宝塚歌劇団星組の東京公演『桜華に舞え-SAMURAI The FINAL-』『ロマンス!!(Romance)』が10月21日、東京宝塚劇場で開幕した。
本公演は星組トップスター・北翔海莉、トップ娘役・妃海風の退団公演。『桜華に舞え』は、西郷隆盛の右腕と呼ばれ、明治維新の立役者となりながらも、己の"義"を大切にし"避けられぬ宿命"西南戦争へ身を投じていく桐野利秋(中村半次郎)を主人公に、"最後の侍"の生き様を描く作品。北翔にぴったりな優しさ、温かさと頑なさを持つ桐野の姿、そして次期トップスター紅ゆずる扮する衣波隼太郎に次の時代を託す場面なども盛り込まれ、北翔の退団を意識した作品になっている。とはいえ、観終わったあと、悲しい涙よりも明るい笑顔が胸に残るのもまた、北翔に似合う。
後半のショー『ロマンス!!(Romance)』は演出家・岡田敬二によるロマンチック・レビューシリーズの19作品目。伝統的な宝塚らしさに満ちた、華やかで美しいステージだ。こちらでも、歌もダンスも芝居も何をとっても天下一品、当代きっての芸達者トップスター・北翔の魅力が存分に味わえるとともに、妃海との息の合った歌声やダンス、そして勢いのある星組スターたちの熱いパフォーマンスが息つく暇なく展開され、目が奪われる。
北翔の19年の宝塚生活のピリオドとなる2作品。舞台上には北翔からの愛が、そして北翔への愛が溢れ、幸せ空間となっていた。
==『桜華に舞え-SAMURAI The FINAL-』==
==『ロマンス!!(Romance)』==
初日にさきがけ10月21日には、北翔海莉、妃海風が取材に応じ、現在の心境を語りました。
北翔海莉&妃海風 囲み取材
北翔「星組の北翔海莉でございます。わたくし事ではありますが、今回『桜華に舞え』『ロマンス!!』、卒業公演となりました。宝塚大劇場での公演を無事に終え、残るは東京のみ、ファイナル公演です。待ったなし、ノンストップでまいります。とにかく全員が怪我をせずに揃ってゴールできることを目標に、そして進化し続ける舞台を目指して、頑張りたいと思います」
妃海「星組の妃海風でございます。私もご一緒に退団させていただくことになりました。大劇場公演もとってもとっても、毎日充実していて楽しかったので、東京公演も、瞬間瞬間を大切に過ごしていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします」
△ 囲み取材で自分の名前を名乗るトップスターさん&トップ娘役さん、珍しいです...!
――大劇場での公演を終え、どんな気持ちで最後の東京公演の初日を迎えようとしていますか。
北翔「終わってほっとしたというより、もうちょっと作品自体も掘り下げていきたいし、まだ男役・北翔海莉を極められるんじゃないかという部分があるので、最後まで自分自身を追求して極めていきたいなという気持ちです」
妃海「私は大劇場公演のお稽古最終日に「あ、お稽古が終わってしまった」と思っていたのですが、やっぱり東京に来て舞台稽古をすると、退団する気持ちが薄れてしまって...(笑)。なので...あ、でも、退団しますので...(さらに一同笑)」
北翔「辞めるの、やめたら?(笑)」
妃海「いやいや...(笑)」
△ 笑顔、笑顔の星組トップコンビ! この笑顔だけでファンになってしまいます。
――それぞれの作品のみどころをお願いします。まずは『桜華に舞え』のみどころ。
北翔「西南戦争や西郷先生のことは皆さんよくご存知だと思うのですが、私が演じる桐野利秋さんは、あまりご存じない方が多いので、ぜひ、西郷さんの片腕と呼ばれた桐野利秋さんを知ってほしい。そして本では「人斬り半次郎」として名前が知られてしまっていますが、ただの「人斬り半次郎」ではありません。今回の作品のテーマである義と真心と勇気、本当の日本のサムライ精神、大和心をすごく大切にする方だったので、そういう部分をしっかり出して、この作品から今の時代に伝えたいメッセージをしっかりお届けしていきたいなと思います」
妃海「お稽古場で見たり、舞台稽古で見たりしているときに、本当に侍のような生き様をされている北翔さんなので、この現代では、北翔さんの演じる桐野さんしかこの凄さは出せないなと思っていました。そんな方と少しでも、舞台上でデートできたりとか...しますので(笑)。光栄に思いますし、幸せに感じております。皆さまもお楽しみいただけたらと思います」
△ 妃海さんの発言にころころ笑う北翔さん。
――レビュー『ロマンス!!』の見どころは。
北翔「大好きな岡田先生に、ロマンチック・レビュー19作品目を作っていただきました。今の星組の出演者ならではの色を、そして宝塚のこれぞ元祖レビューというものをしっかり皆さまにお見せしていきたいなと思います」
妃海「ショーは宝塚ファンの私にとって、どの場面も本当に心ときめく場面が多いです。この現代に、こんなにも清らかな空気や気持ちがあるのだと感じることの出来るショーです。ぜひ、心癒されに来てください」
――特にお気に入りのシーンがあれば。
北翔「最初の幕明け、プロローグですね。あじさいの色・柄というんでしょうか、岡田先生ならではの色彩で。舞台装置、本当に総合芸術で宝塚が自信を持ってお見せできるプロローグは、やはり宝塚でしか出せないパフォーマンスだと思うので、そこを大切に、皆さまにお見せしたいなと思います」
妃海「私は『初恋』の場面です。本当にいつも、(北翔さんと)出会えました奇跡を感じていますし、こんな素敵な気持ちを毎度経験できるこの公演も、人生においてこんな気持ちを経験できたのは素晴らしいことだなと思いますので...はい。『初恋』の場面です!」
――ショーの最後(パレードの直前のシーン)は次のトップコンビさんが締める。これまで観たことない展開だと思いますがどんな気持ちで見ていますか。
北翔「もう安心して、次を任せられますので。私たちは安心してバトンタッチできるなと(笑)。自分たちは『イル モンド』(私の世界)で結構、限界までやっておりますので(笑)。あのあとすぐパレードだったら、本当に大変だったろうなと(笑)。そういう気持ちで本当に色々な意味で助けられています」
取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)
【公演情報】
・11月20日(日)まで上演中 東京宝塚劇場