あなたはいったい誰......?
どこから来た......?
「私が私であることの証明とは何か」という問いをスリリングに、サスペンス風に描く衝撃の問題作が17年ぶりに上演されます。
仕上がり直前の稽古場の様子をお伝えします!
病院の霊安室前。
病室には交通事故で死んだ、ある男女の遺体が安置されている。
二人は結婚を目前に控えていた。
ところがその場に、天涯孤独であったはずの死んだ男の姉だと名乗る女が現れ、霊安室での「あること」をきっかけに、死んだ男の「素性」は大きく揺らぎ始める。(あらすじより)
物語は、中心人物の境田健吾の姪と、仕事で関わりのある姪の婚約者のカメラマンの死から始まります。
緊迫した稽古場の空気を想像していたのですが、始まる前は、明るくて穏やかな雰囲気。しかし稽古に入ると一変。緊張感とともに役の人物たちの思いがバシバシ伝わってきます。
演出の古城十忍さんは、役のそれぞれの思惑や、繊細な感情のやりとりを驚くほど細かく演出され、それを俳優さんたちが表していきます。
境田健吾を演じるワンツーワクスの奥村洋治さんは、「演出が求める気持ちの動きを表すことに集中してます。17年ぶりに演じる自分の役どころは、当時の年齢よりも少し上の設定になり、今回の若手俳優との芝居のやりとりもとても面白い」とのこと。
今回の若手客演陣(イケメンぞろい!)も見どころのひとつ。物語の要になる役を演じるのは、山田悠介さん、多田直人さん、池永英介さん、山中雄輔さんの4名。舞台やTVで活躍中の実力派揃いで、何より「芝居に貪欲(奥村談)」。なるほど、それがワンツーワークスのベテラン俳優陣とともに、ヒリヒリするような登場人物の関係を生み出しているんですね!
「緊張が崩れず、戦う気持ちを要求され続ける作品。最後まで観客を巻き込みたいね」と奥村さんは語ってくれました。
稽古では息詰まるような場面が次々に展開。この先どうなるんだろうと目が離せません。
今回の稽古では、ワンツーワクスの作品には欠かせない、「ムーブメント」も見られるとあってかなりワクワク。
毎回、作品のテーマを象徴する独特なムーブメントは圧巻で、これがないと!と思うファンも多いはず。
全員が湧き出るように現れてストップモーションと流れるような動きが美しく続いていく。
一見、何か重たいものを引きずっているかのよう。
稽古が進んで行くうちに、所々で役者が何かを掬っているような仕草。ムーブメントともきっと繋がっているはず。謎を解きたいと台本を覗き見ると「不可視の水」と書かれている...え?水?しかも不可視って?
あらすじには、「不可思議さを助長するかのように、霊安室のドアの下から水が染み出してくる」とある。
なんと、赤坂レッドシアターで、約1トンもの本水を使用するらしいんです。しかも登場人物には水は見えていない設定(それで不可視)。もしかして水が舞台にあるの?と想像と謎は深まるばかり。まさにサスペンス!
どんなふうに水が使われるのか、ムーブメントと水はどんなふうに絡み合うのか、確かめなければ!と早くも本番が待ち遠しくなりました。
「17年前にも感じていた誰の中にもある相手をジャッジする意識。なぜ、お互いまっさらな心で出会えないのか。今こそ人と接するときの感情や態度を、自分への問いかけとして観ていただけたら。なぜ水なのか、何で見えないのか、考えながら観てほしいです」と話す演出の古城さん。
本番まであと少し。熱い稽古が続いています!
6月22日(木)から7月2日(日)まで、赤坂レッドシアターで!
取材・文 黒木朋子