早霧せいな率いる宝塚歌劇団雪組の東京公演『星逢一夜(ほしあいひとよ)』『La Esmeralda(ラ エスメラルダ)』が9月4日、東京宝塚劇場で開幕した。
このところ宝塚では月組の『1789』、宙組の『王家に捧ぐ歌』、そして雪組の次に上演される星組の『ガイズ&ドールズ』と1本モノが続く中、芝居とショーの2本立てという、宝塚王道の上演体系だ。前半の芝居『星逢一夜』は気鋭の演出家・上田久美子の大劇場デビュー作。しっかりとした作劇に定評のあるこの演出家が、期待に応えて繊細かつドラマチックな名作を生み出した。舞台は江戸時代の九州、三日月藩。藩主の子息・天野晴興は、身分なき娘・泉や源太たちと自然の中で友情を育み、星探しに明け暮れ育つ。だが遠い江戸で将軍吉宗に伺候することになり、そこで才覚をあらわしていった晴興の働きは、はからずも三日月の領民らの生活を圧迫していく...。晴興、泉、源太ら、それぞれが互いを思いやりながらも、どうしようもなく大きな流れに飲み込まれていくやるせなさ、切なさを、早霧せいな、咲妃みゆ、望海風斗ら雪組スターが情感豊かに演じ、悲しくも美しい物語を作り上げた。
一方、後半のショー『La Esmeralda』は、息つく暇もないほどに激しく熱くスピーディなラテン・ショー。芝居とは一転し色合いも鮮やかに、雪組スターのはじける魅力が堪能できる。早霧&咲妃のトップコンビはもちろん、下級生にいたるまで見せ場があり、雪組の層の厚さも感じられた。静と動、バランスの良い2本立てで、宝塚の多面的な素晴らしさを味わうことができる雪組公演、必見だ。
初日にさきがけ9月4日には、雪組トップスター早霧せいな、トップ娘役・咲妃みゆが取材に応じ、意気込みを語りました。
早霧せいな&咲妃みゆ 囲み取材
――宝塚らしい2本立てになりました。それぞれの見どころを。
早霧「組の力を結集しないと出来ないお芝居とショーになっていると思うので、雪組全体の力をこの両作品でお客さまにお届けできたらと思っています。芝居・ショーともに、全部がみどころです。
芝居の中で好きな場面は、一揆に至るまでの流れ。好きといいますか、(自身の演じる晴興が)三日月藩に戻ってから、子ども時代に一緒に過ごした仲間と戦うことになる流れが、毎回思うところが違いながらとても新鮮に出来ている場面です。一揆の中で(望海風斗演じる)源太と一騎打ちになるのですが、そのまわりで見てくれている三日月藩の人たちも共に戦っているような空気感をきちんと出してくれていて、毎回本当に集中して出来ているので、あの場面は大切にしています。
ショーは本当にどの場面も選びがたいのですが、お芝居から一転してラテンのショーが始まったという、力強く華やかな場面になっていると思えるプロローグが私は好きです」
咲妃「お芝居・ショーともに、とても宝塚らしいふた作品だなと出演しながら感じています。見どころはいっぱいあるのですが、やはり早霧さん率いる雪組の大劇場公演2作目ということで、その漲るエネルギーが見どころではないでしょうか。
お芝居はすごくオープニングがとても幻想的で魅力的。LEDのライトをふんだんに使って星を表現し、その中心から晴興さんが登場するところが、宝塚ならではの美しさを感じます」
――役作りの中で特に大切にしていることは。
早霧「新鮮な気持ちを失わず、毎回毎回、そこに生まれた感情のままに言葉に出す。直前までは色々考えていますが、考えていたものを表現しようとするのではなく、セリフを交わしている相手とのコミュニケーションやお客様の空気を感じて、毎回、意識して新鮮にやろうと思っています」
咲妃「今回は、子ども時代から大人までを演じさせていただきますが、ずっと登場しているわけではなく、年月をまたいで歳を経ていくので、ひとりの女性が成長していっているという変わらないもの...芯の強さだったりというところをを集中して演じようと心がけています」
=『星逢一夜』=
=『La Esmeralda』=
取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)
【公演情報】
・10月11日(日)まで 東京宝塚劇場