7月4日に開幕する、ロイド=ウェバー作曲のミュージカル『サンセット大通り』の稽古が公開され、ノーマ役の安蘭けい/濱田めぐみ、ジョー役の平方元基/柿澤勇人を含むキャスト達が、ピアノを伴奏に、4つのシーンを披露した。
まず、アップテンポなナンバー<Let's Have Lunch>。
ジョー(柿澤)が借金取りに追われ、仕事を得ようとあがいている。彼の後ろを、人々がせわしなく行き交い、セットはめまぐるしく動く。これらを支える、本番では見えないスタッフ達の活躍ぶりにも脱帽だ。こうして、生き馬の目を抜く大都会の情景が、多層的に表現される。のちにジョーが恋仲となるベティ(夢咲ねね)や彼女の婚約者アーティ(水田航生)、映画プロデューサーのシェルドレイク(戸井勝海)、映画監督のデミル監督(浜畑賢吉)など、登場人物の多くが一堂に会し、その後の展開を示唆する。
続いて、ガラリと雰囲気が変わり、舞台は重厚なノーマの屋敷に。平方ジョー(平方)とノーマ(安蘭)が最初に出会う<With One Look>だ。
目の前の女性が大スターであることに気づいたジョーに向かい、ゆっくりと振り返るサングラス姿の安蘭ノーマ。かつての栄光を歌い上げる彼女の迫力に、平方ジョーが、そして見学者全員が飲み込まれる。最後は、まさに独壇場。歌詞の通り、サングラスを取ったその眼差しに世界が震え、ひときわ大きな拍手が起こった。
次は、ジョー(平方)とベティが恋に落ちる<Too Much In Love To Care>。
夢咲の高く透明な声は、低く深いノーマの声とは対照的だ。緩やかに回転する階段の端と端に位置取りながら、歌と共に、徐々に近づくジョーとベティ。やがて平方ジョーと夢咲ベティは階段のてっぺんに並び、みつめ合い、伸びやかな声で恋する心情を歌い上げる。若者達の恋が瑞々しく煌めく場面だ。
そして最後は、映画撮影所での<As If We Never Said Goodbye>。濱田ノーマは、若者達で溢れた新時代の撮影所に臆しているが、旧知の照明技師が彼女にライトを当てると、戸惑いと感慨の入り交じった表情で歌い始める。周囲の憧れの視線を一身に浴び、その顔も声も自信を取り戻していく。めまぐるしかった時の流れが歩みを止め、束の間、新旧二つの世代が一つになる----。ノーマの女優としての生き様が浮かび上がるようで、圧巻だった。
わずか30分の公開稽古にもかかわらず、本作がいかに劇的な音楽に彩られ、豊かな人間模様を織り成すミュージカルであるかが伝わってきた。全編を通した時、一体どのようなドラマが立ち上がるだろうか。
取材・文:高橋彩子