『ジキル&ハイド』『デスノート』など、人気ミュージカルを手掛ける米国の作曲家、フランク・ワイルドホーン。彼がピアノを奏で、ブロードウェイやヨーロッパのスターと自身の珠玉のナンバーを披露するコンサート『フランク・ワイルドホーン&フレンズ ジャパンツアー』が開かれる。日本を代表して今回参加するのは、宝塚歌劇団の元宙組トップスターで、ワイルドホーンと今年結婚した和央ようか。二人に話を聞いた。
ドラマティックかつ繊細なメロディが、聞き手の心を捉えて離さない。そんな楽曲がワイルドホーンの魅力だ。「文学や歴史、映画、ニュースなどからインスピレーションを得ていて、今までアイデアが枯渇したことはない。逆にアイデアがありすぎて、時間が足りないぐらい(笑)。僕の心に一番近いものを作品にし、音楽で物語を伝えたいと思っているんだ。今回、一番愛する人と舞台に立てて本当に幸運な男だよ」とワイルドホーン。一方、和央も「彼はスポーツ中継を見ながら、突然ピアノを弾いて作曲し始める。『曲ができない』と悩んでいる姿を一度も見たことがないんです。グラミー賞授賞式を一緒に見ていたときに、『今思い付いた』と、ピアノに向かって素敵なメロディを弾いてくれて。温かくて人間の器も大きい彼のそばで、一流の音楽を聞き続けている毎日です。この幸せな気持ちを音楽に乗せ、記念になるような日にしたい」と意気込む。公演では、和央の退団公演『「NEVER SAY GOODBYE」』からの同名曲も演奏する。ワイルドホーンが宝塚歌劇団に作曲し二人の出会いのきっかけとなった曲だ。
ワイルドホーンは、ポピュラー音楽の作曲家としても知られている。中でもホイットニー・ヒューストンのために書き、今回演奏予定の「ブロークン・ハーツ」は世界中で大ヒットした。「ほかにもケニー・ロジャースら、素晴らしいアーティストのために作曲してきた。ポップミュージックの作曲はすごく自由で、アーティストにフレームをつけてあげるような感覚だね。劇場音楽はそれとは全く違い、脚本家や演出家と共に、物語にServeする(仕える)のが僕の仕事。キャラクターや場面に僕の音楽で生を与え、物語を語ることなんだ」
和央は、「歌った後は、アスリートがゴールしたときみたいに爽快ですが、レンジの広さとエネルギーで喉の筋肉と体力を大多いに使い、歌手泣かせなのも彼の作品の特徴」だという。「偉大なアーティストやスポーツ選手は、困難なことに立ち向かい、それをいとも簡単にできるように見せてくれる。僕たちは彼らが陰でいかに努力しているかを知っているからこそ、好きになれる。TAKAKO(和央)のようにね」とワイルドホーン。これに和央は「では一回、自分で歌ってみてよ」と返し、周囲の笑いを誘っていた。二人で世界中を旅し「Music Like Love No Borders(愛と同じで音楽に国境はない)のが哲学」だと語るワイルドホーン。その音楽と世界観に浸ってほしい。<br><br>
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取材・文 米満ゆうこ
撮影:奥村達也