『TWINS』稽古場レポート&吉田鋼太郎インタビュー

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11月某日、まもなく開幕する長塚圭史作・演出、古田新太主演舞台『TWINS』の稽古場に伺いました。

 長塚さんと古田さんのタッグは2005年上演の『LAST SHOW』以来10年ぶりということで話題のこの舞台、共演も多部未華子さん、りょうさん、石橋けいさん、葉山奨之さん、中山祐一朗さん、吉田鋼太郎さんと、なんとも豪華な顔ぶれです。稽古場に一番に現れたのは主演の古田さん。個性炸裂の奇抜なファッションが目を引きます。着替えた稽古着もオシャレ。この新感線Tシャツの前に着ていたのは可愛いベティさんTシャツでした。

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 ...と、そんな余談はさておき。次に姿を現したのは吉田鋼太郎さん。吉田さんは2008年上演の『SISTERS』に続く長塚作品への出演です。古田さんがもくもくとウォーミングアップにいそしむ中、吉田さんに今回の舞台についてお話をうかがいました。


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吉田鋼太郎

「僕がこれまで見たり、出演してきた圭史君の作品の中では『SISTERS』が一番好きで、彼の最高傑作だと思っているんですが、今回の舞台もあの系統ですね。一つ一つのシーンはとても過激なのに、作品の根底に流れているものは静けさなんですよ。そこが怖いですよね。テンションの高い題材を、緩やかに、穏やかに書いていく。長塚圭史がまたひとつ、成長したように感じました。その分、僕ら俳優にはハードルが高いですけどね(笑)」

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長塚圭史

 時代背景は現代のようでもあり、近い未来のようにも思える物語。海辺にある家に集まった人々は、会話を聞くうちにどうやら家族であることがわかってきます。吉田さんが演じるのはこの一家の長男であり、古田さん演じるハルキの兄、リュウゾウ役。
「海に消えていった妹エリコのことをしょっちゅう話す男なんですよ。エリコに同化するために、海水を飲む......ってちょっと頭がおかしいですよね(笑)。それが体の中を循環すれば自分は海に帰れると信じているようで...。圭史が俺に書いてくる役には、いつもどこか狂気の部分があるんですよ。『SISTERS』の時も近親相姦の父親の役だったけれど、今回ももしかしたら、妹に対してそういった事実があったのかもしれない。それは台本には書かれていないことですが、そう深読みさせる流れがあるんですよね」

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吉田鋼太郎


 ハルキの娘イラ(多部)、エリコの息子タクト(葉山)、タクトの連れ合いであるユキ(石橋)、この家族の遠い親戚であるトム(中山)と、トムの連れ合いらしいローラ(りょう)と、微妙につながっている彼らのやりとりは一見、のんびりとしていて、ごく普通の家族のよう。シュールな掛け合いに度々笑いを誘われるけれど、一貫して感じるのはざわざわとした不穏な空気です。

「ゆっくり、ゆっくり、彼らは破滅に向かって動いている。そんな時間が取り囲んでいますよね。この海はかなり汚染が進んでいるのかもしれない。この一家は危険区域に近い海に住んでいるのか......、そこはあえてはっきりさせていないんです。会話には謎が散りばめられていて、観る者にどうとらえますか?と投げかける部分が多いんですね。今の日本人に本当の現実を見てほしい、目をそらしてはいけないのでは? と突きつけている気がします」

 その後始まった立ち稽古では、ハルキを中心にした諍いのシーンを展開。スタッフが室内のソファやスタンドライトを倒し、皿などを散乱させてスタンバイOKです。古田さんが激しい口調で大胆に動き回り、全員の視線を奪います。吉田さんが"やれやれ"といった表情でみつめるなか、ひょうひょうと割って入ったのは中山さんです。そのトボケた語り口は火に油を注ぎ、古田さんの怒り再燃。普通のようでいてアヤしさ全開の中山さん、今回も持ち味の不気味さを存分に発揮しています。

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中山祐一朗

 駄々っ子のように娘にすがる古田さんに、多部さんはあきれ顔。父親の手をつかんで......えっ!? 思いもよらない娘イラの行動に、爆笑から震撼へと場の空気がガラッと一変! あまりの驚愕に、足をすくわれたタクト役の葉山さんの叫び声が響きます。しかしその後の、謎めいた女ローラ役のりょうさんと古田さんとの無言のやりとりに、またもや笑いが押さえきれず...。空気の流れがさまざまに切り替わるこのシーンを、演出の長塚さんは終始、じっとみつめていました。一度止めた後、それぞれにチェックを告げて「じゃあ、もう一回」。長塚さん、今度はセットに対して一番奥に下がって立ち、全体にくまなく視線をめぐらせます。再度止めて、チェックを出し、「じゃあもう一回」。気づけば同じシーンを四度は繰り返していました。

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古田新太・多部未華子

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葉山奨之

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りょう

あせらず、すぐに結果を出そうとせず、本当に忍耐強くゆっくりと稽古を進めていますね。だから自分の役がどういう人間なのかを徐々に理解し、確実に浸透させられる。ストレスもなく、ありがたい稽古ですよ」と吉田さん。面白おかしく謎めいた人間ドラマの向こうに崩壊寸前の現実を感じ取り、あらためて自分を、周囲をみつめなおす。そんな演劇体験になりそうな予感。

「この物語、最後まで希望はないな...と今の段階では思うけど、現実に立ち向かうという意味では、それも希望なのかもしれない。笑いもたくさん用意されていて、古田が見事に爆笑の渦を作ると思います。でもその後に"笑っていていいの? 笑ってしまった私は何だったんだろう..."と振り返るようなことが起こるかもしれません。不協和音を抱えた人たちがかき鳴らすドラマですが、それが不快じゃなく、心地良くて、美しいんです。長塚圭史の独特の世界をきっちりとお見せしたいと思っています」(吉田)

取材・文 上野紀子 

■公演情報
2015/12/6(日) ~ 30(水) PARCO劇場 (東京都)
2016/1/6(水) ~ 11(月・祝) 森ノ宮ピロティホール (大阪府)
2016/1/16(土) ~ 17(日) 北九州芸術劇場 大ホール (福岡県)
2016/1/23(土) ・ 24(日) 長岡市立劇場 大ホール (新潟県)
2016/1/30(土) ・ 31(日) まつもと市民芸術館 主ホール (長野県)

■吉田鋼太郎 TV出演情報
12月4日(金)夜11:00~ TBS「A-Studio」


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