社会性とエンターテインメント性を兼ね備えた作風で注目を集めるミナモザが『みえない雲』というドイツの小説を舞台化する。原発事故とそれに翻弄される少女の姿を描いた作品は、今まさに日本で生きている人たちにとって「他人事」とは言えない。
出演者には、映画『舞妓はレディ』で鮮烈な主演デビューを飾った上白石萌音、宝塚歌劇団出身の陽月華など、この作品に強く共感するキャストたちが集まった。
今回はそのうちのひとりである演劇集団キャラメルボックスの大森美紀子とミナモザ主宰で上演台本・演出を担当する瀬戸山美咲に話を聞いた。
瀬戸山 今回は『みえない雲』というドイツの児童文学が原作なのですが、原作を読まれた時ってどんな感想をもちましたか?
大森 正直、最初に読んだときは重たかった。でも、これをやるのは意味があることだって強く思いました。いろいろな考えの人が出てくるのが面白かったですね。
瀬戸山 そうなんです。私は小学校6年生の時にこの本に出会ってるんですが、今回「いざ、この作品をやろう!」と思って改めて読んだら、昔読んだときよりもそのいろいろな大人たちに共感している自分に気づきました。
大森 確かに何歳のときに読むかで感じることが変わりそうだね。
瀬戸山 子どもの頃は、原発事故で避難する主人公の少女ヤンナ・ベルタに共感して、とにかく「心細い」気持ちを感じながら読んでいました。むしろ登場する大人はみんな敵にも見えていた。でも、大人になって読むと、この人たちは別に敵じゃないなと。それぞれ必死に生きている人なんだって、ようやく気づきました。だから、今回はみっこさんのような落ち着いた大人の俳優さんに演じていただけるのがとても心強いんです。
大森 ごめんなさい、たいした大人じゃないよー。いつになったら『私は大人です』って胸を張って言えるようになるんだろう、っていつも思ってるもん。
瀬戸山 いやいや。
大森 ってか色々反省しちゃう。この本を読んでると。大人は。反省しちゃうんだよ。とってもね。
瀬戸山 確かに......。なんというか大人になると、実は大人もたいして大人じゃないんですよね。
大森 そうそう。もっと学校で本当に必要なことを教えてほしかったなって思う。
瀬戸山 私は「自分で考える」ってことをもっと学校で教えたらいいなって思います。9月にドイツに取材に行った時、原作者のグードルン・パウゼヴァングさんもそれは言ってて。
大森 そうなんだ。
瀬戸山 自分たちにはいろんなことに責任があるんだって認識して、考えていかなきゃいけないって。
大森 そういうことをね、今生きてる大人が子どもに教えていかなきゃいけないんだろうけど......難しいよね。そこもまた。
瀬戸山 今回の舞台を子どもにも観てもらえたらいいですよね! だから、原発のことだからって構えて観なくていいように作りたい。小さな女の子が頑張って生きていく話の中に原発のいろんなことが入っている、っていうようにできたらいいなって思いますね。
大森 うん、そうだね。そう思う。
-----------------
▼公演期間 2014/12/10(水) ~ 2014/12/16(火)
▼会場 シアタートラム (東京都)
▼出演者など
[演出]瀬戸山美咲(上演台本・演出)
[出演]上白石萌音 / 陽月華 / 塩顕治 / 中田顕史郎 / 大原研二 / 浅倉洋介 / 橘花梨 / 石田迪子 / つついきえ / 佐藤真子 / 間瀬英正 / 大森美紀子
▼注意事項
未就学児童は入場不可。
-----------------