美女と野獣?
はたまた『エリザベート』が繋いだ縁!?
宝塚歌劇団宙組の初代トップ、退団後もその力強い歌声でファンを魅了し続ける姿月あさと、
『エリザベート』のトートをウィーン、ハンガリー、日本と3ヵ国語で演じ、日本でも2007年の初来日以来、根強い人気を誇るマテ・カマラス、
ミュージカルからストレートプレイまで、挑戦的な作品に出演し続ける個性派俳優・伊礼彼方。
この3人によるスペシャル・ライブ「姿月あさと×マテ・カマラス×伊礼彼方 -Musical Songs and Pop Galore!-」がこの秋、開催されます。
3人だけのコラボレーションは初ながら、これまでも共演を重ね、特に、今回のコンサートの前身と言うべき2009年の『Super Live Vol.2「LOVE LEGEND」』では、歌声のみならず、息のあった爆笑トークでも、客席を沸かせました。
(この時の出演は、この3名に加え、湖月わたる、ルカス・ぺルマン、マジャーン・シャキ)
それから7年。
彼ら自身もこの共演を心待ちにしていたそうで...。
姿月あさとさん、伊礼彼方さんのおふたりに、このコンサートにかける意気込みを伺ってきました。
★ 姿月あさと & 伊礼彼方 INTERVIEW ★
●『LOVE LEGEND』を経て、今回の『Special Live』へ!
――姿月さんと伊礼さんは、『Super Live Vol.2「LOVE LEGEND」』(2009年)、『Golden Songs』(2015年)と、コンサートでの共演が続きますね。お互いの印象は?
姿月「『LOVE LEGEND』の時が初共演だったんだよね」
伊礼「7年前です、2009年。俺、27歳でした」
姿月「7年前!? 伊礼くんは舞台でたて、デビューしたてって感じで、とても初々しかったのを昨日のように思い出します」
伊礼「(笑)」
姿月「あれから7年。どんどん大人になられて、立派な青年になって...。いい歳の重ね方をしてらっしゃる」
伊礼「(笑)。ありがとうございます」
姿月「いや本当にあの時は「僕、これやったことないんです!」「これも初めてなんです!」って、一生懸命だったし、可愛かった」
伊礼「はい、可愛かったですねぇ、あの頃は...(笑)」
姿月「踊りの練習とか、爆笑だった~。一生懸命で」
伊礼「爆笑とか言わないでくださいよ...! 今でも忘れられないのが、姐さん(姿月)と、(湖月)わたるさんのおふたりをエスコートしなきゃいけないシーンがあって...」
姿月「そうそう、クルクルと私たちを回してもらうんだけど、回せないの(笑)! 絶対忘れないよ、あの時の彼方くんは。でもそのあと、謝珠栄先生の舞台(TSミュージカル)とかで踊っていたじゃない。「踊ってるよ、彼方くんが...(涙)」って思って観てました」
伊礼「もう、いろいろと教わりました...。僕はこの時の姿月さんのことで、一番印象に残っているのは、現場での指揮官としての存在感ですね。姉さんからは"プロデューサー力"を学びました! もう、すごいんです。統率力というか。なかなかまとまらない現場だったから(笑)」
――確かに、なかなかフリーダムな雰囲気の方々が集まっている印象でした(笑)。
伊礼「そう、動物園みたいな感じだったので(笑)。姐さんの「よいしょー!」っていう感じの統率力がすごかったです」
姿月「そうねぇ」
伊礼「でもそこがやっぱり、面白かったですよね。皆さんの個性の強烈さが」
姿月「うん。でもまさか、またこうやって共演できるとは思っていなかった。ご縁がある人って、やっぱりご縁があるんですよね」
伊礼「そうですね」
――どなたかが、またやりたいねと仰ったりしたんですか?
姿月「自然の流れでしょうか。やっぱり『LOVE LEGEND』は本当に楽しかったし、ずっと「ああいうのをまたやりたいね」とは言っていましたよね」
伊礼「はい。会うたびに、またやりたいねってずっと言ってましたし、(すでに決まった)今でも言ってます」
姿月「でも前回はショーアップされていましたが、今回はバンドさんも舞台上にあがって、ライブ形式になる予定です。きっとまた、マテがひっかきまわすんじゃないかな?」
――(笑)。マテさんはどんな人ですか?
伊礼「野獣に毛がはえた人です(笑)」
姿月「最近はジェントルマンを意識しているみたいで。このチラシのお写真を見ても、そうでしょ? もともとロッカーだったんですが、彼も大人になったよねえ...(一同笑)。でも、実際にクラシカルなこともやりたいと言ってましたよ。彼方くんもだけど、みんな年齢を重ねていくにつれ、やりたいことも変わってくるでしょうし、今しか出来ないこともあるよね。...そういえばマテは『LOVE LEGEND』では、マツケンサンバやってたねぇ...」
――やっていらっしゃいましたね! あれはどういう流れでやることになったんですか?
