若き劇作家、演出家の加藤拓也が主宰する劇団た組。が、第13回目公演『まゆをひそめて、僕を笑って』を上演する。
1984年発表のチェッカーズのヒット曲「ジュリアに傷心」をモチーフとしたこの新作について、
加藤と主演の藤原季節、福田麻由子に話を聞いた。
加藤が「シンプルに、上手な人とやりたかった」と、
その演技力に信頼を寄せる福田、
また「むっちゃ雰囲気がある」と惚れ込んだ藤原。
ともに20代前半の同世代だ。
子役時代から活躍を続ける福田が、
「同世代の演出家の方と組むのは初めて。
これからは周りに頼ることなく、自分たちの世代で作品を創っていかなければ。
これはその幕開け、いいスタートになればと思っている」
と話すように、この舞台の核となるのは、若い世代の力だ。
描き出されるのは、現代の、
いわばイマドキの男女の恋愛の、極めて軽いやりとりの連なり。
作詞家・売野雅勇が「ジュリアに傷心」で描いたのは、
都会で失くしてしまった恋の切なさだが、
加藤が描き出す人物たちにその純粋さは、ない。
「この曲が流れていた時代の恋愛の価値観と、
今、僕らが感じている恋愛の価値観──。
僕は今のその価値観、それでいいのかと問いかけたいんです」
という加藤。
ヒロイン、ジュリアを演じる福田も、
「彼らの軽さ、浅はかさというのは、実感として理解できないでいるのだけれど......。
自分は役者ですから、ジュリアの心を理解するのが私の、私だけの仕事。
"これは大変だ!"と思いました(笑)」と、誠実さをもって役に取り組む。
いっぽう、主人公のセイヤを演じる藤原は
「脚本の中で、物語が動いてハッとする場面で、
事実を伝えるのがLINEだったりする。それは違うな、と思います。
が、彼らをいじらしく思うこともある。皆グズグズですが(笑)」
と登場人物の共感しうる部分に光をあてる。
「痛みを笑いとばせるようになりたい、
ということも作品の一つのテーマ。
『まゆをひそめて、僕を笑って』というタイトルは、
痛いのを耐えている過程の顔なんですよ」と話す加藤。
「若い人たちにぜひ観てもらいたい。
大企業に就職して余裕でいる人たちに負けたくない、という気持ちもある。
彼らの価値観を変えるのではなく、
感じさせて、動かすことができたら、という思いがあるんです」と明かす。
藤原も、「僕もそう思うところはあります。
同世代の人たちと創る、こうしたチャンスをいただけて、すごくありがたいです」
と、力が入る。
音楽は、加藤が「天才」と絶賛する谷川正憲が担う。
アコースティックギター一本のシンプルな音で、
どんな世界が立ち上がってくるのか、興味は尽きない。
公演は4月20日(木)から23日(日)まで、
神奈川・横浜赤レンガ倉庫1号館3ホール。
チケットぴあにて絶賛販売中。チケットはこちらから。
文:加藤智子 写真:石阪大輔