コンテンポラリーやジャズ、バレエ、ストリートなどさまざまなダンスをキレのある動きで優雅に踊りこなすダンサー、大貫勇輔。彼がダンサー、ラスタ・トーマス率いる男性中心のダンスカンパニー・BAD BOYS OF DANCEの舞台『Rock the Ballet 2』で、世界のトップダンサーと競演する。現在の心境を聞いた。
なじみのヒット曲にのせてバレエをベースにした多彩なダンステクニックをたっぷりと楽しく魅せるのがBAD BOYS OF DANCEだ。大貫は今春、彼らの世界ツアーに参加。「リハーサルがたったの4日間で、一番驚いたのがゲネプロ(本番前の最終通し稽古)がなかったこと。照明も音楽もなしで位置の確認だけをして、いきなり本番!めちゃくちゃ緊張して、衣装を替えるとき手が震えてボタンが留められませんでした(笑)。でも、海外ではよくあるらしく底力がつきました」。世界のトップダンサーに引けを取らない踊りで観客を魅了したが、「僕ができる技は皆できる。世界で闘うには日本人らしさや自分にしかできない動き、センスなどオリジナリティが必要だと痛感した」と話す。それでもダンス界の鬼才演出家、マシュー・ボーンの公演で主役を射止めた才能と、長身かつ恵まれたルックス。「欧米人へのコンプレックスはないのでは?」と問うと、「ないですね。でも、僕の身体は超一流ではない。では、どこで超一流を目指すかというと思考や人間性だと思う」とまっすぐな目で答えた。
今回の舞台『Rock the Ballet 2』は「マイケル・ジャクソン、クイーン、レディー・ガガらのヒット曲に合わせて、バレエやストリート、ジャズなどで表現する」という。20曲以上ある楽曲の中で大半を踊り「純粋に見て楽しい舞台。観客はのりやすいけれど、ダンサーにとっては、斬新な振り付けなので波にのるまでが大変(笑)。躍動感やグルーブ感を出せれば」と意気込む。すでに米国でカンパニーとのリハーサルを終え「ラスタをはじめ、ダンサーたちは皆、日常生活を思い切り楽しみ、ダンスのために生きているのではなく、生きている中にダンスがある。僕は飲みに行くのもひらめきを起こしたいからで、ダンスのためだけに生きてきたんだと気付いた」という。そのストイックさが実を結び、今作へと繋がった。「日本のダンサーといえば大貫勇輔と言われる存在になりたい。この作品で僕が世界の人と闘うのを見て、日本人も負けてはいないと観客に誇りに思ってもらえたら」。その言葉を体現するダンスを、ぜひ、劇場で確かめてほしい。
公演は8月28日(木)から8月31日(日)まで東京・東京芸術劇場 プレイハウス、9月2日(火)大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて上演。チケットは発売中。