姿月「彼自身が、テレビでマツケンサンバを見て「これがやりたい」って言ったんですよ。今は彼、何をやりたいのかなぁ(笑)。今回もそういう、マテにしかできないことがあったらいいですよね」
――ほかにもあの時はエド・はるみのネタがあったりして。思い出すと、その時代を感じます。
姿月「あぁ、やりましたね~」
伊礼「やった、やった!」
姿月「あの時、流行ってたんだよね」
伊礼「今回も何か入れたほうがいいな、きっと(笑)!」
姿月「今、何が流行っているんだろ?」
伊礼「最近テレビを見ていないので、いま何が面白いのかわからないですねぇ~」
姿月「調べとこ!」
●構想?妄想??は、広がっていきます
――本番で何かしらネタが入ってきたら、「あの時おふたりが話していたことは本気だったんだ...」と思うことにします(笑)。そして演出が今回は玉野和紀さん。皆さん、踊らされそうな予感がするのですが...。失礼ながら伊礼さんやマテさんはあまり踊るイメージはなく...。
伊礼「(笑)どうなりますかね! でも俺ら、「踊りませんから」って言っちゃえる人たちですから(笑)」
姿月「マテが踊るかもしれませんね~。もしかしたら」
伊礼「僕らではなく(笑)」
――と言いながら、昨年の『Golden Songs』では、伊礼さんもマテさんも、踊ってましたね。かわいらしく!
姿月「そうなの、男の子たち、むっちゃ練習してた。毎日!」
伊礼「(笑)。なんだかんだ言って、やっぱり練習するんですよね~」
姿月「袖で練習し過ぎて、カズさん(石井一孝)なんか、本番中に"靴の裏"を落としていった(笑)。みんな、本当はすごくマジメなんですよ」
伊礼「結局はマジメなんです...。今回は踊りがどこまで必要とされるのか、まだ玉野さんとお話が出来ていないのでわからないんですが...。できれば"振り"くらいに収めてもらいたいですね...」
姿月「ストーリー的なことも、あるのかな?」
伊礼「サブちゃんがやっているようなことをやってみるっていうのも、面白くないですか!? [一部・時代劇、二部・歌謡ショー]みたいに、[前半・寸劇、後半・ロックショー]」
姿月「(笑)。ちょっとしたストーリーがあってもいいかもしれないよね。どこかに旅に出るとか。3人の家族物語、とか」
伊礼「あー!姐さんとマテが結婚した子供が俺っていう」
姿月「例えばね」
伊礼「ちょうどいますもんね。純日本人(姿月)、ヨーロッパの人(マテ)、ハーフ(自分)」
姿月「アリだよ(笑)!」
伊礼「アリですよね」
姿月「彼方くん(子ども役だから)膝で歩かないと!...そうか、君は私とマテの子どもかぁ...。それで、演歌なんか歌ったり? マテがちゃぶ台ひっくり返すとか?」
伊礼「いいじゃないですか。『三年目の浮気』をふたりで歌ってくださいよ。俺は袖から両親のケンカを見てますから(笑)」
姿月「そういうの、もしかしたら玉野さん得意かもよ!? それで彼方くんは『カナダからの手紙』を歌うんでしょ」
伊礼「ラブレターフロム"彼方"~♪って」
――なかなかまとまりがつかなそうなんですけど(笑)。
伊礼「まとまるわけないじゃないですか、このメンバー見てくださいよ!」
姿月「うん、そうだね(笑)」
●遊びながら、ちゃんとしたこともきちんとやる。"大人の遊び場"という感じのライブにしたい
――では、まだ具体的な内容までは進んでいないとのことですが、現時点で、おふたりが歌ってみたいナンバーなどは?
