日本で上演されて今年で34年目を迎える、ブロードウェイミュージカル『ピーターパン』。大人も楽しめるエンタテインメントショーをコンセプトにした今回、フック船長に抜擢されたのは人気、実力ともにブレイク中のコンテンポラリーダンサー、大貫勇輔。ミュージカル『キャバレー』で俳優デビューを果たし、今作が2作目のミュージカルとなる彼に話を聞いた。
「僕はもともとミュージカルが大嫌いだったんです」と、のっけからひと言。そんな彼を変えたのは、2011年にミュージカル『ロミオ&ジュリエット』に死のダンサーとして出演してから。「ミュージカルにしかない感動を観客に与えられることを知って。ピーターパンは子ども向けなのに、大人が忘れかけていた友情や家族愛を描いていて強く打たれました」。ウェンディと子供たちらを誘拐する悪役で、今までおじさんのイメージが強かったフック船長に、25歳の史上最年少で挑む。「そこはあまり意識していないんです。それよりも、史上初の踊るフック船長というのが見どころ。ジャズダンスがベースですが、セリフに合わせたおバカな振り付けも盛り込まれ、ぷぷっと笑えて、跳んで回って技を見せ歌う。ほかには、アフリカンダンスなども」。口ずさみやすい楽曲も魅力だが「僕にとって歌いやすい歌はない(笑)。歌は課題で特訓中です」。
ウェンディの父親、ダーリング氏とのひとりふた役。「ダーリング氏は家族のために自分の夢を犠牲にした大人を象徴している。フック船長はダーリング氏の裏返しで、子どものまま大人になり、永遠に大人にならないピーターに憧れる反面、憎らしい。そして、ダーリングは本当はダンサーになりたかったという解釈が大貫勇輔バージョン(笑)。だから裏のフック船長は踊りまくるんです」。
さらに今回、演出・振付を手掛けるのは、エンターテイナーの玉野和紀。「玉野さんはピーターパンは芝居の原点で、感情の振り幅が単純だからこそ難しいとおっしゃる。フックの怖さ、面白さ、カッコ良さを自由に行き来できればいいねと。僕はそれに美しさとセクシーさもプラスしたいです」。また、ダンサーであることが芝居に役立っているという。「例えば、日常生活で人間は不機嫌になると体の重心が下がり、ハッピーだと上がる。肉体のポジジョンで心の持ちようが表現できるんです。それを芝居に生かしたいですね」。ミュージカル、ダンス界に旋風を巻き起こす彼に注目したい。
公演は7月13日(日)神奈川・KAAT 神奈川芸術劇場 ホールにて。その後、7月20日(日)から31日(木)まで東京・東京国際フォーラム ホールC、8月2日(土)広島・広島文化学園HBGホール、8月9日(土)に大阪・梅田芸術劇場 メインホールでも上演。チケットは発売中。
取材・文 米満ゆうこ