のようにご挨拶。
「私は研究科2年生の時に、植田景子先生の『THE LAST PARTY』出させていただき、とてもお芝居が大好きになったきっかけになったということがあります。。いつか景子先生の書かれる作品でご一緒してみたいなという思いがありましたので、今回先生に脚本を書いていただけることがとても嬉しかったのと......、私の念願のお花屋さんになることが出来ます! もちろんタカラジェンヌという職業もとても愛していますが、本当に日ごろからお花がすごく好きで、日常でもお花に助けられているので、お花を身近に感じる心をいかして役にとりくみ、メンバーと心を通わせ、素敵な作品にしたいと思っています」
...と語ったように、明日海さんの"花好き""花屋好き"はファンの間でも有名な話。
今回の役どころについては
「次の公演がどうやらお花屋さんになりそうだと聞いたときには、本当にびっくりしてしまいました。色々な取材のたびに、花を飾るのが趣味だ、お花屋に行くのが大好きだと言っていたら、『宝塚グラフ』の企画でお花屋さんにならせてもらって、エプロンをつけて撮影し、夢が叶ったなと思っていたので、まさか今度は舞台の上でお花屋さんになれるなんて。本当に今まで(花好きを)宣伝してきてよかった(笑)。
クリスはとても頭のいい人で、いい大学を出て、でも突然お花屋さんを持ちたいと目指す。そして花屋も軌道に乗り出してきて、いま求めてるものは、幸せとはなんだろうと考える時期にいます。私もタカラジェンヌになりたいと家を飛び出し、新人公演の主役をしたい、いいお芝居をしたいというような思いを重ね、"男役10年"の年をすぎ、花組に組替えして...と、クリスとリンクする気持ちがたくさんありそうです。クリスも故郷のデンマークを離れてロンドンにきていますし、私も故郷の静岡を離れて宝塚にやってきました。そういうところを活かして演じたいです」とのこと。
仙名さんは、花組トップ娘役に就任し、現在大劇場お披露目作『邪馬台国の風』の公演中。
明日海さんとのコンビとしては今回が3作目となります。
「私はクロアチア人の役。最初にお話を伺ったときに、クロアチアってどんなところなんだろうと、あまりちょっとイメージがわかなかったんですが...」
と言ったところで、植田さんが「こういう...(笑)」と、仙名さんのヘアバンドを指差す可愛らしい光景も。
「...はい(笑)。色々調べていて、2001年まで紛争していたところとは思えないほどとても美しい町で、驚きました。そして今回はクロアチアからロンドンに生きるために働きにきた女性の役。私も振り返ってみると、現代物はあまり経験したことないですが、植田先生の作品はいつも、とても美しくて、深いものが心に響く。こうして出演させていただくこと、そして花組でお花屋さんというのが「なんて素敵なんだろう」と思いました。役柄上の複雑な思いもあるのですが、幸せを求めて生きている役です。皆さまに共感していただけるような役にできたらいいなと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします」
―― 宝塚は103周年。100年を超え新たなチャレンジをしている歌劇団だが、演者として気持ちの上で変化を感じていますか。
明日海
「100周年をこえて3年。私も花組の主演男役に就任したのがちょうど100周年の時で、それから3年たって、少しずつ見えてくるものや思うことはだんだん変化してくるのですが、やっぱりいつも心にあるのは、支えてくださるスタッフの方々の仕事の丁寧さ、そして今まで宝塚を今に繋いでくださった先輩方のお力と愛。新世紀に...という思いはありますが、変わらず真心というような宝塚ならではのものを受け継いでいく、受け継いでいかなければならないということを逆に強く感じています」
仙名
「100周年を迎えて、いま、100周年を迎えた宝塚に在籍させてもらっていますが、今までの宝塚を作って、発展させてくださった上級生の存在、というものをいま本当に強く感じていますので、その思いをさらにさらに次の時代に、日々舞台を心をこめて務めることで、その思いをどんどん繋いでいけたらなと思いますし、お客さまに楽しんでいただく舞台というのを、いつもいつも思いながら務めてまいりたいと思っています。
―― 相手役の魅力について。
明日海
「相手役として組む前は、私が『ME AND MY GIRL』に最初に出た時(に彼女は初舞台生で、主席で入団してきてとっても優等生のイメージで、花組にまいりましたときはとてもエレガントな娘役さんだなと。パワフルさと大人っぽさを持ち合わせている人だなと思っていたのですが、いざ組み始めてみると、意外とてんぱるところだったり、あたふたする瞬間があると、可愛らしいなと思ったり、でも普段から芸事はしっかりやってくれていますし、私が疲れないように、たぶん本当はすごくしっかりしてるんですが、私にあわせてボケボケふわふわしてくれるような気遣いをしてくれるところが魅力だな、できる人だなと思って過ごしています」
仙名
「初舞台のときにご一緒させていただいて、それから明日海さんが花組に来られてまたこうして一緒に舞台に立てているということが夢のようで、幸せに思います。明日海さんは、ここでは語りつくせない魅力がたくさんあります。いまお芝居やショーで組ませていただく中で、明日海さんが、相手との心の交流だったり、そのとき生まれたもの、空気感やアイコンタクトなどを、ずっと大切にされてきたんだろうなというのが伝わってきます。そしてその根底には舞台に対する愛情や、人に対しての心の底からの信頼や感謝。色々なものがいまの明日海さんの中にあるのだなと思うと、私もそうなりたいと思いますし、尊敬できる明日海さんのとなりで相手役をさせていただけることをとても幸せに思います。これからもふたりで素敵な作品を作れるように明日海さんについて頑張っていきたいと思います」
取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)
【公演情報】
10月9日(月)~29日(日) TBS赤坂ACTシアター
一般発売:9/3(日)