姿月「決定項はまだ何もないのですが、やりたいものはいくつか話していまして」
伊礼「姿月さんが歌いたいって仰ってたのが...」
姿月「『夏の終わりのハーモニー』! ちょうどコンサートが9月なので。それから彼方くんのリクエストが『あずさ2号』ね(笑)。...マテとふたりでやりたいの?」
伊礼「マテとふたりで。クラシカルに歌おうかな(笑)! そうだ、俺、アレ歌いたいんですよ、『ジーザス・クライスト=スーパースター』の『スーパースター』」
姿月「あれ、女声のコーラスもあるじゃん。いいよ、やるよ~!」
伊礼「贅沢!」
姿月「あとは『闇が広がる』は(全員『エリザベート』出演経験があるので)、マテと彼方くんの日、私と彼方くんの日とか、日替わりでやるのもいいよね」
伊礼「俺は姐さんと、普通なら出来なさそうなものをやりたいなぁ!『ホール・ニュー・ワールド』(アラジン)とか、『世界が終わる夜のように』(ミス・サイゴン)とか」
姿月「普段のミュージカルでは絶対見れなさそうなものを、せっかくだからやりたいよね。『エメ』(ロミオ&ジュリエット)とかも、いいんじゃない?」
伊礼「そうそう、10代の女の子が歌いそうな可愛い曲を姉さんに歌ってもらいたい!」
姿月「じゃあ彼方くんは『男の子女の子』を(笑)」
伊礼「それ、入れましょ(笑)。...この間、『岩谷時子メモリアルコンサート』(2015年)で歌ったんですよ」
姿月「ぴったりだった! もう、十八番だよ。感動した」
伊礼「ちょっとモノマネ入れながらね(笑)」
――冗談のように話していらっしゃいますが、お客さんにとっても、予想外の色々な曲との出会いがあって、楽しいですよね。
姿月「おもちゃ箱をひっくり返したように"なんでもあり"で、でも最後にちょっと感動的な、ちゃんとしたナンバーも入れてやれたらいいよね」
伊礼「『サライ』とか(笑)!?」
――感動といえば、『サライ』(笑)。
姿月「だったら『糸』とかもいいんじゃない? こうして出会ったのも縁ですね、って意味を込めて」
伊礼「なるほど(笑)。あとは、前回(『LOVE LEGEND』)マテと僕で『RENT』の『One Song Glory』を歌ったじゃないですか。ああいった、もともとソロの曲をハーモニーつけてやったりするのも面白かったから、そういうこともまたやりたいですね。...あの曲をそのまま、今回またやるのもいいかな?」
姿月「そうだね、あの時のナンバーをまたやってもいいかも。あの頃があって今があるから。今歌うと、こうなりますよっていう...」
伊礼「そうですよね」
――伊礼さんとマテさんの『One Song Glory』は、歌う前にちょっとしたコール&レスポンスがあって。そこですごく笑わせてもらいながらも、歌い出すと、おふたりともビシっと決めて、とてもカッコよかったです。
伊礼「あの曲、楽しかったな~」
姿月「そう、私たちは、遊びながら、ちゃんとしたこともきちんとやる。今回も"大人の遊び場"という感じのライブになるといいよね」
伊礼「このチラシでは僕ら、なぜかカッコつけていますが(笑)、いわゆる"ミュージカル俳優さんたちがやるようなザ・ミュージカルコンサート"には絶対ならないはずです。僕らには、僕らにしか出来ないことをやります! お上品なコンサートも勿論いいと思いますが、僕らがやるものは、そういう系のものにはなりませんので...ひと言でいうと「じっと座って聞いてるコンサートをお求めの方は他へどうぞ!」ですかね(笑)」
姿月「彼方くんが、どんどん正直になっていくよね(笑)。でも、ミュージカル俳優だから、こういうことをやるに違いないとか決め付けられるのは、イヤだもんね。私たちには、私たちなりの世界がありますので。今回も、私たちにしか出来ないことを、3人で探したり、見つけたり出来たらいいよね」
●この3人のコラボは、これからも続いていくと思います
――何か新しく挑戦とかしたいものなどは、ありますか?
姿月「マテさんは今、ウクレレをやりたいらしいです」
伊礼「そう、それで僕はドラムを叩きたいんです。そして姐さんがシンバル。...(打楽器で)被るんですが」
姿月「じゃあ私は縦笛かなんかでも...」
伊礼「縦笛(笑)。でももしかしたら、そんなコラボレーションも見られるかもしれません!」
――でも、今回ももちろん楽しみですが、数年後、さらにまた数年後...と、この3人のコンサートを観られたらいいな、と思います。
姿月「このチラシね、実はあぶり出しでVOL.1って書いてあるんですよ(笑)。だから、続いていくと思います」
伊礼「そうなんだ、すげぇ金かかってんな、このチラシ(笑)! ..."ぐちゃぐちゃな僕らのライブ"の第1回目になりますから、皆さんに観に来て欲しいですね」
姿月「でも、こうやってまたこのメンバーで一緒に出来るのが嬉しい。この世界、よくジャンルで括りがちですが、ジャンルがないところが私たちのような気がしますので...」
伊礼「ノンジャンルで、ノンスタイルなライブになると思いますので、楽しみにしていてください!」
姿月「うん。型にはまりたくもないし、今の私たちにしか出来ないコンサートをやりたいと思います」
取材・文:平野祥恵(ぴあ)
撮影:本房哲治
【公演情報】
9月13日(火)~15日(木) 草月ホール(東京)
9月28日(水) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール